税務最新情報

2025年06月10日号 (第542)

タワマン節税対策とその影響

 みなさん、こんにちは。雨の日が増えてきて、季節の移ろいを感じます。今回は、昨年から導入されたタワーマンションの相続税評価に関する改正についてご紹介します。

タワマン節税とその対策の通達が公表

 数年前から、相続前にタワーマンションを購入すると、購入価額や時価と評価額に大きな乖離があることから、節税対策になると言われていました。実際にこの「タワマン節税」は多く行われ、令和4年には最高裁判決も出ています。この訴訟では、地方裁判所から最高裁判所まで一貫して納税者が敗訴しています。実務界では、財産評価通達に従って計算をしているにもかかわらず、訴訟で負けてしまう可能性があることで、対応に苦慮していました。

 一昨年の8月にこちらの税務情報で紹介をしましたが、タワマン節税の対策として、令和6年からマンションの評価に補正率を乗じて計算を行うようになりました。

 国税庁のQ&Aや、実際に計算を行うための計算シートは、下記からダウンロードが可能です。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/1470-17.htm

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/231013/02.htm

補正に当たっての計算の要素

 マンションの評価を補正するための要素としては、以下の4つが利用されます。

① 築年数:築年数が短いほど評価を高くする傾向があります。

② 総階数:総階数が多いほど評価を高くする傾向があります。

③ 所在階:所在階が高いほど評価を高くする傾向があります。

④ 専有部分の面積に対する敷地権の面積の割合:専有面積の割合が大きいほど高い補正となります。

 しかし、上記の説明では、どのくらい影響するのか実感として全くイメージできないかもしれません。

実際に評価計算してみたイメージ

 実務として補正率の計算をしてみると、築年数が40年を超えている場合は、結果として補正無しとなるケースが多いように思います。タワーマンションではない一般のマンションで比較すると、都心のマンションでは築30年くらいでも1.3倍程度の補正がかかる一方、郊外で敷地面積が広めのマンションだと築30年で補正なし、築25年だとわずか(1.1弱)の補正がかかる、といったイメージです。

 築年数がどのくらい影響するかを確認するため、築10年でそれ以外の条件を同じで計算すると、都心のマンションで1.7倍、郊外のマンションで1.4倍程度になりました。いずれもタワーマンションではなく、地上8階建ての普通のマンションを想定しています。

 ちなみにタワーマンションで築浅の場合は2倍を超えるような計算結果になります。また、先ほどの都心のマンションを築70年にすると0.8倍ほど、郊外のマンションを築50年で試算すると0.9倍程度の補正率となり、古いマンションだと通常評価よりも評価額が小さくなるケースも生じます。

 

 実際に相続税などで評価を行う場合には、「タワーマンションでないから関係ない」という認識は間違いです。築浅なら普通のマンションでも1.5倍程度になるので、かならず補正率の計算は行うべきです。

 ちなみに、現在は特殊な状況なのかもしれませんが、都心だと相続税の評価の倍以上で売却できる事例が多くあるようで、今回の補正率で時価との乖離が埋まったかと言われると、まだ微妙に感じます。

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