税務最新情報

2015年07月10日号 (第264)

中小企業のためのマイナンバー(1)

 みなさん、こんにちは、梅雨らしい天気が続いています。政府税調は、約20年ぶりに所得税の抜本改革に向けた議論を始めたようです。若い世代の負担を軽減するということを主眼として、平成27年秋には中間取りまとめ、平成28年半ばに中間答申をまとめると報道されています。具体的な内容としては、基礎控除や配偶者控除の見直しなどを含むようです。
 さて、今回から数回に分けて中小企業向けのマイナンバーに関する情報を提供していこうと思います。こちらの記事でも、昨年に概要をお伝えしていますが、今回は、中小企業の視点で、より踏み込んでご紹介をしていきます。

マイナンバーの概要

 マイナンバーは、市区町村長が住民票を有する全ての者に対して指定する12桁の番号です。マイナンバーの通知は、今年の10月から始まり、市区町村から通知カードが郵送されてきます。
 マイナンバーは、住民票を有する全ての者に対して付与されるものであり、成人に限らず、赤ん坊にも割り振られることになります。実際に、確定申告、年末調整、社会保険の手続などの際に、扶養家族のマイナンバーを記入することになります。
 なお、マイナンバーは、原則として変更されません。しかし、漏洩などがあり、不正に使われるおそれがある場合に限り、本人の請求や市区町村の職権によって変更されることになります。
 また、マイナンバーは住民票を有する者に指定されるため、日本人でも海外に長く住んでいて、住民票を有しない場合には、マイナンバーが付されません。一方で、外国籍の方でも住民票がある長期の滞在者や特別永住者などにはマイナンバーが指定されることになります。

マイナンバーの利用の制限

 レンタルビデオ店などの会員になる際に、免許証のナンバーを書き写されること、あるいは、携帯電話を契約するにあたって免許証のコピーを取られることなどがあります。免許証が身分証明書の一つとして、民間企業で利用されている一例です。
 一生変更されることがないマイナンバーは、個人を特定して管理するには非常に便利に思えますが、民間企業でマイナンバーを利用することは認められていません。
 マイナンバーの利用が認められるのは、国や地方公共団体が、社会保障、税、災害対策の3つの分野で、さらに法律か条令で定められた手続でしか利用できないことになっています。

マイナンバーを大切にしなければならない理由

 会社に入社する場合に、社会保険の手続、扶養控除等申告書など、本人だけでなく家族のマイナンバーを記載することになります。また、学生時代にアルバイトを、10箇所で行えば、10箇所の会社に対してマイナンバーを提出することになります。あるいは、不動産のオーナーは、借り主に対して借り主が変更になる度に、支払調書に記載するためにマイナンバーの提出を求められる場合があります。
 一方で、マイナンバーは大切な番号なので、むやみに他人に提供することはできませんと一般的に説明されています。
 マイナンバー関係の研修会の際に、むやみに他人に教えてはならないのに、会社に提供しなければならないのは、矛盾しているのではないかという質問を受けることがあります。この点については、マイナンバー自体は、暗証番号とは異なり、秘匿する番号ではなく、必要に応じて提供する番号と理解してくださいと説明しています。
 民間企業が、税務署への支払調書の作成、年末調整及び社会保険の手続で、従業員のマイナンバーを提供してもらう必要があります。その場合でも、マイナンバーを従業員コードとして利用するなど、民間企業内での利用はできないことになっています。あくまでも、国や地方公共団体に対する手続を行うときのみに利用するということになります。
 マイナンバーが漏洩した場合に、必ずしも大きな被害に結び付くというわけでは、ありません。しかし、悪意を持った者が他人のマイナンバーを入手することで、「なりすまし」などの犯罪に繋がる可能性も考えられます。つまり、暗証番号のように秘匿すべき番号ではないものの、マイナンバーの制度を守るためには、大切に扱わなければならない番号と位置付ける必要があります。
 中小企業でも、従業員や家賃の支払先などのマイナンバーを入手する必要が生じます。民間企業が、他人から預かるマイナンバーをどのように管理していく必要があるのかについて、次回以降ご説明していきます。

 

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