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2013年04月10日号 (第186)

所得税の税率構造と給与所得控除の上限設定

 こんにちは、税理士の飯田聡一郎です。3月決算法人の決算作業の時期になりました。今回の3月決算法人は、復興特別法人税の申告書の作成が必要になります。内容自体は難しいものではありませんが、失念しないように気をつけましょう。

 さて、今回は、平成25年度税制改正の所得税の税率構造の変更と、平成24年度税制改正の給与所得控除の上限設定について、ご紹介します。

◆所得税の税率構造の変更

 平成25年度税制改正で、所得税の税率構造が変化しました。課税所得金額が4,000万円超の部分に対する税率が、40%から45%へ引き上げられました。なお、住民税と合わせると、55%の税負担となります。
 もっとも、昭和49年には、住民税と合わせて最高税率が93%で、その後、昭和59年までは、最高税率が住民税と合わせて88%の税率でした。その意味では、かつての高い税率を経験したことがある方は、高くないと感じる税率かもしれません。
 なお、新税率は平成27年分の所得税から適用になります。以下が、所得税の速算表です。 

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 実務的には、課税所得で4,000万円超となるケースは、それほど多くないので、多くの人にとっては、関係の薄い改正と言えます。 

◆給与所得控除の上限設定

 平成24年度税制改正で、給与所得控除の上限が設定されています。なお、こちらは、平成25年分の所得税から適用となるので注意が必要です。

 従来は、給与収入が増加すると、給与所得控除も収入に応じて増加し続ける計算式でした。給与所得控除は、サラリーマンの必要経費的な性質ですが、給与収入に応じて必要経費が必ずしも増加するとは考えられないこと、諸外国でも上限設定があることを理由に、給与収入が1,500万円を超える場合は、給与所得控除が245万円で打ち止めとなりました。

 なお、給与所得控除額の速算表は以下の通りです。 

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 給与所得控除の上限の設定は、先ほどの税率構造の変化に比べ影響を受ける人が多そうです。 

◆役員給与の損金算入の条件と注意点

 法人を設立する目的の一つとして、給与所得控除の有効活用による節税があります。個人事業の場合は、収入金額から必要経費を控除した残りが、所得金額になります。ところが、法人成りして、従来の所得部分を役員給与として支給すれば、必要経費部分は当然に会社のコストとした上で、代表者が給与所得控除を受けられるメリットが生じます。

 法人が役員に給与を支給する場合、定期同額給与、事前確定届出給与、若しくは利益連動給与のいずれかに該当しないと損金算入されません。もっとも利益連動給与は、上場会社でしか利用できないので、上場会社以外では定期同額給与か事前確定届出給与のいずれかの要件を満たす必要があります。

 定期同額給与の改定時期、あるいは事前確定届出の提出期限は、決算をまたいだタイミングとなるため、決算時期に役員給与額を決定する必要が生じます。
 例えば、法人の実効税率より、適用される所得税率が低くなるように、給与額を定めている場合には、給与所得控除の上限により、適正額の金額が変更になるので注意が必要です。

 実際に、長い間、給与の改定を行っていなくて、会社で設備投資など資金需要があるにも関わらず、法人の実効税率より高い所得税の負担をしているという失敗例を目にすることもあります。資金が足りない部分は、役員が会社に貸すような形で対応しているのですが、役員給与を減らして会社の利益を増加させた方がよかったという事例です。いずれにしても、定期的に役員給与額についてメンテナンスすることが大切です。

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