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2017年04月03日号 (第319)

平成29年度税制改正 事業承継税制の改正点

 みなさん、こんにちは、この4月から消費税率が変更になる予定だったため、会計ソフトによっては日付で新しい税率にしてしまう場合があるので、会計ソフトのバージョンアップが必要かどうかなど、確認が必要です。また、販売管理ソフトやレジスターなども、日付で自動的に判断するケースが想定されるので、気にしておく必要がありそうです。

 さて、今回は事業承継税制についての改正点をご紹介します。

事業承継税制の概要

 事業承継税制は、平成21年度税制改正で創設された制度です。事業承継のための株式の贈与税や相続税について納税猶予が認められ、さらに、次の代へ事業承継税制を適用することで、猶予税額の免除が受けられる場合もあるなど、うまく適用できれば非常にメリットの大きい制度です。

 一方で、要件を満たさなくなった場合に、猶予税額について、利子税を合わせて支払わなければならないというリスクがあります。また、ずいぶん改善さてきましたが、経済産業大臣の認定や、継続届出書の提出など、手続きの煩雑さ、手離れの悪さなどがあり、利用件数はそれほど多くないというのが実態でした。

 うまく利用できれば大きなメリットがある反面、要件を満たすことができなかった場合に大きなリスクが残る制度でした。今年の改正は、その大きなリスクについて、軽減できる選択肢を用意してくれました。

雇用確保要件の要件緩和

 事業承継税制のリスクの一つとして、雇用確保要件があります。80%の雇用の維持が求められており、経営者の都合ではなく勤めている人の都合があるので、納税猶予の打ち切り事由としては大きな負担と言われていました。この点については、事業承継税制が制定された当初は、判定基準日に80%を下回っていたら打ち切りだったものが、平成25年度税制改正で5年間の平均で80%を維持と緩和されてきました。

 しかし、中小企業では従業員が4人しかいない場合には、1人減っただけでも80%を下回ってしまいますし、そのような中小企業では簡単に従業員を補充できない現実があることが、問題点として指摘されていました。

 そこで、平成29年度税制改正では、相続又は贈与時の常時使用従業員数に80%を乗じて端数が生じた場合は、切り捨てた人数と比較することになりました。例えば、従業員4人いた場合は、4人×80%=3.2人ですが、端数切り捨てで3人いればOK、従業員が2人いた場合は、2人×80%=1.6人、端数切り捨てで1人いればOKという計算になります。つまり従業員5人以下の場合は、従業員が1人だけ減る場合には打ち切りにならないということです。

相続時精算課税制度の適用が可能に

 納税猶予制度の一番のリスクは、納税猶予の打ち切りです。従来は、納税猶予が打ち切られた場合は、相続税精算課税を選択している人であっても暦年課税による贈与税課税が行われてきました。納税猶予制度は、株式の評価が高額になる場合に利用される制度であり、納税猶予が打ち切られて、通常の贈与税課税になってしまう場合は、相続税の税率より高い税率での納税が想定されました。

 平成29年度税制改正では、納税猶予を受けた株式について相続時精算課税制度の適用を認めることとしました。つまり、納税猶予が打ち切られた場合でも、相続時精算課税を利用すれば、とりあえずは20%の税率での課税で済み、最終的には相続時に精算を行うので相続税以上の税率での負担は生じないということで、リスクが限定されることになります。

 平成21年度に制定された新しい制度ですが、何度かの改正を経て、少しずつ使いやすい制度に変わりつつあります。利用件数も、平成25年度税制改正を受けて増えているようですし、今回の改正でますます身近な制度になりました。

 

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