税務最新情報
2021年12月01日号 (第416)
電子取引関係
みなさん、こんにちは、何回かにわたってご紹介してきた、令和4年1月以降の電子帳簿保存法についての最終回です。
一番最初の回に問題提起した、電子取引について、要件を満たさない可能性があるから「紙で請求書を発行するように」というような混乱については、11月12日になって国税庁が新たな補足説明を公表して収束しました。
電子取引に関する電子帳簿保存法
電子取引に関する電子帳簿保存法というのは、違和感がありますが、電子取引に該当する場合は、そのままの電子データで保存して、一定の条件検索などで簡単に取り出せるようにしておいてくださいという制度です。
電子取引とは、取引情報について電磁的方式により行う取引とされています。簡単に言えば、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などについてEDIにより入手したデータ、メール添付やダウンロードの方法で行われるものと考えればよいでしょう。
保存方法
電子取引について、どのように保存するかについては、以下のいずれかの方法による必要があります。
①タイムスタンプが付与されたデータを受領 ②速やかにタイムスタンプを付与 ③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用 ④訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け また、事後的な確認のため、検索できるような状態で保存することや、ディスプレイ等の備付けも必要となります。 |
上記の①については、相手側がタイムスタンプを付与してくれないといけないので、現実的ではありません。②については、タイムスタンプの付与に一定のコストが生じるので、関与先の意向を聞いていると消極的です。③については、そのようなシステムを導入しなければいけませんし、例えばメール添付で届いた取引データについて、そのようなシステムへ移動する過程で訂正削除ができてしまうので、現実的には実現不可能のように思えます。④については、実現が可能なのですが検索について問題が残ります。
検索機能について
タイムスタンプの利用や事務処理規程などで運用したとしても、検索機能の問題は残ります。下記の検索機能が必要とされています。
①取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること。 ②日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。 ③二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。 |
上記の検索要件については、財務会計ソフトや販売管理システムなど規則的に入力されたデータ内では当然に検索できます。ところが、PDFやダウンロードされた電子データなど、フォーマットが様々なデータの中で、串刺しで検索するのは困難です。例えば、PDFのデータについてテキストが付与されていても、文字をOCRしてテキスト化したとしても、取引日以外の日付を検索したり、金額以外の数字を拾うなどの問題が生じます。取引日付として入力、取引金額として入力したものの中から検索ではなく、雑多なテキストの中からの検索となってしまうと、AIで補正できたとしても限界が生じます。
そこで、国税庁が補足情報を出すまでは、電子取引に該当しないようにメール添付ではなく紙で請求書を送付してほしいという依頼が来るなど、混乱状態が起こることになりました。
結局は紙があればなんとかなる
11月12日に公表された補足説明は、下記となっており電子取引であっても、書面で保存しておけば何ら問題とならないことを示しています。
補4 一問一答【電子取引関係】問 42 【補足説明】 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務に関する今般の改正を契機として、電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合には、その事実をもって青色申告の承認が取り消され、税務調査においても経費として認められないことになるのではないかとの問合せがあります。 これらの取扱いについては、従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。 |
結局のところ、改正電子帳簿保存法の趣旨は、電子保存をしやすくする仕組みですから、通常の運用をしている場合に足元をすくわれるような制度ではなく、過度に神経質になる必要はありません。
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