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2014年06月10日号 (第226)

外れ馬券訴訟の問題を考える

 みなさん、こんにちは、暑くなりました。まだ、体が暑さに慣れていないので、堪えます。そして梅雨が来ると思うと、気分的にはマイナスになりやすいですね。
 さて、今回は、外れ馬券訴訟の問題点について考えてみます。
 現在、地裁、高裁の判決まで出て、検察側が上告をしたということで、最終的な結論はまだでていません。また、高裁判決は脱税に関する刑事事件の判決であり、税務訴訟は地裁で係属中という状態です。なお、記事を書いている時点では、判決文も公表されていないので、今回は問題点がどこなのかという視点で書いてみます。

問題の所在

 所得税基本通達34-1で、一時所得に該当するものとして、競馬の馬券の払戻金が例示されています。
 通達は、法律ではなく、上級行政機関が下級行政機関に対して行う命令のことをいいます。つまり、課税当局は、通達がある以上、通達通りの処理をせざるをえないという状況があります。一方で、税金については、国民の財産権の侵害と表裏一体であるため、租税法律主義という基本的な考え方があります。簡単に説明すれば、法律に従ってのみ課税が行われるという意味です。
 また、所得税法34条では、一時所得の計算をする上で、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」部分のみを、収入金額から控除できるとしています。つまり、外れ馬券は収入を生じた原因の発生に直接要した金額ではないから、所得の計算をする際に控除できないという取扱いになります。こちらは法律の規定ですから、一時所得該当すれば、外れ馬券は、所得を計算する際に控除できないという結論に繋がっていきます。
 課税当局は、通達が存在する以上、一時所得としてしか処理はできませんし、一時所得である以上、外れ馬券は所得計算に際して控除できないという判断になります。
 それに対して、納税者は、一時所得ではなく雑所得であり、所得の計算にあたって、間接的な経費である外れ馬券も必要経費として控除できると主張したわけです。

通達通りの処理を行った場合の問題点

 さて、今回の外れ馬券の問題は、大きな問題点を内在しています。
 報道によれば、3年間で28億7000万円の馬券を購入して、30億1000万円の払戻を受けたとされています。キャッシュで考えると、1億4000万円しか手元に残らないことになります。
 ところが、一時所得に該当するとした場合、外れ馬券は経費とならないため、課税当局は5億7000万円の脱税をしたとして処理を行っています。
 手元に1億4000万円しか残らないのに、5億7000万円の課税というのは、常識的に課税の仕組みがおかしいのではないかということを考えてしまいます。
 一方で、30億以上稼いだ人が、28億円をギャンブルに使ったからといって、課税所得が減少することはありません。今回の事件と、どのようにバランスを取るのかということは非常に難しい問題です。

裁判所の判断と今後の課題

 高裁判決では、「営利を目的とする継続的行為から得た所得」ということで、雑所得であるとして、外れ馬券を必要経費として認めました。
 しかし、どの規模から雑所得になるのかという線引きを明確化する必要が生じます。例えば、今回のケースは28億円以上の馬券購入費用と30億円の払戻収入でしたが、2800万円の馬券購入費用と3000万円の払戻収入の場合は、どう判断すべきでしょうか。
 今回のケースは特殊だという解説をよくみかけますが、類似の問題は、今後も起こりうるので、司法が外れ馬券の必要経費性を認めるのであれば、結果として立法上の手当が必要となってしまいます。
 そもそも、今回の裁判では刑事事件と税務訴訟が並行して行われていますが、刑事事件については競馬の払戻収入について無申告であったことに端を発しています。この点について、大口払戻しに対する支払調書の提出など、所得が捕捉できるための仕組みについても手当が必要だという意見もあります。
 そして、現時点での判決結果だけをみて、雑所得として申告するというのは、やめておきましょう。ちなみに、宝籤は非課税の制度が存在しています。制度を変更するとしても、ギャンブルだけ特別の枠を設けるのか、デリバティブなどの投機的な所得との境界をどうするのか、法人が馬券の購入を継続して行った場合にどうするかなど、簡単に答えがでにくい領域です。
 判決の行方も含めて、税制が大きく動く可能性がある事件ですので、今後も注意していきましょう。

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