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2017年01月20日号 (第313)

平成29年度税制改正 法人税①所得拡大税制

 みなさん、こんにちは、寒い日が続いています。風邪など、ひかないように気を付けましょう。

 今回は、平成29年度税制改正の法人税関係で、実務でもっとも多く適用されていると思われる所得拡大税の改正についてご紹介していきます。大綱では、いつから改正法が適用されるかについて明確には読み取ることができませんが、現行法の適用期限が平成30年3月開始事業年度までとされていたことを考慮すると、平成30年4月以降開始事業年度からと予想されます。

所得拡大税制の概要

 所得拡大税制の概要について簡単に説明すると、①基準事業年度の雇用者給与等支給額、②雇用者給与等支給額(当期の雇用者給与等支給額)、③比較雇用者給与等支給額(前期の雇用者給与等支給額)の三つの数値を比較して、控除税額を計算します。

 基準年度の雇用者給与等支給額は、平成25年4月1日以後開始事業年度で最も古い事業年度の前事業年度における雇用者給与等支給額であり、本制度を利用するにあたり、常に基準とされる数値です。

 適用可能となるのは、①よりも②の増加割合が一定以上(基準金額に対する増加割合)で、かつ②>③(前年に比べ絶対額による増加)で、さらに②の平均額>③の平均額(前年に比べ平均額による増加)の場合です。増加割合については、下記の通りです。

 平成25年度  平成26年度平成27年度 平成28年度 平成29年度 
大企業  2% 2% 3% 4% 5%
中小企業者 2% 2% 3% 3% 3%

 例えば平成29年度であれば、中小企業者の場合、基準年度に比べて3%増加していればよく、5年間で3%の増加割合ですから無理のない増加率です。また、①と②を比較して、増加額の10%の控除額と非常に大きな控除を受けることが可能な制度です。

平成29年度税制改正による変更点

(1)大企業の場合

 従来は、②の平均額>③の平均額とされていた要件を、②の平均額が③の平均額より2%以上増加することとし、平均額で2%以上の増加と要件は厳しくなりました。一方で、要件を満たした場合は、①から②への増加額の10%②から③を控除した金額の2%の合計額と控除限度額は従来に比べて大きくなりました。

 要件としては、平均2%アップと厳しくなりましたが、大企業向けの規定であり、デフレ脱却に向けた政策的な意図があります。

(2)中小企業の場合

 中小企業については、要件はそのままとして、②の平均額が③の平均額より2%以上増加した場合は、①から②への増加額の10%②から③を控除した金額の12%との合計額と控除額を大きくする改正内容としています。

 所得拡大税制については、実務的には納税額がある場合には適用となるケースが比較的多く見られるので、適用忘れがないように注意が必要です。なお、雇用者給与等支給額に役員及び役員の親族に対する給与が除かれるので身内しかいないような場合には、適用されません。

 計算を行う際に平均額での比較では雇用保険未加入のパートタイマーの給与は除外し、基準年度や前年との絶対額での比較では雇用保険未加入の者も含めるなどの入り繰りがあります。また、新設法人などの場合は基準年度が存在しませんが、従業員の雇用があれば自動的に要件を満たすことになり、控除限度額も大きなものとなります。適用できるケースも多くありますが、計算が思いの外難しい部分もあるので注意が必要です。

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