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2016年09月12日号 (第301)

赤字法人でも可能な固定資産税の節税

 全国の百貨店の売上げが7月の実績で、5ヶ月連続でマイナスだそうです。確かに、お客様も苦戦中です。景気が上向くような話しがなかなか出てきませんね。

 さて、今回は平成28年7月1日に施行された中小企業等経営強化法による固定資産税減税のご紹介です。

制度の概要

 中小企業等経営強化法による固定資産税減税は、経営力向上計画の認定を受けた事業者が、平成28年7月1日から平成31年3月31日までに、生産性を高める機械装置を取得した場合、3年間について固定資産税の課税標準額を2分の1にするという内容です。

 対象となる資産は、生産性を高める機械装置に限定され、工業会から証明書の交付を受ける必要があります。

 なお、機械装置の要件は下記の通りです。

・経営力向上計画に基づき取得されたもの

・販売開始から10年以内のもの

・旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するもの

・160万円以上の機械及び装置であること

 対象となる資産は機械装置ですが、製造業に限定されず、卸小売業が大型冷蔵庫を取得した場合、飲食店が厨房設備を取得した場合など、製造業以外の業種でも本制度は利用可能です。

 なお、中古資産の取得では、本制度の適用はありません。

 本制度が利用可能な中小事業者の判定は下記によって行います。

本制度利用の流れ

 本制度は、対象資産を購入して、申告をすれば適用されるわけではないので注意が必要です。具体的な流れは、下記の通りです。

 ①購入する機械を選定した後、工業会等による証明書を設備メーカー等を通して入手します。②事業所管大臣に当該設備の取得を含む「経営力向上計画」を提出し、認定を受けます。この申請の際に、工業会等による証明書を必ず添付することになります。③1月の固定資産税の申告の際に、申請書の写し、認定書の写し、工業会等による証明書の写しを申告書類とともに市町村等に提出します。

 経営力向上計画の認定を受ける前に、機械を取得することも可能ですが、取得日から60日以内に、経営力向上計画が受理される必要があるので、注意が必要です。

 なお、工業会からの証明書の取得には1~2ヶ月程度、経営力向上計画の申請から認定を受けるまで1ヶ月から45日程度かかるので注意が必要です。

実務上のポイント

 本制度は、赤字法人でも節税メリットが受けられる魅力的な制度です。一方で、経営力向上計画の認定など、一手間かかるのも現実です。固定資産税の税率が1.4%ですから、200万円の評価額の場合で、14,000円の節税効果です。認定支援機関に手数料などの費用が必要となる場合には、費用倒れとなる場合もあるので注意が必要です。

 また、節税の場合の全てに共通することですが、節税のために機械を取得するのではなく、機械を取得する必要がある場合に適用の有無を検討するようにしたいものです。例えば、節税メリットより、中古資産を購入する方が金額的に有利というケースも考えられますので、設備投資に当たっては十分に検討することが大切です。

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