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2024年07月22日号 (第511)

名義預金にご注意

 みなさん、こんにちは。今回は相続税の申告で問題になりやすい、名義預金についてのお話です。普段、こちらの記事を書くために面白いネタはないかなと情報収集をしているのですが、ある研修会に参加して興味深い情報があったので、ご紹介します。

名義預金とは

 相続税の申告では、亡くなった人(被相続人)の財産が課税の対象になります。名義預金とは、預金口座の名義人と実際のお金を出した人が異なる場合をいいます。

 典型的な事例で、夫がサラリーマンで、妻は専業主婦という場合を想定します。夫から妻が毎月生活費を受け取り、生活費の余剰部分を妻名義で預金した場合に、名義預金と考えられる可能性があります。

 もう一つ、ありがちな事例として、親が子供の名義で預金口座を作り、贈与税の非課税の範囲内で子供名義の口座へ預け入れを行っている場合があります。この場合、子供名義の通帳が名義預金と考えられる可能性があります。

 上記の事例で、名義預金ではなく真実として妻や子供の預金と解釈することができれば、相続財産には含まれないことになりますが、名義預金と判断されれば被相続人の財産として相続税の対象となります。

 名義預金は、相続税の調査で定番の指摘事項となっています。特に上記の生活費の余剰を少しずつ妻名義の預金に預け入れたとか、子供名義の預金口座へ贈与税の非課税の範囲で預け入れを行っていた事例は、問題になりやすい事例です。

ポイントとなるのは資金原資と管理支配

 税務調査で名義預金と指摘された場合で、最終的に名義預金と判断されるかのポイントとなるのは、その預金の資金原資と、預金の管理支配がどうなっているかという点です。

 生活費の余剰を妻名義の預金としていた事例では、妻は専業主婦という前提なので、資金原資は夫となります。預金の管理支配については判断が難しいところですが、通帳への預け入れや引き出しは妻が行っているので、管理は妻と言えるかもしれません。ただし、その預金の使い道が、家の修繕や家具の購入など生活費として使われている場合、夫の支配下にあると考えられ、名義預金と判断される可能性が高くなります。

 また、親が子供名義の口座へ贈与税の非課税の範囲内で預け入れをしているケースでは、資金の原資は親と言うことになります。そして預け入れも親が行い、必要に応じて親が引き出しをしている場合、管理支配も親が行っているとして、名義預金と判断される可能性が高いと考えられます。

どんな場合に妻の預金、あるいは子供の預金と認められるのか

 専業主婦の方が相続人となる場合で、名義預金ではなく妻の預金として認められるケースとして一般的なのは、妻が仕事をしていたころに稼いだ部分であるとか、妻が相続で手に入れた部分など、原資が夫でない部分です。仮に一つの預金口座に入っていたとしても、一部を妻独自の預金、一部を名義預金と考えるケースはあります。

 また、非課税枠を利用した子供への贈与は、実際に贈与していればよいので、管理支配を子供がしているなどの証拠を残しておくことが大切です。例えば、子供の生活費が引き落とされる口座へ振り込みを行えば、管理支配が子供に移転していると説明がつきやすくなります。逆に、いざというときのための資金との思いで、親が管理するのは誤りです。贈与をするのなら、管理支配も完全に子供にさせるべきです。

 

 上記の資金原資と管理支配という考え方は、重要なポイントであると同時に、何を根拠にその判断を行うのかという難しい問題があります。安易な判断は大きなリスクになるので気を付けましょう。

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