税務最新情報

2016年06月02日号 (第294)

タックス・ヘイヴンについて

 みんさん、こんにちは、パナマ文書の話題が出てからしばらく経っています。パナマ文書そのものの話題ではありませんが、パナマ文書で問題になっている、タックス・ヘイヴンについて、ご紹介していきます。

タックス・ヘイヴン

 タックス・ヘイヴンは、ある取引に対して極端に軽減された課税となっている、あるいは免税とされている国や地域を言います。ちなみにヘイヴンは、havenであり、避難所の意味です。heavenの天国との誤解がよくあります。

 課税権は、国や地域に存するものですから、税率を低くすることで、企業を誘致し、富裕層が居住する誘因とすることは、その国や地域の政策として、必ずしも否定されるものではありません。

 例えば、シンガポールは、キャピタルゲイン(資産の値上がり益)に対する課税、相続税、贈与税などはありません。結果として、富裕層が移住してくることによって、国の経済力が増すことになります。一方で消費税などの課税は行われており、国として、財政がなりたつような仕組みにはしているというわけです。

タックス・ヘイヴンの問題点

 パナマ文書などでも、日本の法人や経営者が、タックス・ヘイヴンを利用していることが取り上げられていますが、課税上有利な国があれば、それを利用することは、経済的には当然なことです。大きな船舶を保有する場合に、パナマ船籍、あるいはシベリア船籍にすることで、大幅なコストダウンができます。そこで、パナマに法人を設立し、船舶を保有させて、それを日本の会社がリースするというような利用形態は一般的です。

 また、匿名組合による投資を行うために、ケイマンのSPC(特定目的会社)を利用することは、一般的なことです。

 一方で、税率が低い国に関係会社を設立して、関係会社に利益を移転するなど、租税回避に利用されている側面もあります。また、日本の当局から取り締まりが行いにくいので、マネーロンダリングに利用されるなど、問題点もあることは事実です。

タックス・ヘイヴン税制

 タックス・ヘイヴンに関係会社を設立して、利益を移転するなどの租税回避については、日本でもタックス・ヘイヴン税制で規制しています。パナマ文書の問題が最近のニュースで話題となっていますが、タックス・ヘイヴン税制自体は1978年税制改正で導入された制度であり、税の世界では、古典的なテーマです。

 タックス・ヘイヴン税制の仕組みは、法人税率が低い(法人の所得に課税されない、あるいは法人所得に対する税率が20%以下)国に外国関係会社を有する場合に、その外国関係会社の所得を、日本の法人の所得に合算して課税する仕組みです。

  なお、租税回避を防止する仕組みですから、一定の適用除外基準を設けて、租税回避に該当しない場合には、タックス・ヘイヴン税制の対象としない取扱としています。

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