税務最新情報

2016年06月10日号 (第295)

移転価格税制について

 消費税率の引上げ、噂通り延長されることになりそうです。成立している法案をどの時点で変更するのかなど、気になるところです。

 さて、前回タックス・ヘイヴン税制について、ご紹介しましたが、今回は、同じく国際課税に関連する移転価格税制についてご紹介していきます。

移転価格の問題とは

 国外関連企業と取引を行う場合に、全くの第三者と取引する場合とは異なる価格で取引されることが考えられます。前回、ご紹介したように、税率が低い国に、利益が大きく計上されるような価格設定をする場合は、租税回避となります。一方で、国外関連企業との取引であったとしても、その両国間で税率の差異がない場合には、どちらかに利益が集中されるような結果となっても、トータルで負担する税金に差異は生じません。つまり、租税回避につながるという話しではありません。

 例えば、A社とB社が関係会社であったとしても、A社が所在する国と、B社が所在する国で、税率が同率であれば、どちらでいくら利益が計上されたとしても、税負担が軽減されることにはなりません。一見すると、何の問題も無いように思えるかもしれません。しかし、トータルの税負担は同額だとしても、意図的にA社に利益が偏るような取引を行えば、A社が所在する国では税収が増加し、一方でB社が所在する国では税収が減少するという事態が生じます。つまり、租税回避という問題ではなく、国にとって課税権の問題が生じることになります。

移転価格税制

 租税回避に繋がらない場合でも、国が課税権を失われることになってしまうことは、各国にとっては、大きな問題です。そこで、多くの国では、移転価格税制を設け、国外関連企業間の取引で、よその国に所得が移転されているような場合に、移転された所得部分に対して、追徴課税できるような仕組みを設けています。

 この場合に、一方の国で独立企業間価格による取引でないことに基づいて、追徴課税された場合に、他方の国で独立企業間価格に基づいた取引価額によって減額調整されれば問題ないのですが、調整が行われない場合に、国際的な二重課税が生じることになります。

 この場合において、両国間で相互協議が行われている場合には、対応的な調整が行われますが、租税条約未締結の国の企業との取引の場合には、必ずしも調整が行われない場合もあります。

独立企業間価格とは

 移転価格税制は、仮に、一つの取引について、10円の金額のずれだったとしても、年間で1億個の取引であれば10億円の所得のずれが生じますので、非常にデリケートな問題となります。

 移転価格税制は、国外関連企業間による取引が、独立企業間価格に基づかない場合に、独立企業間価格によって取引が行われたものとして、課税する制度ですが、独立企業間価格をどのように算定するかという実務上の問題があります。

 基本的には、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法という三つの考え方があります。独立した第三者との取引があれば、その独立した第三者との取引価格に基づくのが独立価格比準法で、独立した第三者との取引がない場合に、売価から逆算する方法が再販売価格基準法、原価に一定利益を乗せるのが原価基準法となります。

 現実的には、独立した第三者との取引がない場合に、その算定は難しいので、事前確認制度が設けられており、租税条約締結国との取引の場合は、事前確認制度を利用することで、二重課税のリスクはなくなります。租税条約が締結されていない国の関連企業との取引を行う場合には、完全に二重課税のリスクを避けることができませんが、その場合でも当局と事前確認を行っておくことで、一定の効果が期待できます。

 中小企業には、あまり馴染みがない制度かもしれませんが、国外関連企業がある場合には、移転価格税制の適用を受ける可能性があることを気にしておく必要があります。 

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