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2025年04月21日号 (第537)

関税と租税法律主義

 みなさん、こんにちは。米国トランプ大統領の関税問題で、大騒ぎになっています。株価についても先が見えにくくなっていますし、輸出産業も先行きが見えにくい状況です。

 今回は、関税の性格と日本における関税のルールを作る仕組みについて、ご紹介していきます。

関税とは

 関税は歴史がある税金で、国境や特定の地域を通過する物品に対して課税される税金のことをいいます。最近の解釈としては、国境を通過する物品に対しての税金と考えればよいと思います。

 関税の目的としては、税収を確保するという目的の他、国内産業や国内市場を保護すること、あるいは特定の産業を振興・育成するなどの目的で利用されます。

 例えば日本のコメ農家を保護する趣旨で、コメについては1キロ当たり341円の関税がかかるとされています。外国から安いコメが関税無しで輸入されれば、日本の農家は立ち行かなくなる、あるいは食料自給率が極端に低下してしまうという問題が生じてしまいます。

 また、米国のトランプ大統領が輸入される自動車に追加関税を課税するというのは、外国の自動車メーカーを米国内に誘致することなどを考えていると思われます。米国内に自動車工場が増えれば、米国での雇用拡大などに繋がります。

租税法律主義

 米国が貿易赤字の大きい国に対し相互関税を課すとしていたところ、一転して90日間措置を停止すると発表しました。日本の株式市場も相互関税の報道で株価が急落し、措置停止の報道で株価反転するなど大きな影響を受けていますが、トランプ大統領が簡単に決めてしまえるところが特徴的です。

 米国の関税に対して中国が対抗措置をとり、さらに米国が関税率を引き上げるなど、ドラマのような展開です。

 日本では憲法84条で租税法律主義を定めており、税に関する重要事項は法律で定める必要があります。言い方を変えると、大きく仕組みを変更するためには、国会の承認が必要ということになります。しかし、今回の騒動のように関税については、海外及び国内の事情の変化に応じて迅速に対応する必要があることなどの理由から、法律で一定の条件を定め、その範囲内で政令により関税率の変更を行う制度があります。政令は内閣が制定するので、国会での審議よりは迅速に対応できるというメリットがあります。

 

 日本は租税法律主義の下、関税について安定した運用がなされますが、米国の関税問題は日本経済に大きく波及する可能性があります。米国の関税率が高くなれば、輸出産業は米国への輸出が難しくなります。同じ物を輸出しても、米国での値段が倍になれば売れないという結果につながるからです。また、輸出産業とは無関係の場合でも、携帯電話やパソコンなどの値段が跳ね上がる可能性があります。携帯電話やパソコンなどの多くは中国で生産されており、米国が高い関税を課す場合、米国だけの販売価格を上げるのではなく、全世界の販売価格を上げる可能性も想定されるからです。

 

 今回のトランプ大統領の関税問題をみていると、租税法律主義の大切さを改めて感じます。税法については安定的な運用が重要で、二転三転すると国民の対応が難しくなるばかりでなく、将来への不安が増大してしまいます。

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