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2024年08月01日号 (第512)
奨学金の返済に充てるための贈与は贈与税がかかるのか?
みなさん、こんにちは。猛暑日が続いています。夏バテ、熱中症にお気を付けください。先日、税理士の間で「奨学金の返済資金を祖父が負担した場合に贈与税はかかるのか?」という話題になったのでご紹介します。
贈与税の非課税財産
贈与税については、相続税法に規定が置かれています。その中で、贈与税の非課税財産として下記のような規定があります。
民法では、親や祖父母などの直系血族、兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があるとしており、上記の規定に当てはめると、親や祖父母が生活費や教育費に充てるために贈与した財産については、通常必要と認められるものは贈与税を課税しないとしています。
ここで言う「通常必要と認められるもの」の判断については曖昧ですが、大学に通うために一人暮らしをしている場合、仕送りに贈与税が課税されることは通常ありません。また、私立大学の医学部で年間の学費が1千万円以上になるケースでも、学費に対して贈与税が課税されることはありません。
奨学金の返済は?
上記の条文では「充てるため」と規定しています。過去に教育費に充てた奨学金の返済については、贈与税の非課税に該当しないのでしょうか。
この点については、未来形の充てるためだからok、過去形の充てたものだからダメと言うわけではなく、基本通達で下記のように規定しています。
「必要な都度、直接充てるための贈与でなければいけない」としており、過去に教育費に充てた奨学金の返済のための贈与は非課税にならないし、今後の教育資金としてまとめて贈与する場合も贈与税の非課税にならないということになります。
なお教育資金の一括贈与について、非課税とする特例はありますので、詳しくは下記をご覧ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/0023004-114_02.pdf
さて、今回の取扱いですが、感情的に納得できるでしょうか。現状の制度の建付けでは、必要な都度の贈与が原則で、特例的に教育資金の一括贈与という制度があるだけで、後出しという形は認めていません。
しかしながら今回の事例は、返済額を毎年贈与するなど、年間110万円までの贈与税の非課税枠を活用することで、現実的には課税されない贈与が可能となります。
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