東法連ニュース

第2014年(平成26年)5月号 第339号

平成26年度税制改
アベノミクスと税制改正の問題点を鋭く指摘

あいさつする菅野秀雄税制税務委員長

 東法連は3月25日、スクワール麹町において税制講演会を開催。各単位会から税制委員、会員、一般の方々など合わせて150人が参加した。
 講演会に先立ち、菅野秀雄税制税務委員長(副会長・江東西法人会会長)が開会のあいさつを行った。
 講演会は、筑波大学名誉教授の品川芳宣氏を講師に迎え、「平成26年度税制改正(案)のポイントと最近の税制の動向~アベノミクス関連・相続税の課税強化等への対応」をテーマに行われた。講演では、平成26年度の税制改正内容の幅広い説明と、その問題点を指摘した。

講演の詳細はPDFからでもご覧になれます。⇒<2014年5月号 1-3P>

 


◆円安リードも貿易収支改善せず今が正念場~アベノミクス~

 アベノミックスによって、経済が明るい方向に向かいつつあるのは大変喜ばしい。ただ、今がある意味では正念場でいろいろと問題点が出ている。それをどう乗り越えていくのか、税制がそれをバックアップできるのか今問われている。円安をリードすることによって、日本経済の舵取りが楽になった。しかし、80 円が100円を超えるようになっても、輸出が伸びてこない。経常収支、貿易収支が大幅な赤字である。

 その原因は、円高の時代に賃金格差などの問題もあって、日本の製造業が相当海外に転出してしまったことだ。もう一つはエネルギー問題で、化石燃料を買い取らなければならないため、それだけで3兆から4兆円も収支を赤字に追い込むことになる。それと労働力不足の問題があって、いかに成長にいろいろな追い込みをかけてもうまくいかない。しかし、それらを乗り越えた上で、わが国にとって望ましい経済成長が期待される。

◆民間設備投資の活性化 中小企業への効果は疑問

 26年度の税制改正のもとになる税制改正大綱は、今回は異例で、昨年の10月1日秋の税制大綱が政府から出され、12月中旬に例年の税制大綱が出された。アベノミックスにより民間の設備投資を呼び込むため、早めにアナンスする必要があったためだ。投資の活性化には、取得設備の特別償却、税額控除が定番だが、今回もそれが主流になっていることは否めない。

 生産等設備、試験研究費、ベンチャー投資、事業再編促進などについて、特別償却や税額控除などの措置が拡充される。しかし、それらは所得がある企業で法人税を納めている場合に恩典がある。中小企業の場合、黒字企業は3割に満たないといわれている。それらの企業にとっての効果は限定的で、大企業を中心にしたインセンティブではないかと考えられる。

◆高額所得者対象は政治的判断 個人所得課税~個人所得課税~

 国際比較でみると日本の給与所得控除は手厚い。しかしこれを大幅に減少するとなると大反対がおこる。自民党は過去に苦い経験があり手をつけてはまずいという政治的判断が働いていた。そこで、国民的に抵抗の少ない高額所得者を対象に控除額の見直しが始まった。今回これを徹底し、年々控除額の上限を引き下げていく。しかし、収入が増えても経費が増えないというのは税理論上いささかおかしい。国際比較上高いという理由と、政治的判断が優先したといえる。

◆課税対象者が増え人ごとではなくなる~相続税~

 現行では、配偶者と子供2人が相続人の場合、8千万円までは非課税になる。都内に一戸建てを持っていてもほとんどの場合課税されない。これが改正によって4千8百万円まで基礎控除額が下がると、課税対象者が一気に増える。今まで相続税納税者は4%程度であったが、6%から7%になるだろうと予想される。東京では10%を超えると思われる。それほど今回の相続税改正はインパクトが強い。相続税問題は来年から人ごとではなくなる。未成年者控除等が引き上げられるとはいえ、相続財産が多額になると累進税率も厳しくなる。

◆要件が緩和され使いやすくなった~事業承継税制~

 納税猶予制度は相続税の80%の納税を猶予して、いろいろな条件を満たせば最終的に免除してくれるもので、中小企業にとっては大変ありがたい制度である。

 その背景には、会社代表者の代替わりを契機に、相続税が負担となって会社をたたむケースが非常に多くなってきた現状がある。国民の7割が中小企業に勤めており、雇用確保のため事業承継税制は重要な課題となっていた。グローバル化の中で、会社をたたむ理由は税金問題だけではなく賃金格差の問題も大きいため、先進各国共通のテーマとなってきている。このような状況下、税務当局も制度の導入を認めざるを得なくなった。

 ただ、一方で税収確保の必要性もあり、「経済産業大臣の事前確認が必要」、「後継者を現経営者の親族に限定」、「雇用の8割以上を5年間維持」、「納税猶予打切り時、納税額に加え利子税が必要」、「現経営者の退任が条件」など、制度の利用条件が厳しかった。そのため、制度開始から4年経っても500数十件と利用が少なかった。

 25年度税制改正では、要件が緩和され、これらの問題がとりあえず解消された。①経済産業大臣の事前確認が廃止され、手続きが簡素化した。②親族外承継も対象となり、適任者を後継者にしやすくなった。③雇用の8割維持用件が緩和され、5年間平均で算定、毎年の景気変動に配慮した、④利子税の税率を2・1%から0・9%に引き下げ負担を軽減した。⑤役員の退任要件を緩和し、代表者退任要件になった。など、制度がより使いやすくなった。この制度は、更に使い易くなるように中小企業庁等で検討が進められている。

◆世帯単位など税負担のあり方を真剣に検討すべき~少子化対策~

 現下の政策で最大のテーマは少子化対策であり、少子化をいかにして食い止めるかである。税制上のインセンティブが必要といわれてきたが、ほとんど手をつけられておらず、むしろ後退している。家族を増やせば税金が少なくなる制度をつくればよい。N分N乗方式などは、家族数に応じて世帯所得を分割し、累進税率を適用することで家族の多い世帯の税額が軽減される方式であるが、高額所得者が有利といわれている。収入が低い部分で分割しても税額があまり変わらないからである。それならば税率を1%から刻めばよいことである。今の税制は個人単位でしか税金を計算しようとしない。世帯単位など税負担のあり方をもっと真剣に検討すべきだ。

◆課税ベースの拡大だけではいびつな税制になる~法人税~

 税率を国際水準に合わせて引下げるが、課税ベースを拡大して税収はニュートラルにするという。税率を下げて税収がニュートラルになるはずがない。課税ベースばかり拡大すれば企業会計と差異が広がりいびつな税制になる。

 また、租税特別措置の洗い替えを行うというが、5~6%引下げようと思ったら、もう引当金などを廃止しても意味がない。ドイツが行ったように、事業税の損金算入を止めたら法人所得が5兆円、法人税にして1〜2兆円膨らむ。アジア諸国との比較で税率の引下げは必要になっているが、発想の転換をしないとうまくいかない。

◆最大の課題は軽減税率を導入するか否か~消費税~

 今最大の政治課題は、消費税が10%になったとき、軽減税率とインボイスを導入するか否かということである。商工会議所は徹底して手続きの煩雑な軽減税率やインボイスの導入に反対している。

 また、軽減対象の線引きは極めて政治的な判断になり恣意的になる。今の財政状態とその中での社会保障の充実という問題を考えれば、10%ぐらいならすべての物品に負担してもらうしかない。よく逆進性を指摘されるが、社会保障を維持するということは、逆進性を被る層の人たちにとって最大のプレゼントになる。恩典を受ける人と負担をする人のバランスをどうとるかということを考える必要がある。

熱心に講演に耳を傾ける参加者

 

講演する品川芳宣氏

 

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