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2015年09月24日号 (第271)

日本型軽減税率制度案について考える

 みなさん、こんにちは、消費税の軽減税率について、マイナンバーカードを用いて、食品に係る2%相当の税額について、還付するという、日本型軽減税率制度案が、マスコミなどにより注目を浴びています。
 今回は、与党税制調査会の資料から日本型軽減税率制度について、検討を加えてみます。

日本型軽減税率制度の全体像

 日本型軽減税率制度では、消費者は、いったん10%を含む価格で代金を支払い、その場で2%相当部分の還付ポイントを取得する仕組みとなります。還付ポイントは、日本型軽減税率の運用のために必要な事務を行う「還付ポイント蓄積センター」で集計され、一定の限度額を設けて、その支出を行った個人の口座に還付されるという形で運用されます。
 還付ポイントは、マイナンバーが記された「マイナンバーカード」を、軽減税率の対象品を購入した際にレジにかざすことで、還付ポイント蓄積センターに蓄積される仕組みとなります。
 なお、マイナンバーカードには、マイナンバー、氏名、住所、生年月日、性別などの個人情報が含まれていますが、これらの情報を引き出すにはパスワードが必要で、購入先の店舗に個人情報が自動的に流れるという心配はありません。マイナンバーカードから、読み取りが行われるのは、公的個人認証用の「符号」のみと説明されています。
 実際の還付手続は、還付手続のためのポータルサイトを利用して行うことが計画されています。

 還付ポイントの対象品目は、酒類を除く飲食料品で外食サービスを含むとされています。

 還付金額については、上限を設けることとされており、マスコミの報道などでは、1人当たり4,000円あるいは5,000円とされており、年間20~25万円の飲食費に対応する消費税部分となっています。なお、与党税調の資料では、信頼できる統計に基づく算式をもって決める方向で検討としており、金額面については流動的です。

実現可能性について

 与党税調の資料では、施行時期は、「マイナンバーカード」の普及の見通し、政府のセキュリティに係る取り組み、事業者の準備スケジュール、行政実務の準備スケジュールを見極めながら検討と書かれており、消費税率が10%に引上げられる平 成29年4月からとは、考えていないように読み取れます。
 一方で、還付ポイント蓄積センターは、独立した機構や建物ではなくサーバーという説明がなされており、妙にリアリティ があるのも事実です。
 政府が公表しているマイナンバー制度利活用推進ロードマップ案によれば、平成30年には、個人番号カードに、運転免許証、健康保険証などの機能を持たせることも検討されており、マイナンバーカードの利用促進にも役立つので、意外に早い導入となることも考えられます。

消費税率10%引き上げ時に対応

 将来的に、日本型軽減税率制度の導入が行われる可能性はさておき、平成29年4月に10%に引上げられる消費税率に対する軽減税率はどうなるのでしょうか。日本型軽減税率制度の根本は、事業者に負担をかけない、いったんは標準税率で販売するという部分が特徴であり強みですから、従来型の軽減税率の形式は採用しないと考えるのが、合理的です。
 食料品の購入実績に基づいて還付ポイントを集計するものの1人当たりの上限額を設けて還付をするということは、結果として多くの納税者には上限額が還付されることになります。考えようによっては、定額給付と同じ結果になるようにも思えます。与党税調の資料を見ると、日本型軽減税率の説明の前に、諸外国の税制を活用した給付措置の説明をしているので、とり
あえずは、定額給付、あるいは給付付税額控除制度という形で、軽減税率の代替とする可能性が高そうです。

 

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