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2017年09月01日号 (第334)

領収書の宛名

 みなさん、こんにちは、天候不順が続いています。常に傘を持ち歩かないと、土砂降りに遭遇しそうな日の連続でした。

 さて、今回は、前回に引き続き税務調査に関する話題で、領収書の宛名が必要なのか否かについて検討してみます。

◆領収書の宛名

 コンビニなどで買い物をした場合に、通常は、領収書と印字されたレシートが渡されます。税務調査の際に、このような宛名のない領収書が問題にされるでしょうか。

 経験的には、領収書の宛名がないことで指摘を受けることは、非常にまれです。むしろ、コンビニで宛名があるけれど、内容が品代になっている領収書だと、内容について指摘を受けることがあり、そのような指摘をされる調査官は、内容が記載してある宛名がない領収書の方が、内容がわかるので推奨しますと言われることもあります。

 一方で、まれではありますが、領収書の宛名が空欄だとの指摘を受けることもあります。オーナーが複数の会社を持っている場合や、親子会社がある場合で、都合のいい方に負担させているのではとの指摘を受けたことがあります。

◆消費税法上の取扱い

 法人税や所得税では、そもそも領収書が経費で落とすための絶対条件となっていません。実際に通帳から自動引落になっている場合など、多くのケースでは領収書の発行がありませんが、支払の事実が明らかであるため問題になることは、ほとんどありません。

 一方で、消費税では、仕入税額控除の要件として、帳簿及び請求書等の保存が義務付けられていて、請求書が発行されない取引の場合は、領収書が請求書等に該当することになります。その請求書等の記載要件として、①書類作成者の氏名又は名称、②取引年月日、③取引内容、④取引金額、⑤書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称とされています。つまり、原則として宛先が必要とされています。ただし、例外として、小売業から受け取る領収書、旅客運送業の領収書、旅行業、飲食業、駐車場業から受け取る領収書については、宛先が無い場合でもokとしています。また、少額な取引として税込3万円未満の場合は、帳簿の記載があれば、請求書等の保存なくてもokという取扱いがあります。

 結果として、3万円未満の領収書、3万円以上の場合でも飲食業や旅行業の領収書は、宛名がなくても、法律上は問題がないということになります。

◆実務上の対応

 法律上の扱いを説明しましたが、実務上の対応はどうすべきでしょうか。コンビニやタクシーの領収書などは、宛名がなくても実務上問題ないと思います。ところが、消費税で、宛名が不要とされている飲食業などの領収書は微妙です。

 微妙というのは、100%経費であるものが、認められなくなるということではなく、税務調査の際に、調査官の心証として、気になってしまう可能性が高くなるということです。例えば、高額な飲食店の宛名がない領収書が多数出てきた場合に、本当に会社の関係で利用しているのか、飲食店に問い合わせをしてみるなど、税務調査の期間が長引く原因になります。

 税務調査が定期的に行われるような規模の会社では、どのように対応すれば税務調査がスムーズに終わるかを理解しています。具体的には、領収書には宛名を記載してもらい、どのような内容なのかを帳簿へ記載する。さらに、特に高額なものについては、理由などについても記録を残しておくなどの対応です。

 法律上必要とされないから残さない対応ではなく、トータルで負担が軽くなる対応を心がけたいものです。

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