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2024年05月20日号 (第505)
旅費日当規程を利用した場合の注意点
みなさん、こんにちは。インターネットなどで、旅費日当を利用した節税的な記事を多く見かけます。ネットの記事ですと、閲覧回数を稼ぐために煽るような内容の記事も見受けられますが、少し真面目に検討してみます。
旅費日当は有利に働くのか
出張旅費を支給する際、交通費や宿泊費などを実費精算することは当然ですが、実費に加え日当を支給するケースがあります。この日当が所得税法上の非課税所得に該当すれば、法人では経費が増え、受け取る側は所得税が非課税となるので、節税効果があることは事実です。
この旅費日当が非課税とされるか否かについては、所得税基本通達9-3を元に判定することになります。
法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。 (1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。 (2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。 |
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要約すると、①通常必要とされる費用の支出、②全従業員間でのバランスがとれる基準、③他の会社と比べても相当と認められるもの、であれば、非課税所得として扱われることになります。
運用が簡単かと言えば比較的簡単で、公務員などの場合は普通に支給が行われていますし、比較的大規模な会社でも旅費日当が支給されるケースが一般的です。
中小企業での運用は有利なのか?
中小企業で旅費規程に基づく日当の支給を検討するきっかけとしては、インターネット上の情報を見て、節税として利用できるのではないかとの発想です。一方で、上の通達にあるように、旅費規程に基づく日当を支給する場合、全従業員間でバランスがとれた基準を設ける必要があります。旅費日当の導入は、会社の費用が増えることに繋がりますので、節税効果は期待できるものの、費用の増加を懸念して断念するケースもあります。
旅費日当を支給する場合のリスク
極端な事例として社長一人の会社、あるいは家族経営の会社で、旅費日当は利用できるのかと質問されるケースがあります。所得税基本通達の要件を満たしていれば、ダメではないということになります。金額が妥当で出張の事実があれば、否認はされにくいと思います。
しかしながら、実務では問題になることが多いのも事実です。カラ出張はインチキですから論外ですが、規程の金額が高すぎることによる否認や、経営者は出張の認識であったが、税務調査で業務上の出張ではないと認定されて否認されている例もあります。有名なところで、経営者が青年会議所の会議への出席の交通費について否認された事例があります。
https://www.kfs.go.jp/service/JP/100/06/index.html
旅費規程に基づく日当の支給については、それなりの規模の会社や公務員では当然のことで、とりわけ新しいトピックではありません。常識的な利用をすれば、所得税が非課税となる日当の支給は可能です。ただし、旅費規程を新設して旅費日当を新たに支給する場合、会社とすれば経費の増加に繋がるので、経営判断として導入するか否かについては慎重に検討すべきです。
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