税務最新情報

2017年07月03日号 (第328)

税法は難しい(通達通り処理しても否認)

 みなさん、こんにちは、かなり暑い日もあり、夏が近いのを感じます。私は外出が多いので、外の暑さと、電車や事務所の中の涼しさのギャップもあり、体調の悪さが抜けません。

 今回は、税法が難しいという話しの3回目、通達を見て安全に処理したつもりが、否認されたという怖い事例です。

◆分掌変更退職金

 代表取締役社長だった者が、定年を迎え、非常勤の取締役に降格するケースや、取締役ではあるけれど顧問や相談役という代表権がない名誉職に収まるケースがあります。あるいは、代表取締役を引退後、経営には直接タッチしないものの監査役の立場で、お目付役として、会社に関係していくというようなケースです。

 このような、事実上の引退の際に、役員退職金を支給するケースがあります。名目的には、非常勤の取締役や監査役として役員の地位に残るので、分掌変更に伴う役員退職金という呼び方をします。

   そして、分掌変更に伴う役員退職金について、法人税基本通達では、下記のような規定を置いています。

9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)
 法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。(昭54年直法2-31「四」、平19年課法2-3「二十二」により改正)

 (1) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。 

 (2) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。 

 (3) 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

 (注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。 

◆形式的に通達通りだったのに否認された事例

 この通達自体は、かなり歴史がある通達で、従来は通達の処理に合わせていれば安全であるという暗黙の一致がありました。ところが、平成19年の最高裁判決で、上記の通達の要件を満たしているにも関わらず、退職の事実がないとして、退職金が否認された事例がありました。

 細かい説明は省略しますが、新しい社長であるはずの息子が社長として会社の状況を把握できていないこと、取引先などにも社長交代の事実を知らせていなかったこと、保険金の収入が多額にあるタイミングだったことなどの状況から、保険金収入と退職金の計上時期のタイミングを合わせて、法人税を節約するために「形式的に通達の要件を満たして退職したことにした」という認定をされ、退職の事実がないとして否認されたという事例です。

 退職金の否認の場合は、①法人税の計算上費用にならず、②退職所得に該当しないので所得税も高く計算され、さらに③源泉所得税の追加納付が必要となるので、トリプルパンチ課税という散々な結果につながります。

◆事実が重要

 退職金の否認事件の直後は、最高裁で通達通りの処理をして納税者が負けたと言うことで、慎重な雰囲気がありました。しかし、判決後10年経過したこともあり、保険の営業マンに通達通りすれば退職金が認められるとアドバイスを受けたと、経営者の方からお話を聞く機会が増えてきました。

 通達はあくまでも、分掌変更した際に退職しているかどうかの参考であり、実際に退職しているという事実が重要です。

 トリプルパンチ課税という重いペナルティ、金額も一生モノとい言えるくらい大きくなりがち、安易な処理は行わず、退職の事実があるまでは退職金は支給しない。どうしても、退職金を支払うのなら完全引退してしまうくらいの慎重さが必要です。

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