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2024年12月02日号 (第524)
立場から見た103万円の壁
最近の報道番組では、103万円の壁について紹介される機会が増加しています。一方、割り振られた時間が数分程度なので、見ていて歯がゆさを感じてしまいます。今回は、立場別にみた103万円の壁についてご紹介していきます。
本人から見た103万円の壁
さて、103万円の壁という言葉が用いられるのは、基礎控除48万円と、給与所得控除55万円に起因しています。給与収入が103万円である場合、給与所得控除55万円を控除すると残りが48万円、さらに基礎控除の48万円を控除することでゼロになり、所得税が課税されないラインとしての意味があります。
本人の立場からすれば、103万円以下であれば、所得税はかからないことになります。ただし、現実には社会保険料控除や生命保険控除など、所得控除項目がありますので、給与が103万円を超えても所得税がかからないこともよくあります。
本人の立場からすると、仮に104万円の給与収入があり、社会保険料や生命保険料控除などがない場合は、104万円から給与所得控除(55万円)を控除して49万円、49万円から基礎控除(48万円)を控除した、残りの1万円に所得税5%が課税されるので、所得税が500円となります。103万円の収入に対して所得税はゼロ、104万円の収入に対して所得税は500円ですから、所得税のみ控除すると手取りベースで9,500円増加するので、103万円の壁で直ちに不利になるというわけではありません。
扶養する側から見た103万円の壁
よく報道番組などで103万円の壁を紹介する際、学生が親から103万を超えないように言われているという話題がでてきます。学生本人の立場からすれば勤労学生控除(27万円)まで考慮すると、130万円までは給料収入があっても税金はかからないことになります。
では、103万円を超えないように注意するのはなぜかというと、親の立場で考えると、扶養控除(38万円)あるいは特定扶養親族に該当する場合、特定扶養控除(63万円)が受けられるかに影響します。仮に課税される所得金額が695万円以上900万円未満の場合は、所得税率は23%となります。子供の給与収入が103万円で、特定扶養親族に該当すれば、所得税で144,900円の控除が受けられます。逆に子供の給与収入が104万円になれば、親は余分に144,900円の所得税が課税されることになります。つまり、子供の手取りは1万円増えても、親は144,900円の所得税が増加してしまうことになり、世帯としては不利になります。
配偶者の立場から見た103万円の壁
仮に配偶者の収入が103万円である場合、“本人”は配偶者控除として38万円の控除を受けることが可能です。配偶者の場合は、収入が103万円を超えても “本人”は配偶者控除が受けられないことで、直ちにデメリットが生じるわけではありません。配偶者特別控除という仕組みがあり、給与収入150万円までは“本人”の税額に影響を与えないようになっています。仮に配偶者の給与収入が150万円を超えると、“本人”の配偶者特別控除が段階的に減少していく仕組みとなっています。なお、配偶者特別控除は段階的に減少していくため、配偶者の収入が150万円を超えると、世帯収入として損になるということはありません。
話しを簡単にするために所得税に限定して説明を行いましたが、社会保険料の壁(企業規模によって106万又は130万円)、住民税(自治体によって異なる)、会社が支給する扶養手当など可変的な要素があり、有利不利の判定は難しくなります
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