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2017年10月02日号 (第337)

事業承継か廃業

 みなさん、こんにちは、10月です。そして、選挙が行われることになります。この時期に選挙であれば、平成31年10月からの消費税率引上げは論点にならなそうに思っていましたが、論点の一つになりました。結果次第では、また先送りなのでしょうか。

 さて、今回は、お客さんとの話題の中でよくでてくる、「事業承継か廃業」という内容でご紹介します。事業承継というと税金面も気にされる方が多いですが、今回は税金の問題ではなく事業を続けるか廃業しようか微妙な状態のケースですが、実は税金での問題より件数では多い悩みではないかと思います。

◆何歳まで仕事をしますか?

 お客さんとの話題で、何歳まで仕事をやる予定ですかという話しをさせていただくケースがよくあります。例えば、経営者の方が60代後半、後継者がいない場合などです。後継者がいる場合は、健康上の問題がなければ仕事を続けてもよいし、どこかで区切りを付けて隠居生活を楽しむのも自由です。一方で、後継者がいない場合には、いずれは廃業ということになるわけですが、取引先に迷惑をかけないようにとか、従業員の生活を守るためにとか、あるいは借入金の返済が終わるまでは・・など、様々なしがらみがあり、そのタイミングが難しいのです。

 借入金がある場合や、従業員の年齢などから考えて、最低限何歳まで仕事をする必要があるのかについては、検討しておくことが必要です。事業を始めたり、法人を設立したりするよりも、廃業するタイミングについては難しい問題です。そして、どこかで意識して、計画通りに進めていかないと廃業は難しいものです。

◆事業承継させますか?

 自分が、子供の頃には、町に書店、レコード店、玩具店、八百屋、鮮魚店、洋品店など、様々な商店が路面店として営業していました。ところが、現在は、物販については、デパート、量販店、ショッピングセンター、コンビニエンスストア、ネット販売に集約されつつあり、町の書店はほとんどみかけなくなり、町のレコード店などは全くといってよいほど見かけなくなりました。

 事業承継は税金の話しが話題になりますが、それ以前に、その事業が、次の世代が30年間やるのに適しているのかを検討する必要があります。自分が税理士事務所に勤務していた頃は、鉄工所や畜産店と名前がついていながら、不動産賃貸業だけを続けているお客さんが何件かありました。厳しい言い方ですが、多くの業種は30年後には残っていない可能性があります。

 経営の善し悪しではなく、時代の流れで、特定の業種やビジネスモデルが淘汰されていきます。現在好調なビジネスでも、次の世代では廃れてしまう可能性があることを考慮して、事業承継をすべきなのか否か検討すべきです。

◆出口対策

 後継者がいるのであれば、それが一つの出口対策の答えです。株式などを後継者に移動して、引退のタイミングを考えればよいことになります。株式の移動の際に、贈与税の問題などを検討すればよいことになります。

 廃業する場合は、廃業できる状態か否かということの検討から始めます。事業資金の借入などがあり、手持ちの現金で返済できない場合は、連帯保証をしている関係から、返済の目処がつくまで事業を継続する必要があります。また、古い従業員がいる場合は、従業員の子供さんの就職を待つなど、従業員の生活ということも含めて、廃業できる状態にするのが最初のステップです。その後は、受け取ることができる年金との関係もありますが、事業を完全にやめるのか、少しでも稼げるのなら規模縮小で続けるのかという選択です。廃業できる状態で、僅かでもプラスになるのなら、健康のため事業を続けるのも一つでしょう。

 また、後継者はいないけれども、事業は、それなりに好調でという場合は、M&Aなどを検討してみるのも良いでしょう。中小企業であっても、事業として成り立つ場合は、事業を買いたいという話しがあるかもしれません。自分の創った会社が存続し、従業員の雇用を守るためのM&Aであれば、高く売る必要はなく、株式の評価がゼロだから無償で株式を譲渡しているケースもあります。さらに、赤字の場合でも、生産設備や店舗と人をセットに、M&Aの対象になるケースもあります。

 いずれにしても、最終的にどうしたいのか、時々考えることも必要です。

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