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2013年03月01日号 (第182)
改正前と改正後の事業承継税制の要件(贈与税編)
みなさん、こんにちは、税理士の飯田聡一郎です。確定申告の業務に追われる毎日です。最近あった事例で医療費控除について、過去の申告を忘れていたというケースがありました。過去の分でも今から申告を行えば、税金が還付になる場合もあります。気づいたら、早めに税理士などに確認してみましょう。
さて、今回は、前回に引き続き事業承継税制です。前回の、最後の部分で書いたように、平成25年分と平成26年分は従来の要件、平成27年分以降は改正により要件が緩和されます。
納税猶予制度の仕組みとして、経営者が交代する時点で後継者が株式の贈与を受けて、贈与税の納税猶予を適用し、相続時点で相続税の納税猶予へ移行、その後に納税の免除を受けるというのが、納税猶予制度の想定される利用方法です。よって、最初に、贈与税の納税猶予制度についてご紹介することにします。
◆贈与税の納税猶予制度への改正の影響
親族外への事業承継の場合に、株式を正当な対価で購入して貰うことができれば何の問題もないのですが、現実には後継者候補が株式を購入できる資金を有していないケースがほとんどです。また、株式の贈与を行うにしても贈与税の負担が重く、換金できない非上場株式の贈与を受けても、贈与税の納税ができないという問題が生じていました。
従来の取扱いでは、納税猶予制度が親族への承継でしか利用できなかったため、親族外の後継者候補の場合は、事業承継税制が活用できないという問題点がありました。平成25年度改正で、そのような問題が払拭されました。
また、改正前の納税猶予制度は、贈与するタイミングで、先代経営者が代表者でなくなることだけでなく、役員から外れるという完全な引退が要求されていました。平成25年度改正で、代表者でなくなれば役員として続投することが可能となり、先代経営者の人脈や能力を活用しながらの緩やかな事業承継が可能となりました。
◆時系列にみる要件の比較
※クリックでPDFデータが開きます
◆納税猶予適用後の注意点
贈与税の納税猶予を受けて5年間については、要件を満たせなくなった場合に、納税猶予を受けた贈与税について全額を納付する必要が生じます。この場合には、利子税なども必要になります。
一方で、5年間経過することで、要件自体がかなり緩やかになります。実務的には、資産管理会社に該当しないことについて、気にしておけばよいことになります。株式を譲渡した場合は、譲渡した割合部分だけの納税となりますので、贈与時の時価以上で売却できればリスクとはなりません。
また、贈与税の納税猶予を受けた場合で、その後、相続が生じた際に、相続税の納税猶予へ切り替えることも可能ですが、相続税として精算することも可能です。贈与税の納税猶予は、相続時精算課税と同様に贈与時の価額で金額を固定する効果がありますから、贈与時の価額以上で処分できる場合などには、処分して相続税を納付するのも選択肢となります。
今回は、贈与税の納税猶予について説明しましたが、次回は相続税の納税猶予の要件と、納税猶予が免除される場合についてご紹介していきます。また、5年経過後のリスクとなる資産管理会社の内容の詳細ついても、次回にご紹介します。
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