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2017年03月10日号 (第318)

平成29年度税制改正 相続税の納税義務の範囲

 みなさん、こんにちは、確定申告期限まであと僅かです、青色申告特別控除の65万円控除を受ける場合などは、期限内申告が要件となっているので注意が必要です。また、住宅ローン減税などは、期限後の申告でも適用は可能ですが、当初申告が要件となっているので、とりあえず申告しておいて、更正の請求で還付を受けることはできないので、適用できる可能性がある場合は、とりあえずそれ以外の申告をしておくという行為は徒労になってしまいます。

 さて、今回は、平成29年度税制改正の中で、相続税の納税義務の範囲の見直しについてご紹介していきます。

改正前の相続税の納税義務の範囲

 日本の相続税では、日本国内に相続財産がある場合は当然に課税されますが、国外にある財産についても課税が行われます。しかし、日本に縁もゆかりもない外国人の保有する国外の財産について、日本の法律を適用できるわけもなく、相続税の納税義務についての範囲が定められています。

 相続税の納税義務の範囲については、概ね次のように3つに区分されていました。

①居住無制限納税義務者 
  相続財産を取得したときに、日本に住所がある者で、相続により取得したすべての財産が相続税の対象範囲になります。

②非居住無制限納税義務者
 相続財産を取得したときに、日本に住所がない者でも、下記に該当する場合には、相続により取得したすべての財産が相続税の対象範囲となります。
・日本国籍がある個人で、その個人又はその被相続人が、相続開始前5年以内に日本に住所を有していた場合
・日本国籍を有しない個人で、その個人又はその被相続人が相続開始時に日本に住所を有していた場合

③制限納税義務者
 非居住無制限納税義務者に該当しない者で、日本にある相続財産を取得したときに、日本に住所を有しない者については、日本国内の財産のみが相続税の対象となります。

 上記の関係をまとめると、以下のようになります。

 

国内の財産 国外の財産
①居住無制限納税義務者 課税 課税
②非居住無制限納税義務者 課税 課税
③制限納税義務者 課税 非課税

◆平成29年度税制改正による変更点

①制限納税義務者は、非居住無制限納税義務者に該当しないことが前提でしたが、改正前は、相続人又はその被相続人が相続開始前5年以内に日本に住所を有したことがないとされていたものが、相続開始前10年以内に日本に住所を有したことがない場合に改正されます。

②相続人及びその被相続人が一定の在留資格により一時的滞在をしている場合は、国内財産のみが相続税の課税対象となります。一時的滞在とは、国内に住所がある期間が、相続開始前15年以内に合計で10年以下であることが条件となっています。

③日本国籍もなく、国内に住所もない相続人の場合でも、相続開始前10年以内に国内に住所があった場合には、国外財産についても相続税の課税対象に加えられます。ただし、過去15年以内に国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の場合は除かれます。

◆改正の趣旨

 平成12年度税制改正以前は、国内財産にのみ相続税が課税される制限納税義務者と、世界中の財産に相続税が課税される無制限納税義務者の判定は、国内に住所があるか否かだけでした。国外に財産を移し、国外に住所を移せば日本の相続税はかからなくなる仕組みでした。そして、シンガポールやマレーシアなど相続税がかからない国が多くあるので、簡単に相続税の回避ができてしまうという状況でした。

 そこで、相続人が5年間海外に居続けることを要件とする改正、被相続人の住所が国内にある場合の規制なども加えられました。しかし、今度は相続人もその被相続人も5年以上海外に居続けるなど、小説さながらの相続税対策が実行され、さらに要件が厳しくなりました。一方で、短期滞在の外国人にまで国外の財産を相続税の対象に含めることは問題があるため、例外的な取扱を置くなど非常に複雑な仕組みとなっています。

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