税務最新情報

2017年07月10日号 (第329)

税法は難しい(判決は結論だけを見てはいけない)

 みなさん、こんにちは、都議選は、極端な結果となりました。議員さんは、落選すると給料がゼロになってしまいます。今回のように議員さん個人というより、追い風と逆風の影響を受けてしまうような場合があることを考慮すると、厳しい世界ですね。

 さて、今回は、税法が難しいという話しの続編で、判決などについて、結果だけを見て判断してはいけないという内容です。

◆税務訴訟の発生件数

 税務に関する訴訟で、納税者が勝訴するとセンセーショナルに取り上げられますが、国税庁の資料によれば、平成28年度では、国側の敗訴の割合は4.5%とされています。つまり、滅多に納税者側が勝てない訴訟なので、納税者が勝訴した場合は大きく取り上げられるという傾向があります。

 また、発生件数でみると年間で終結した件数が、245件です。ちなみに、日本全国で税務署が524カ所ありますから、1年間で税務署2カ所について1件の訴訟にも満たないということになります。税理士の登録者は7万6千人強ですから、税金の専門家である税理士でも、1年当たり0.3%の税理士しか税務訴訟に出会わず、平均40年仕事を続けたとしても10人に1人程度しか税務訴訟には、遭遇しない計算になります。つまり、税務訴訟自体が、かなりレアなケースであるという認識が必要です。

◆税務訴訟の争点

 税務訴訟で、争われる内容は、「法律の解釈」について争われるケース、「法律そのものが違憲」だと主張されるケース、前回ご紹介した退職金の事案のように「事実がどうであったか」について争われるケースなど、争点自体が何パターンか存在します。

 例えば、前回の例で掘り下げると、退職金については、法人税法上は費用になる、所得税法上は退職所得となるという取扱いについては、そのような法律があるという前提で、その部分については異論が無いわけです。一方で、「退職したという事実」については、通達通り判定をしているのだから、退職の事実を認めるべきだと主張する納税者と、その他の状況証拠から退職の事実がないと主張する国というように「事実がどうであったか」を争っています。

 つまり、一般論としては、通達通りの処理をしていれば「退職した事実」を認めているのですが、掘り下げて事実関係を確認したところ「退職したという事実」がないと判断されれば、法人における退職金の費用性、所得税法上の退職所得としての取扱いが、ひっくり返ってしまいます。

◆判決を読むときの注意点

 具体的な事例として、障害者授産施設で、利用者工賃について、給与所得であるか否か争われた事例があります。結論は、給与所得ではないという判決なのですが、その結論だけをみて、利用者工賃は給与所得ではないと判断するのは危険です。

 なぜなら、その判決では、「利用者工賃は給与所得ではない」と判断したのではなく、その障害者授産施設の事実の状況を判断し、「その対象となった授産施設における利用者工賃は、給与所得ではない」という結論に至ったからです。つまり、実態等を検討した上で、給与に該当するか否かについて、その個別の事案についての判断を裁判所は行いましたが、条件が変わると異なる結果になることも想定できます。

 言い方を変えれば、一般論として「利用者工賃」≠「給与所得」と判断したのではなく、その対象となった授産施設おいては、様々な要因を検討した結果、「利用者工賃」≠「給与所得」であったと判断したということに過ぎないのです。

 つまり、判決だけをみて、結論を導き出すのは危険で、判決に至るまでの実態が同様であるか否かを判定しないと、訴訟をしても同じ結論になるとは限りません。また、参考にした判決が地裁判決であれば、高裁で逆転判決となる可能性もあり注意が必要です。

 繰り返しになりますが、訴訟となるケース自体がレアケース、その中でも納税者が勝訴する可能性は5%未満なので、話題性という意味ではニュースとして取り上げられますが、実務に当てはまるケースは、そんなに多くないというのが現実です。

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