税務最新情報

2024年11月20日号 (第523)

M&A詐欺にご注意ください

 みなさん、こんにちは。税務署から年末調整関係の書類が届き始め、クライアントの関心事は年末調整などの作業になってきました。今年は定額減税があり、イレギュラーな処理となるのでお気を付けください。

 中小企業庁が10月29日付、「不適切な買い手」のM&Aを支援した仲介支援事業者15社に対して是正措置を取ったとのニュースが流れてきました。今回は、M&A詐欺についてご紹介していきます。

どんな形で詐欺が行われるのか

 M&A詐欺の被害が増えているとの話題が、数年前から同業者との会話で交わされるようになりました。今年になってルシアンHDの事件の報道がされるようになり、全体像が明らかになってきました。

 具体的には、M&Aで会社を買い取ってもらう際、金融機関に対する経営者の個人保証を解除し、事業継続により雇用を守ってもらうという契約にもかかわらず、M&A後も経営者の個人保証は解除されないまま、会社の資金も抜き取られ、買い取った会社を破綻させてしまうというものです。

 問題となっている事件では、会社倒産後、個人保証をしていた元経営者に、金融機関から連絡が来て発覚するとのことです。その後、買い取った会社とは連絡が取れなくなるそうです。報道などによれば、40社ほどの被害が出ており、被害総額は10億円以上に上るそうです。

お金を抜かれないようにすればよいのではとの疑問

 クライアントとM&A詐欺の話しをすると、「お金を抜かれないようにすればよいのでは?」との解決方法を示す方もいらっしゃいます。しかし実際にM&Aが行われると、経営者そのものが入れ替わるので、通帳の管理などは当然ながら購入者側の管理となります。また真っ当なM&Aでも、親会社が資金の管理をすることがあるため、その時点では詐欺が行われているのか、通常の資金管理の範疇かなのかは、区別がつかないことが想定されます。

 結論としては、「M&A後にお金を抜かれないようにする」という対策は無理で、詐欺的なM&Aに巻き込まれないことが唯一の対策と言えるでしょう。

今回の事件の問題点

 M&Aは、売り手側の経営者にとっては通常、一生に一度のことですから慎重に行動したとしても限界がありますし、慎重になりすぎるとM&Aが成立しないなど、売り手側の落ち度を追及するのは難しいかもしれません。

 今回の詐欺事件で大きな問題となったのは、M&A仲介業者が間に入っていたにも関わらず、詐欺事件が起きたことです。多くの場合、売り手側はM&Aの初心者に当たるので、売り手側の保護、言い換えれば買い手側企業の評価、あるいは審査を正しく行う必要があったと考えられます。

 

 中小企業では、後継者問題はますます深刻になっています。後継者不在の場合、M&Aは重要な選択肢となります。M&Aでは、経営者が創り上げた会社の経営権の譲渡を、株式の譲渡という形で実現するので、譲渡所得に対する税率も2割程度なので、税金面においても非常にメリットがあります。今回の事件でM&Aの怖さが前面に出てしまいましたが、出口対策としての重要な選択肢ですので、リスクを警戒しながら向き合っていく必要があります。

記事提供
メールでのお問い合わせの際は、必ず住所、氏名、電話番号を明記してください。

過去の記事一覧

ページの先頭へ