税務最新情報

2015年07月21日号 (第265)

中小企業のためのマイナンバー(2)

 みなさん、こんにちは、税法に関する雑誌を何冊か定期購読しているのですが、タワーマンション節税に規制がかかりそうだとの記事がありました。購入金額に比べて、相続税の評価額が極端に低く、一方で売却すれば利益も見込めるということで、注目を浴びており、雑誌や書籍などでも取り上げられていました。仮に、規制がかかると、相続税の節税メリットがなくなるだけでなく、期待した効果が得られない事による値下がりの可能性など、大きなリスクになってしまいます。節税だけを目的にした意思決定は、後出しで規制が加わるという、大きな落とし穴が待っています。
 さて、今回は中小企業のマイナンバーということで、中小企業がどのようにマイナンバーについて管理していかなければならないのかの全体像についてご紹介します。

マイナンバーの罰則規定

 マイナンバーに関する法律は、正式には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」ですが、長いので番号法と記載します。
 昨年、大手企業が個人情報を流出して話題になり、今年の6月にも日本年金機構の個人情報の流出が話題になりました。報道の扱われ方からも、個人情報に対する関心の高さが伺われます。
 番号法では、個人情報利用事務等に従事する者が、正当な理由無く、特定個人情報ファイルを提供した場合には、4年以下の懲役又は200万円以下の罰金、又は、その併科と規定しています。企業で、従業員の不正による番号の漏洩があった場合には、企業イメージを毀損するだけでなく、懲役などの実刑判決にも繋がる可能性があります。

マイナンバーの取扱いに求められる安全管理措置

 マイナンバーは、その制度の性格上、非常に取扱いを慎重に行う必要があります。税金や社会保険の手続のために、会社に入社した場合には、マイナンバーを会社に伝える必要がありますし、不動産を賃貸する場合や、源泉徴収の対象となる報酬を受け取る場合には、支払調書作成のために、支払いをする相手方に自分のマイナンバーを伝える必要があります。つまり、パスワードのように秘匿されるものではありませんが、法律の定めがある場合には伝えることが必要な番号です。一方で、安全にマイナンバー制度が運営されるためには、なりすましなど悪意を持った者による犯罪に備えるため、マイナンバーを扱う者には、安全管理措置が要求されています。
 安全管理措置の大まかな体系としては、下記のとおりとなります。

 ①組織的安全管理  事務取扱者及び責任者の明確化
 ②物理的安全管理  特定個人情報を取り扱う区域の管理等
 ③技術的安全管理  情報システムの管理等
 ④人的安全管理  事務取扱担当者の監督・教育

 詳しい説明は、各論の話しとなるので、次回以降とします。簡単に説明すると、①会社としての仕組み作り、②マイナンバーを取り扱う場所や保管方法について、③パソコン等による管理を行う場合のルール、④マイナンバーを取り扱う者の教育と監督について、マイナンバーが適切に管理できるようにしてくださいという内容です。

安全管理措置の中小規模事業者に対する特例

 番号法では、重い罰則規定があり、安全管理措置についても細かな定めを置いています。ただし、中小企業に、大企業と同じルールを適用することは、現実的ではありません。そこで、安全管理措置については、中小事業者に対する特例を設けることで実務への配慮がされています。

 番号法における中小企業とは、事業者のうち従業員の数が100人以下の事業者で、次に掲げる事業者を除く事業者をいいます。
  • 個人番号利用事務実施者(税務署、年金事務所、健康保険組合、ハローワークなど)
  • 委託に基づいて個人番号関係事務又は個人番号利用事務を業務として行う事業者(税理士事務所、社会保険労務士事務所など)
  • 金融分野の事業者(銀行、信用金庫、保険会社など)
  • 個人情報取扱事業者(国の機関、地方公共団体、独立行政法人など)

 マイナンバーに関して、中小事業者に該当する場合は、安全管理措置に関する取扱いが緩和されています。まずは、自分の会社が中小事業者に該当するのか否かの確認が必要です。従業員が100人以下でも、税理士事務所、社会保険労務士事務所、健康保険組合、信用金庫、信用組合などは、中小事業者から除かれることになります。
 なお、保険の代理店等が中小事業者に含まれるかは、微妙なところですが、保険会社で、代理店がマイナンバーを取り扱わない仕組みを模索しているとの話しを聞いたことがあります。
 自分の会社が中小事業者から除かれる業種でないか否かについても注意が必要です。
 次回は、安全管理措置について、原則的な取扱いと中小事業者向けの取扱いを比較してご紹介していきます。

 

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