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2016年04月01日号 (第288)

適格請求書等保存方式(インボイス方式)①

 みなさん、こんにちは、最近の報道を見ていると、消費税率の引き上げが先送りになりそうな気配がなきにしもあらずな雰囲気です。外国の著名な学者さんを招聘して、自民党の勉強会で、消費税率の引き上げは先送りすべきだとの報道ですから、消費税率の引き上げを遅らせることに関する地ならしのように感じる側面もあります。

 今回は、軽減税率の導入に伴い制定された、適格請求書等保存方式(インボイス方式)について、ご紹介していきます。法案を見る限り、軽減税率が先送りになったとしても、適格請求書等保存方式については、日本の制度として定着するような規定ぶりとなっていますので、理解はしておくことが必要となります。今回は、概要の説明になります。詳細は、次回以降となります。

◆適格請求書等保存方式

 現行の消費税法では、仕入れ税額控除の適用を受けるためには、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿及び請求書等の両方を保存する義務があります。ただし、税込支払金額が3万円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、帳簿の保存のみで仕入れ税額控除を認めています。現行では、免税事業者からの仕入であっても、仕入れ税額控除を認める仕組みとなっています。

 平成33年4月以降は、適格請求書等保存方式が導入され、一定の帳簿に加えて、適格請求書等の保存が、仕入れ税額控除の要件とされます。適格請求書等とは、具体的には下記のものをいいます。

①適格請求書
②適格簡易請求書
③適格請求書の記載事項に係る電磁的記録
④事業者が課税仕入れについて作成する仕入明細書等の書類で、適格請求書の記載事項が記載されているもの(適格請求書発行事業者の確認を受けたものに限る)
⑤媒介又は取次ぎに係る一定の書類

 帳簿及び「請求書等」から帳簿及び「適格請求書等」への変化であり、イメージ的には今までとあまり変化がないように見えます。しかし、「適格請求書等」を発行できる事業者は適格請求書発行事業者に限られ税務署に申請を行い、登録を受ける必要があります。

 現時点では、売り手側に消費税を区分記載した請求書の交付義務・保存義務は課されず、偽りの請求書の交付に対する罰則規定も存在しません。適格請求書等保存方式が導入された場合は、適格請求書等を発行した事業者は、適格請求書等の保存義務が生じ、適格請求書類似書類等の交付が禁止され、罰則規定も設けられます。

 つまり、仕入れ税額控除を受ける側では大きな変化ではありませんが、適格請求書等を発行する事業者の負担が増加することになります。

◆適格請求書発行事業者の登録

 適格請求書等を発行することができるのは、「適格請求書発行事業者」に限られます。適格請求書発行事業者となるためには、免税事業者以外の事業者が、納税地の所轄税務署長に申請書を提出して、適格請求書を交付できる事業者として登録を受ける必要があります。

 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号などは、インターネットを通じて登録後公表されることになります。

 適格請求書発行事業者が、登録の取消しの届出書を所轄税務署長に提出することで、その登録は取り消されます。この点については、実務上気をつけておく必要があります。従来は、事業者免税点制度により年間の課税売上高が1,000万円以下になることで、その翌々年から免税事業者になりましたが、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、登録の取消を行わなければ、事業者免税点制度を利用できないことになります。よって、事業者免税点制度の適用のためには、適格請求書発行事業者の登録の取消しが必要となります。

 

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