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2017年01月05日号 (第311)

103万円の壁はあるのか?

 みなさん、こんにちは、新しい年を迎えました。今年もよろしくお願いします。

 平成29年税制改正大綱で、所得税改革に着手するとのことで、配偶者控除や配偶者特別控除について見直しがなされました。具体的な内容については、平成29年度税制改正の内容としてご紹介しますが、今回は大綱の中で問題の一因となっている103万円の壁についてご紹介していきます。

税制面から103万円の壁を考える

 103万円の壁の理屈は、配偶者控除が受けられるのが所得税では、配偶者の所得金額が38万円以下であることを要件としていることによります。給与所得控除の最低額が65万円であるため、配偶者の給与収入が103万円までの場合には、配偶者控除の適用が受けられます。配偶者控除が適用される場合にどのくらい税金が安くなるかというと、国税である所得税の配偶者控除が38万円、地方税である住民税の配偶者控除が33万円となっているので、所得税の税率が5%、住民税の税率が10%の人の場合は、下記の算式のとおり、年間で5万2千円税金が減額されることになります。

38万円×5%+33万円×10%=5万2千円

 例えば、配偶者の給与収入が103万円だった場合には、5万2千円の税金が減額されるのに、配偶者の給与収入が104万円になったことで、配偶者控除が受けられないのであれば、家計の収入としては1万円増加しても、税金が5万2千円高くなるので、トータルで損をしてしまうということになります。実際には、配偶者特別控除という制度があり、配偶者の収入が104万円になった場合は、38万円の配偶者控除は使えなくなるものの、配偶者特別控除が38万円適用されるので、逆転現象は起きません。配偶者特別控除は、配偶者の収入が増加するにつれて、小さくなっていく仕組みとなっており逆転現象が起きないように配慮されています。つまり、税制上は103万円の壁は存在しないことになります。

生活現場から103万円の壁を考える

 税制面では、103万円の壁が起きないような配慮がなされているにも関わらず、年末調整業務をしているとパートさんで年間102万円台の収入に抑えている人を非常に多く見ます。

 これは、会社の給与規程の中で、配偶者が税制上の扶養家族の場合は、扶養手当を支給する仕組みとなっていることがあるのではないかと予想されます。税制面では逆転現象が起きないような仕組みにしているのですが、現実的には逆転現象が起こってしまうのです。それ以外にも、社会保険の扶養家族に含まれるか否かで、社会保険により逆転現象が起こることもあり、130万円の壁などと呼ばれる現実もあります。

 平成29年度税制改正大綱では、税制以外の問題を解決しなければいけないとして、社会保障制度や労使の真摯な話し合いなどの必要性について触れています。

平成29年度改正の影響

 所得税改革の第一弾と称する平成29年度税制改正では、配偶者特別控除についての上限を変更して、結果として配偶者の給与収入が150万円までは38万円の配偶者特別控除を受けられるように改正することとしました。平成30年分以後の適用なので、今年までは従来通りである点は注意が必要です。

 配偶者特別控除の適用上限は減税ですが、一方で増税となる改正もあります。一点目は、合計所得金額が1000万円を超える場合には、配偶者控除が受けられなくなることで、二点目は合計所得金額が900万円超の場合には配偶者特別控除の適用金額が縮減される点です。配偶者控除は所得が高い場合には、大きな減税効果となるため、公平性の観点から問題があるとされていました。例えば、配偶者控除は、所得税の税率が45%の場合は住民税と併せて20万円超の減額効果があり、高所得者が有利になるという側面があります。具体的な減税効果は下記の通りです。

38万円×45%+33万円×10%=20万4千円

 実務的には、給与収入1000万円を超える場合には、平成26年度税制改正により給与所得控除が平成28年分、平成29年分と漸次引き下げられ、さらには平成30年分で配偶者控除が適用できなくなるという形で増税が続く形になります。

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