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2017年05月22日号 (第324)

節税についての検討(租税特別措置法)

 みなさん、こんにちは、3月決算法人の申告期限まで、あと僅かです。連休の影響もあり、タイトなスケジュールになりがちですが、もう少し頑張りましょう。

 さて、今回は租税特別措置法で規定されている法人税関係の取扱について、概観したいと思います。趣旨としては、新しい年度を迎えて、これから利用できる租税特別措置法に基づく節税手法がないかの検討です。

◆租税特別措置法

 前回の節税の話題の中で、租税特別措置法という言葉を用いました。法人税法や所得税法が基本的には恒久的な定めを置くのに対して、租税特別措置法は政策的な観点からの税に関する時限立法として位置づけられます。もっとも、法人税法や所得税法なども、毎年のように改正されているので、現実的には恒久的ではないのですが、租税特別措置法は、制定当初から時限立法である点が特徴です。

 租税特別措置法では、政策的な観点から税負担を重くする規定や、税負担を軽減する特例を置いています。また、試験的に新しい制度を措置法として制定して、様子を見つつ法人税法に移行されるケースなどもあります。

◆法人税関係の措置法

※凡庸性の高い措置法はマークが付いています。

①試験研究を行った場合の税額控除
 対象:青色申告法人
 特典:税額控除

②エネルギー環境負荷低減推進設備等取得税制
 対象:青色申告法人
 特典:特別償却(30%)又は税額控除(7%、中小企業者)

③中小企業投資促進税制
 対象:中小企業者等で青色申告法人
 特典:特別償却(30%)又は税額控除(7%)
   ※一定の要件を満たす場合は、生産性向上設備投資促進税制として、平成29年3月31日までに取得したものについては、即時償却が可能でした。一方で、中小企業経営強化税制が創設され、生産性の向上(A類型)若しくは収益力強化設備(B類型)への投資で、即時償却又は税額控除が可能となります。  

④国家戦略特別区域における機械等取得税制
 対象:青色申告書を提出する特定事業の実施法人
 特典:特別償却(50%)又は税額控除(15%)
 ※建物及び附属設備の場合は特別償却(25%)又は税額控除(8%)

⑤国家戦略総合特別区域における機械等取得税制
 対象:青色申告書を提出する指定法人
 特典:特別償却(40%)又は税額控除(12%)
 ※建物及び附属設備の場合は特別償却(20%)又は税額控除(6%)

⑥地方活力向上地域における特定建物等取得税制
 対象:青色申告法人
 特典:特別償却(15%又は25%)又は税額控除(2~7%)

⑦特定地域における雇用促進税制
 対象:青色申告法人
 特典:税額控除(40万円×増加雇用者数)

⑧特定中小企業者等の経営改善設備等取得税制
 対象:青色申告を提出する経営革新等支援機関による助言を受けた中小企業者等
 特典:特別償却(30%)又は税額控除(7%)

⑨雇用者給与等支給額が増加した場合の特別控除
対象:青色申告法人
特典:基準雇用者給与等支給額に比べて増加した支給額の一定割合(10%~22%)
※いわゆる所得拡大税制です。実務的には、非常に利用者が多い制度です。設備投資ではなく、人件費の増加で利用可能な点が他の税制と大きく異なります。

⑩医療用機器の特別償却
 対象:医療保健業務を営む青色申告法人
 特典:特別償却(12%)

⑪障害者を雇用する場合の機械等の割増償却
 対象:青色申告法人
 特典:割増償却(24%)
 ※工場用の建物附属設備に該当する場合には32%
 特別償却は、取得価額に特別償却の償却率を乗じた金額を普通償却限度額に加算できる制度です。割増償却は、普通償却限度額に一定率を乗じた金額を、普通償却限度額に加算できる制度です。

⑫次世代教育支援対策資産の割増償却
対象:青色申告法人
特典:割増償却(12~24%)

⑬特定都市再生建築物等の割増償却
対象:青色申告法人
特典:割増償却(10%~50%)

⑭倉庫用建物等の割増償却
対象:流通業務の総合化及び効率化促進法の認定又は確認を受けた青色申告法人
特典:割増償却(10%)

◆適用可能性の検討

 租税特別措置は、非常に多岐にわたるため、汎用性の高いもの(★印のものなど)で該当するものがないかを、常に気にしておくことが必要です。一方で、それ以外のものについては制度の名称等で自分の会社に関係しそうなものがないかを、年に一度くらい確認するという手法が現実的です。租税特別措置法は、法律的に用意された節税の手法ですので、定期的な確認を怠りなく行いましょう。

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