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2016年11月02日号 (第305)

非課税所得について 各論4

 みなさん、こんにちは、11月になってしまいました。来年の税制改正について、いろいろ議論がされていますが、来年度の税制改正については、大綱公表後にご紹介していきます。

 さて、今回は、非課税所得の各論の4回目です。一点ですが、実務で問題になりやすい論点を含んでいますので、気にしておいてください。


◆資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における 
強制換価手続による資産の譲渡による所得その他これに類するものとして政令で定める所得

 簡単に言えば、借金の返済ができず、担保が競売されるような場合は、その所得について非課税となるという内容です。

 ただし、この取扱については、いくつかの個別論点を含んでいるので、注意が必要です。この点について、政令では、「法第九条第一項第十号に規定する政令で定める所得は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、国税通則法に規定する強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられたものとする」と定められています。「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」というのは、どのような場合か、また、「その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられた」の意味を理解しておく必要があります。

 「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないような場合、あるいは、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいいます。

 例えば、資力を喪失していない者が、特定の担保物権にかかる債務を敢えて未払いにして、競売というような場合には非課税となりません。また、実務的には、資力の喪失状態にあるか否かという論点についての事実認定も必要となります。

 「その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられた」か否かの判断については、資産の譲渡の対価(その資産の譲渡に要した費用がある場合には、その費用に相当する部分を除く。)の全部がその譲渡の時において有する債務の弁済に充てられたかどうかにより判定します。

 つまり、譲渡代金で債務を弁済して、残金が残るような場合には非課税に該当しないことになります。別な見方をすれば、残金が残ると言うことは、経済的に破綻しているとは言えないからです。

 また、下記の代物弁済による資産の譲渡に係る所得は、「その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられたもの」に該当します。

(1) 債権者から清算金を取得しない代物弁済

(2) 債権者から清算金を取得する代物弁済で当該清算金の全部を当該代物弁済に係る債務以外の債務の弁済に充てたもの

◆オープン型の証券投資信託の収益の分配のうち、信託財産の元本の払戻しに相当する部分として政令で定めるもの

 これは、元本の払い戻しなので所得が生じません。その点を明らかにするための規定です。

◆皇室経済法の規定により受ける給付

 正直なところ、実務で全くタッチしない分野ですので、詳しくない分野です。皇室経済法によれば内廷費、宮廷費及び皇族費が国の予算から支払われることになっています。内廷費については、皇室経済法で、「御手元金となるものとし、宮内庁の経理に属する公金としない」とされているので、立法上は課税することも可能なのかもしれませんが、課税しないことに決めたのでしょうね。このあたりは、法律をどう決めるかという話しになります。

 別の見方をすれば、皇室経済法に基づかない所得には、課税されることになります。

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