東法連ニュース
第2018年(平成30年)1月号 第383号
大法人を対象に調査部所管法人セミナーを開催
236社から経理担当者ら312名参加
東法連は11月20日、ベルサール東京日本橋で第3回調査部所管法人セミナーを開催した。対象は、第1、第2ブロックの一部の法人会と第5、6ブロック所属法人会の管轄地域内に所在する国税局調査部所管法人(原則として資本金額が1億円以上の法人)である。
当日は、236社の法人から経理担当者など312名が参加した。
◆難しい内容をユーモアを交えてやさしく解説
第一部では、東京国税局調査第一部長の山縣哲也氏が「税務行政の現状と課題」と題し、国際的な課税問題への対応について、難しい内容をユーモアを交えてやさしく解説した。まず、「税源侵食と利益移転(BEPS)」の事例を示しその問題点を指摘した。また、脱税対策として2国間金融資産情報の「自動的情報交換」について説明した。その他、税務コンプライアンスの維持・向上についても説明があった。
「税源侵食と利益移転」はBEPS(BaseErosion and ProfitShifting)の邦訳で、多国籍企業が税制の隙間や抜け穴を利用した節税対策により合法的に税負担を軽減することである。講演ではその例としてGoogleなどのアメリカ企業が採用する節税スキーム「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチ・サンドイッチ」を紹介した。
◆BEPSは税収の減少と共に企業の公平な競争を害する
同スキームは、アイルランド、オランダおよびタックスヘイブン国に別法人を設け、各国の税制の違いを利用し、ライセンス料などの名目で利益を移転して合法的に節税を図るものである。このようなBEPSによって以下のように様々な問題が生じている。①納税者の不公平感により税制に対する信頼が揺らぐ。②税収の減少等による財政の悪化。③BEPSを利用しない納税者がより大きな割合の税負担を強いられる。④BEPSを利用しない国内企業(中小企業等)の競争条件が不利になり、公平な競争が害される等。
このような動きに対し、OECD租税委員会は、「BEPSプロジェクト」を立ち上げ、国際課税全体を見直す取組みを進めている。
また、BEPS対策とは別に、各国の税務当局同士が非居住者金融機関口座情報を一括して情報交換する、自動情報交換の制度が進んでいることを紹介した。これにより、古い映画にあるように、海外の金融機関に匿名で隠し財産を保有することが難しくなる。
第二部では、東京国税局調査第一部国際情報第一課の安河内誠国際税務専門官が「移転価格税制の執行」について、同課税第二部消費税課実務指導専門官の森田周治氏が「消費税軽減税率」について講演した。