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2016年05月20日号 (第293)

スキャナによる保存制度

 みなさん、こんにちは、過ごしやすい気候になりましたね。パナマ文書の話題が、あちこちにでていますが、税理士の仲間内で会話している分には、それほど盛り上がらない話題です。この件についても、もう少し情報が集まった段階でご紹介できたらと考えています。

 さて、今回は平成28年度税制改正の最終回で、スキャナによる領収書等の保存についてご紹介していきます。

平成28年度税制改正で身近な制度へ

 スキャナによる領収書等の保存制度自体は平成17年から存在しますが、3万円以上の契約書や領収書についてスキャナ保存が認められておらず、電子署名が必要であるなど、現実的な制度ではありませんでした。

 平成27年度税制改正で、金額の制限がなくなり全ての契約書や領収書などがスキャナ保存制度の対象となりました。また、電子署名は不要となり、電子データにした日付を証明するためのタイムスタンプがあれば良いこととされました。

 平成28年度税制改正では、スキャナについて装置要件がなくなり、スマホで撮影した電子データでもOKとされました。また、相互けん制要件について、小規模事業者の場合は、税理士又は公認会計士に事後検査を依頼することで、現実的な対応が可能となります。なお、この改正は平成28年9月30日以後に行う承認申請について適用されます。

税務署長の承認が必要

 スキャナ保存制度については、税務署長の承認を受けた者が、契約書、領収等の国税関係書類をスキャナにより記録された電磁的記録を保存することで、原本である領収書等の保存に代えることが可能とされています。

 すべての企業が、すぐに初めてよいのではなく、税務署長の承認が必要である点は、注意が必要です。

具体的な運用方法

(1)原則的な取扱

 領収書等を受領する者が、その領収書等に署名を行った上で、スキャンして3日以内にタイムスタンプを付します。

 相互けん制と定期検査が必要とされており、領収書等を受領する者以外の者が記録事項の確認を行う必要があります。また、定期検査を行う必要があり、定期検査を終了するまでは、領収書等の原本を保存しておく必要があります。定期検査では、領収書の原本とスキャナで保存されている内容が一致するかの確認作業を行います。

(2)小規模企業者向けの手続き要件の緩和

 社長1人で事業を行っている場合などは、現実的に社内で相互けん制を実施することができません。そこで、事後検査を税理士又は公認会計士に依頼することで、領収書等を受領する者以外の内容確認を省略することが可能となります。

 小規模事業者とは、商業・サービス業では従業員5人以下、商業・サービス業以外では従業員が20人以下の事業者とされています。

実務的な視点からみるスキャナ保存制度

 ある程度の規模の会社の場合は、書類の保存にそれなりのコストが生じているケースが多いので、経費の削減に繋がる可能性はあります。

 また、業務の効率化という側面からは、経費精算について、署名して撮影したデータを、その都度、経理に送信するなどの仕組みを採用すれば、従来の経費精算に比べて、作業時期の分散化により業務のスピードアップに繋がるかもしれません。

 一方で、スキャナ保存制度は、一見すると負担が軽くなるように思えますが、保存する際に、取引日、金額、取引内容で検索できるようにしておく必要があります。よって、ある程度のITスキルと手間が必要になることも事実です。さらに、タイムスタンプを押すために一定のコストがかかるので、そのような視点でも検討を加える必要があります。

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