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2024年08月23日号 (第514)
相続登記の義務化と未分割の不動産
みなさん、こんにちは。コロナがずいぶん流行っているようです。そういえば、コロナ禍と言われていた時期も、8月は感染者数が増加する傾向がありました。暑いので体調管理に気を付けましょう。
さて、クライアントから尋ねられることが増えてきた相続登記の義務化について、ご紹介していきます。
令和6年4月1日から相続登記が義務化
相続税については、100件の相続があっても、申告義務があるのは10件あるかどうか程度で、9割の人は相続税に縁がありません。
一方で、相続税の申告は必要なくても、不動産を相続するケースは非常に多いと思います。ところが、不動産を相続しても登記しない人が相当数いたようで、所有者不明の土地が増え続け、大きな社会問題となっていました。この問題を解決するために、今年の4月1日から相続登記が義務化されることになりました。
制度の概要
相続登記の義務化について、制度の概要を説明すると下記のとおりです。
① 相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
② 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
①と②のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料が適用される可能性があります。
なお、令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も、3年の猶予期間はありますが、義務化の対象となります。
税理士的な視点で実務的に気になること
最近相談された事例ですが、名前も知らない親戚の代理人弁護士から書留が届き、祖父名義の不動産が未登記のままなので、遺産分割協議を行いたいとの連絡でした。自分に馴染みのない土地について、会った記憶もない従兄の子供(その代理人弁護士)からの連絡ですから、戸惑ってしまいます。相続を希望しないと返信したそうですが、その後、連絡が途絶えたそうです。顛末くらいは知らせてほしいものです。
相続税の実務をしていて困る事例として、相続人が行方知れずとか、連絡が取れないケースです。それ以上に困るのが、相続人同士の仲が非常に険悪な事例です。そのような背景で、何十年も前の相続に関して、関係が希薄な親族と連絡を取って、分割協議を行うことが可能なのかなど、疑問に思ってしまいます。
また友人の司法書士に聞いたところ、登記者の住所変更がされていないケースや、所有者の名前が旧字体、俗字体など混在していて、未登記不動産のピックアップまではできるかもしれないが、所有者の同一性の判断が難しいのではという話でした。
過料というペナルティがある制度ですから、多くの人は対応できるのならしたいと考えるでしょう。これからの相続については、従来は「お金がかかるなら登記しない」という反応だったものが、義務化によって登記する事例が圧倒的に多くなると想定されます。一方で、過去の相続については登記するために遺産分割が必要ですし、数十年前の相続などを想定すると一足飛びに解決するとは思えません。
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