税務最新情報

2014年07月01日号 (第228)

棚卸の重要性

 みなさん、こんにちは、梅雨らしい天候が続いています。体調管理に気をつけましょう。
 税制改正の方向性として、法人税率を引き下げるための財源確保のために外形標準課税などが議論されています。外形標準課税の特徴は、赤字でも税負担が生じることです。本当に導入されることになれば、かなり、多くの法人に影響を与えることになります。
 さて、今回は、前回に引き続き税務からは、少し離れますが、棚卸の重要性について説明していきます。

棚卸は利益確定のための最も重要な手続

 利益の計算を行う際に、売上に対応する原価、つまり売上原価を計算する必要があります。そして、売上原価を計算する場合は、一般的に下記の計算式によって計算を行います。

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 前期末の在庫(前期末の棚卸の金額)は、期首の在庫(期首商品棚卸高)となり、それに当期仕入金額を加算することで、販売可能な仕入金額の総額が計算されます。販売可能な仕入金額の総額から、期末の在庫(期末商品棚卸高)を控除すれば、当期中に無くなった商品の金額を求めることが可能になります。
 盗難や紛失、自己使用などがないという前提なら、無くなった商品は、売れたから無くなったのだと仮定することができます。よって、実務上は、無くなった部分の金額を売上原価と考えて損益計算書を作成する場合があります。
 つまり、棚卸をすることにより、売上原価を算定することが可能になるという側面があります。

棚卸をしないで売上原価を算定する方法

 ちなみに、棚卸をしなくても、売上原価を算定することも可能です。具体的には、商品が売れる毎に、売れた商品の仕入金額(原価)を集計していけば、売上に対応する仕入金額である売上原価を算定することが可能となります。
 何十年か前は、レジで全ての商品を登録することが難しく、期末に棚卸をして、初めて売上原価が計算できるという状態が当たり前でした。現在でも、レジに全ての商品を登録していない場合などは、棚卸を行わないと売上原価が計算できないということになります。
 最近では、全商品をレジで管理して、売上の計上と同時に売れた商品を全て記録できるので、レジで売上原価を集計できてしまいます。この場合に、棚卸が不要かというと、そうではありません。なぜなら、売上に対応する売上原価を直接計算することは可能ですが、盗難や自己使用など売れていないけれども無くなっている商品について把握することができないからです。つまり、売上原価が算定できたとしても、本当に在庫が実在するかを確認するために、実地棚卸が必要になります。

実地棚卸の重要性

 どのようなビジネスでも商品を扱っている場合には、定期的な実地棚卸は必須です。レジなどで売上原価を計算できない場合には、売上原価を計算する直接の手段となることは上に書いたとおりです。
 また、レジで売上原価を計算できる場合でも、実際に、棚卸をすることで、盗難や従業員の不正によるロスが明らかになります。
 例えば、小売店を複数店舗で経営しているような場合には、レジで計算されるあるべき在庫量と、実地棚卸で確認される在庫量で、一定規模のロスが集計されてきます。想定されるロスであれば、盗難であることが考えられますし、異常なロスが生じる場合には、従業員が不正をしているなどの可能性が考えられます。想定されるロスなのか、異常なロスなのかを把握する意味でも、定期的な実地棚卸は不可欠となります。また、ロスの金額が大きいようであれば防犯カメラの設置など、取るべき手段を検討することが可能になります。

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