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2015年06月10日号 (第261)

馬券の払戻金に係る通達が公表

 みなさん、こんにちは、暑い日、雨が多い日と6月らしい天候になりつつあります。体が、暑さに慣れていないため、熱中症になりやすいとのことですので、気をつけましょう。
 平成27年度税制改正については、一段落となりました。昨年6月10日に外れ馬券訴訟についてご紹介しましたが、その続編です。その後、平成27年3月に最高裁判決でも納税者が勝訴し、平成27年5月に外れ馬券の取扱いについて、通達の変更が行われたのでご紹介していきます。

通達の改正

 平成27年3月10日の馬券の払戻金に対する最高裁判決を受けて、その数日後に、国税庁は「最高裁判所判決(馬券の払戻金に係る課税)の概要等について」という文書を公表し、通達を変更することを明らかにしていました。
 平成27年5月に変更後の通達が公表されたので、ご紹介します。

改正後改正前

(一時所得の例示)

34-1 次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。

  1. 懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)
  2. 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)

(注)

  1. 馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用して独自の条件設定と計算式に基いてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。
  2. 上記1.以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。

※ 以下は変更がないので省略

(一時所得の例示)

34-1 次に掲げるようなものに係る初頭は、一時所得に該当する。

  1. 懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)
  2. 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等

※ 以下は変更がないので省略

 通達の内容は、括弧書きと注意書きが追加される形で、基本的なスタンスには変化がありません。
 注意書きの内容は、①馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいて、②インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に、③個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして、④当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げていることを要件として、さらに結果として、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合としており、一時所得とならないケースは、かなり限定的な取扱いとみるべきです。

一方で納税者が負けている判決も

 最高裁判決では納税者が勝訴しましたが、平成27年5月14日の東京地裁判決では、納税者が敗訴しています。金額的には最高裁判決と同等かそれ以上だったそうですが、馬券の購入の仕方が「男性の馬券購入は一般的な愛好家と変わらない」として、請求を棄却したそうです。
 通達の規定ぶりからも、一時所得にならないケースの方が希であり、実務的には、難しい判断の局面が増えたようなイメージもあります。

通達変更の影響

 通達の改正は、今後の取扱いに影響すると同時に過去の取扱いにも影響があります。法律の変更はなく、通達が法律の解釈と異なっていたわけですから、過去に通達にしたがった処理をしていた場合に、更正の請求を行うことが可能です。
 具体的には、今回の通達改正を知った日の翌日から2か月以内に更正の請求をすれば、最大で5年分の納め過ぎた税金について還付を受けることが可能です。知った日から2か月以内ですから、心当たりがある場合には、慌ただしい手続となります。

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