企業が支給する非課税となる学資金

◆改正のきっかけ

 この改正のきっかけは厚生労働省の要望に基づくものです。従来は、A市が医学生に奨学金を貸与して、A市が指定する医療機関に一定期間勤務した場合、奨学金の返済を免除するとした場合は、A市と貸与を受けた者との間に雇用関係が無いので非課税として取り扱われるのに対して、A市立の病院に一定期間勤務した場合に奨学金の返済を免除した場合には、雇用関係があることから給与として取り扱われました。

 同じ奨学金の貸与を受け、返済が免除された場合に、勤務先によって課税関係が変わる点を是正しようとするものです。

 なお、今回の改正については、対象を医学生に限定しているわけでないので、一般企業でも利用可能な点が面白そうです。

◆改正された通達の内容

 以下、通達から要件部分を抜粋しました。

●所得税基本通達9-14(通常の給与に加算して受ける学資に充てるため給付される金品)

 学資金で、給与その他対価の性質を有するもののうち、給与所得を有する者がその使用者から受けるものについて非課税となるのは、通常の給与に加算して受けるものに限られる

●所得税基本通達9-15(使用人等に給付される学資金)

 学資金のうち、役員や従業員の家族に支払われるものは、原則として、給与所得を有する者に対する給与に該当するのであるから、当該給与所得を有する者に対する給与等として課税すること

●所得税基本通達9-16(特別の関係がある者が使用人である場合の取扱い)

 学資金の給付を受ける者が、特別の関係がある者であり、かつ、その給付をする者の使用人である場合には、その給付が当該特別の関係がある者のみを対象としているときを除き、その給付は非課税として取り扱って差し支えない

◆従来からある通達との関係

 なお、従来から所得税の基本通達で、業務遂行上の必要に基づき、直接必要な技術や知識を習得させ、免許若しくは資格を取得のための費用又は費用に充てるための金品については、課税しなくて差し支えないとの取扱がありました。

 つまり、業務上必要な資格取得のための費用は、従来から非課税であり、今回の改正にある学資金とは、内容が異なると判断できます。今後、通達等で範囲が明確にされるかもしれませんが、学資金は奨学金と同じような意味で用いられることから、「直接必要な技術や知識を習得させ・・・」という通達より、広範な内容を指すと思われます。具体的には、就学中の生活費なども含む可能性があります。

◆一般企業での利用の可能性を考えると

 一般企業が、選抜試験を行い、大学あるいは大学院の学資金を貸与し、卒業後その企業に就職し、一定年限を勤めることで債務免除する仕組みを採用することが可能となります。

 金銭的な理由で就学困難な者に就学チャンスを作るという意味においても、企業が優秀な学生を早い段階から確保するという意味においても意味のある改正のように感じます。

 

◆会社法施行から10年、役員変更にご注意を!

 平成18年4月までは、会社法は商法の一部として存在してきましたが、新しく「会社法」という独立した法律   として、平成18年5月より施行されています。

 新しい会社法では、取締役会のない株式会社を設立することが可能になり、最低資本金制度が廃止され、会社の設立が非常に容易になりました。また、実務的な視点では、既存の会社でも、取締役など役員の任期が最長10年とされたこと、自己株式の買い取りが自由になったことなど、大きな影響がありました。

 今年は平成28年なので、会社法施行から丸10年経過することになります。気を付けなければならないのは、会社法施行と同じタイミングで役員の任期を10年としていた場合に、今年の決算後の株主総会で任期満了となってしまう点です。会社法施行以前は、株式会社の取締役の任期は最長2年でしたから、2年ごとに役員変更登記をしていたので、登記を失念すると言うことは、あまりありませんでした。今回は、丸10年経っているので、つい、うっかりということも想定されます。自分の会社の登記事項証明書などで、最後の役員変更の時期を確認しておきましょう。

 なお、新会社法施行前に設立された有限会社については、法律上は役員の任期について規制はないので、実際に異動がなければ登記の必要はありません。

◆主要株主のリストの添付

 平成28年10月以降に商業登記をする際に、主要株主のリストを添付することが義務化されました。

 株主総会の決議を要する場合には、総株主の議決権の数に対するその有する議決権の上位株主であって、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名、住所、保有株式数及び議決権数を証する書面を添付する必要があります。

①10名
②有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に加算し、
その加算した割合が3分の2に達するまでの人数

 株主全員の同意が必要な場合には、株主全員の氏名、住所、各株主が有する保有株式数及び議決権数を証する書面を添付する必要があります。会社法上の株主名簿を作成されている場合には、特段の準備は不用ですが、株主名簿を作成されていないような場合には、これを機会に作成するのも良いかもしれません。

 株主リストの様式については、下記をご覧ください。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html

 

 法人税の申告書における、別表2「同族会社等の判定に関する明細書」を利用する場合なども説明されており、株主数名の同族会社の場合は新たな書類を準備しなくて済みそうです。

 登記について不明な点があれば、司法書士の先生にお尋ねくださればと思います。

 

平成28年度税制改正の内容

 上記のように、建物附属設備・構築物・鉱業用減価償却資産については、定率法による償却方法が利用できなくなります。なお、会計期間にかかわらず平成28年4月に取得した資産から適用されます。

 例えば10月~9月が会計期間の場合は、3月までの取得なら定率法、4月以降の取得分は定額法と、同じ種類の資産に異なる減価償却方法が適用されます。

◆資本的支出と修繕費

 建物に関して、雨漏りが生じたため修理したという場合は、原状回復のための費用で修繕費として費用処理されます。

 建物に避難階段を新たに設けた場合や、機械の部品をより品質の高い物へ交換した場合に、同等品と交換した場合を上回る部分を、資本的支出と言い、税法上は減価償却資産となります。

◆資本的支出の取扱

 既存の資産に対するものであっても、平成28年4月以降の資本的支出は、原則として定額法による償却となります。

 ただし、平成19年3月以前に取得した資産に対するものについては、旧定率法を採用することも、定額法を利用することも可能です。

◆実務上の影響は大きい

 多店舗展開を行っている場合、店舗用簡易設備、電気設備、給排水設備などは、かなり高額な支出になります。特に店舗用簡易設備は耐用年数が3年なので、定率法なら支出の8割以上の償却が可能だったものが、支出額の3分の1しか償却できないことになります。

 さらっと改正されましたが、非常に実務に与える影響が大きな改正です。

路線価とは

 路線価とは、相続税の計算をする際に、土地の評価額を計算するに当たり、道路に面する一平方当たりの金額を表すもので、例年7月1日に国税庁が公表している数値です。

 公示地価と異なる点は、公示地価が特定の土地についてピンポイントで金額を表しているのに対して、路線価は倍率表を用いる地域以外は網羅して金額が付されている点です。また、金額面では、相続税の評価に使うための金額であるため、公示地価の8掛けの金額とされています。よって、簡易的に時価を求める際には、路線価を0.8で割り返して面積を乗じるなどの手法を用います。

 ちなみに、固定資産税の評価額は公示地価の7掛けとされており、一つの土地に、公示地価、路線価、固定資産税の評価額など複数の金額が付されており、ややこしい状態になっています。

実際の取引価格

 実際の不動産の取引価格ですが、路線価より高い場合もありますし、低い場合もあります。

 不動産業者が仕入として購入する場合は、売る時には、高くても公示地価程度でしか売れませんから、路線価より低い金額で取引されるケースもあります。売り手は金額的には単価で不利になりますが、売り急ぐ場合や、大きすぎる土地などは、割安になっても取引が成立します。

 逆に、隣地を購入する場合などは、割高な金額でも取引が成立する場合があります。

 つまり、実際の取引に当たって、路線価は参考値としての意味は持ちますが、決定的なものにはならなく、あくまでも取引が成立するか否かで金額が決まることになります。

今年は上昇傾向にある路線価

 今年の路線価の全国平均は前年に比べて0.2%増加しました、8年ぶりとのことです。平均値で0.2%ですから、個別には路線価が下がっている地域もありますが、都市部で最高路線価の動きを見ると前年対比で二桁以上、上昇している地域が多くあり二極化が進んでいるとも思えます。

 いずれにしても、少し風向きが変わったと考えてもよいかもしれません。

路線価を基に自宅を評価してみよう

 路線価は国税庁のホームページに公表されているので、インターネットに接続できれば、自分で自宅の路線価を調べることが可能です。厳密には間口や奥行き、角地に該当するか否かで評価額が変わってくるのですが、概ねの数字であれば次のように計算できます。

                          路線価×平米数=概ねの相続税評価額

 坪数ではなく平米で計算すべき点が注意点となります。

 なお、平成27年より相続税の基礎控除が小さくなりましたので、従来は相続税が関係ないと思っていたのに、相続税がかかるというケースが多くあります。その意味では、自宅の評価額を概算でも把握しておくことが重要です。

 

実務上の注意点は主に3点

 実務上で重要となるのは、①いつ税率が上がるのか、②軽減税率へ現場での対応、③インボイス方式への対応となります。

①いつ税率が上がるのか

 消費税率の引上げは平成31年10月からと言ってしまえば一言で終わってしまいますが、経営的には非常に重要な意味を持ちます。以前の税率引上げの際にも経過措置として、請負契約の場合に半年前に契約することで旧税率が適用されるとか、税率引上げでリース販売を見込むなど、駆け込み需要への対策を考慮する必要があります。

 つまり、経営的な視点が必要になります。

②軽減税率へ現場での対応

 例えば、ファーストフード店での食品の販売は、同じレジを使い同じ商品を販売したとしても、店内飲食用の購入の場合は標準税率、持ち帰り用の場合は軽減税率の適用となります。つまり、レジの段階でお客様に意思の確認をし、その結果によって税率が異なってくることになります。このような意思の確認作業が必ず必要になりますし、持ち帰り用と言っておきながら、店内で飲食した場合に、店としてどのように対応すべきかなど、考えるときりがありません。

 あるいは、食塩の販売をしている場合に、100キロ単位での購入があり、工業用に利用している場合は、軽減税率の適用になるのかなども疑問に思いませんか。

③インボイス方式への対応

 インボイス方式の導入が平成33年4月以後、軽減税率の導入が平成31年10月からとタイムラグがありますから、帳簿及び請求書の保存方法、経過措置に伴う税額の計算での有利不利を検討する必要があります。

 また、レジシステムについても、おいそれと買い換えるわけにいきませんから、インボイス方式の導入を前提として、対応するものの導入を行う必要があります。一方で、少し利用するタイミングが遅れたわけですから、慌てて導入することも控えましょう。

移転価格の問題とは

 国外関連企業と取引を行う場合に、全くの第三者と取引する場合とは異なる価格で取引されることが考えられます。前回、ご紹介したように、税率が低い国に、利益が大きく計上されるような価格設定をする場合は、租税回避となります。一方で、国外関連企業との取引であったとしても、その両国間で税率の差異がない場合には、どちらかに利益が集中されるような結果となっても、トータルで負担する税金に差異は生じません。つまり、租税回避につながるという話しではありません。

 例えば、A社とB社が関係会社であったとしても、A社が所在する国と、B社が所在する国で、税率が同率であれば、どちらでいくら利益が計上されたとしても、税負担が軽減されることにはなりません。一見すると、何の問題も無いように思えるかもしれません。しかし、トータルの税負担は同額だとしても、意図的にA社に利益が偏るような取引を行えば、A社が所在する国では税収が増加し、一方でB社が所在する国では税収が減少するという事態が生じます。つまり、租税回避という問題ではなく、国にとって課税権の問題が生じることになります。

移転価格税制

 租税回避に繋がらない場合でも、国が課税権を失われることになってしまうことは、各国にとっては、大きな問題です。そこで、多くの国では、移転価格税制を設け、国外関連企業間の取引で、よその国に所得が移転されているような場合に、移転された所得部分に対して、追徴課税できるような仕組みを設けています。

 この場合に、一方の国で独立企業間価格による取引でないことに基づいて、追徴課税された場合に、他方の国で独立企業間価格に基づいた取引価額によって減額調整されれば問題ないのですが、調整が行われない場合に、国際的な二重課税が生じることになります。

 この場合において、両国間で相互協議が行われている場合には、対応的な調整が行われますが、租税条約未締結の国の企業との取引の場合には、必ずしも調整が行われない場合もあります。

独立企業間価格とは

 移転価格税制は、仮に、一つの取引について、10円の金額のずれだったとしても、年間で1億個の取引であれば10億円の所得のずれが生じますので、非常にデリケートな問題となります。

 移転価格税制は、国外関連企業間による取引が、独立企業間価格に基づかない場合に、独立企業間価格によって取引が行われたものとして、課税する制度ですが、独立企業間価格をどのように算定するかという実務上の問題があります。

 基本的には、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法という三つの考え方があります。独立した第三者との取引があれば、その独立した第三者との取引価格に基づくのが独立価格比準法で、独立した第三者との取引がない場合に、売価から逆算する方法が再販売価格基準法、原価に一定利益を乗せるのが原価基準法となります。

 現実的には、独立した第三者との取引がない場合に、その算定は難しいので、事前確認制度が設けられており、租税条約締結国との取引の場合は、事前確認制度を利用することで、二重課税のリスクはなくなります。租税条約が締結されていない国の関連企業との取引を行う場合には、完全に二重課税のリスクを避けることができませんが、その場合でも当局と事前確認を行っておくことで、一定の効果が期待できます。

 中小企業には、あまり馴染みがない制度かもしれませんが、国外関連企業がある場合には、移転価格税制の適用を受ける可能性があることを気にしておく必要があります。 

タックス・ヘイヴン

 タックス・ヘイヴンは、ある取引に対して極端に軽減された課税となっている、あるいは免税とされている国や地域を言います。ちなみにヘイヴンは、havenであり、避難所の意味です。heavenの天国との誤解がよくあります。

 課税権は、国や地域に存するものですから、税率を低くすることで、企業を誘致し、富裕層が居住する誘因とすることは、その国や地域の政策として、必ずしも否定されるものではありません。

 例えば、シンガポールは、キャピタルゲイン(資産の値上がり益)に対する課税、相続税、贈与税などはありません。結果として、富裕層が移住してくることによって、国の経済力が増すことになります。一方で消費税などの課税は行われており、国として、財政がなりたつような仕組みにはしているというわけです。

タックス・ヘイヴンの問題点

 パナマ文書などでも、日本の法人や経営者が、タックス・ヘイヴンを利用していることが取り上げられていますが、課税上有利な国があれば、それを利用することは、経済的には当然なことです。大きな船舶を保有する場合に、パナマ船籍、あるいはシベリア船籍にすることで、大幅なコストダウンができます。そこで、パナマに法人を設立し、船舶を保有させて、それを日本の会社がリースするというような利用形態は一般的です。

 また、匿名組合による投資を行うために、ケイマンのSPC(特定目的会社)を利用することは、一般的なことです。

 一方で、税率が低い国に関係会社を設立して、関係会社に利益を移転するなど、租税回避に利用されている側面もあります。また、日本の当局から取り締まりが行いにくいので、マネーロンダリングに利用されるなど、問題点もあることは事実です。

タックス・ヘイヴン税制

 タックス・ヘイヴンに関係会社を設立して、利益を移転するなどの租税回避については、日本でもタックス・ヘイヴン税制で規制しています。パナマ文書の問題が最近のニュースで話題となっていますが、タックス・ヘイヴン税制自体は1978年税制改正で導入された制度であり、税の世界では、古典的なテーマです。

 タックス・ヘイヴン税制の仕組みは、法人税率が低い(法人の所得に課税されない、あるいは法人所得に対する税率が20%以下)国に外国関係会社を有する場合に、その外国関係会社の所得を、日本の法人の所得に合算して課税する仕組みです。

  なお、租税回避を防止する仕組みですから、一定の適用除外基準を設けて、租税回避に該当しない場合には、タックス・ヘイヴン税制の対象としない取扱としています。

平成28年度税制改正で身近な制度へ

 スキャナによる領収書等の保存制度自体は平成17年から存在しますが、3万円以上の契約書や領収書についてスキャナ保存が認められておらず、電子署名が必要であるなど、現実的な制度ではありませんでした。

 平成27年度税制改正で、金額の制限がなくなり全ての契約書や領収書などがスキャナ保存制度の対象となりました。また、電子署名は不要となり、電子データにした日付を証明するためのタイムスタンプがあれば良いこととされました。

 平成28年度税制改正では、スキャナについて装置要件がなくなり、スマホで撮影した電子データでもOKとされました。また、相互けん制要件について、小規模事業者の場合は、税理士又は公認会計士に事後検査を依頼することで、現実的な対応が可能となります。なお、この改正は平成28年9月30日以後に行う承認申請について適用されます。

税務署長の承認が必要

 スキャナ保存制度については、税務署長の承認を受けた者が、契約書、領収等の国税関係書類をスキャナにより記録された電磁的記録を保存することで、原本である領収書等の保存に代えることが可能とされています。

 すべての企業が、すぐに初めてよいのではなく、税務署長の承認が必要である点は、注意が必要です。

具体的な運用方法

(1)原則的な取扱

 領収書等を受領する者が、その領収書等に署名を行った上で、スキャンして3日以内にタイムスタンプを付します。

 相互けん制と定期検査が必要とされており、領収書等を受領する者以外の者が記録事項の確認を行う必要があります。また、定期検査を行う必要があり、定期検査を終了するまでは、領収書等の原本を保存しておく必要があります。定期検査では、領収書の原本とスキャナで保存されている内容が一致するかの確認作業を行います。

(2)小規模企業者向けの手続き要件の緩和

 社長1人で事業を行っている場合などは、現実的に社内で相互けん制を実施することができません。そこで、事後検査を税理士又は公認会計士に依頼することで、領収書等を受領する者以外の内容確認を省略することが可能となります。

 小規模事業者とは、商業・サービス業では従業員5人以下、商業・サービス業以外では従業員が20人以下の事業者とされています。

実務的な視点からみるスキャナ保存制度

 ある程度の規模の会社の場合は、書類の保存にそれなりのコストが生じているケースが多いので、経費の削減に繋がる可能性はあります。

 また、業務の効率化という側面からは、経費精算について、署名して撮影したデータを、その都度、経理に送信するなどの仕組みを採用すれば、従来の経費精算に比べて、作業時期の分散化により業務のスピードアップに繋がるかもしれません。

 一方で、スキャナ保存制度は、一見すると負担が軽くなるように思えますが、保存する際に、取引日、金額、取引内容で検索できるようにしておく必要があります。よって、ある程度のITスキルと手間が必要になることも事実です。さらに、タイムスタンプを押すために一定のコストがかかるので、そのような視点でも検討を加える必要があります。

クレジットカードによる納付

 従来から自動車税など、地方税についてはクレジットカードによる納付が可能でした。地方自治体ごとに、取扱は異なりますが、自動車税以外でも東京23区では、固定資産税・都市計画税、償却資産税、個人事業税、不動産取得税についてクレジットカードによる納付が可能となっていました。ただし、法人都民税・事業税、事業所税など事業者が納付する地方税については、納付番号、確認番号、納付区分の記載がある納付書が必要となるなど、税目によって取扱にばらつきがありました。

 国税のクレジットカード納付については、「マイナンバー制度の活用等による年金保険料・税に関する利便性向上等に関するアクションプログラム」の中で、申請、申告、納付までオンライン上で一括的に処理できるサービスを新たに提供するとしていました。

国税のクレジットカードによる納付の概要

 平成28年度税制改正で、国税の納付手続きについて、クレジットカードに係る事項につきインターネットを利用して入力すれば、クレジット会社に納付を委託することができます。クレジット会社が国税の納付について納税者の委託を受けたときは、その委託を受けた時は、カードによる決済(与信審査終了)が完了した時点で国税の納付があったものとみなして、延滞税、利子税等に関する規定を適用します。

 この改正は、平成29年1月4日以後の納付から利用できます。

 国税の税目に制限はなく全ての税目で利用できます。なお、クレジットカードの利用手数料は、地方税における取扱と同様に、納税者が負担することになります。また、金額は、クレジット会社の取り扱い上、1,000万円未満に限定されているため、高額な納付には利用できない点について注意が必要です。

カードの利用は有利なのか不利なのか

 すでに、お客さんからご質問をいただいているのですが、「カードで納付するとポイントがつくのなら、カードで納付した方が有利ですよね」というものがありました。財務省などの資料によれば、クレジットカードによる国税の納付に利用者側の手数料が必要とされています。手数料がどのくらいかという点がポイントですが、東京都の場合は、下記のようになっています。

税  額

決済手数料

1円~10,000円

73円(消費税込78円)

10,001円~20,000円

146円(消費税込157円)

20,001円~30,000円

219円(消費税込236円)

30,001円~40,000円

292円(消費税込315円)

40,001円~50,000円

365円(消費税込394円)

※以降、税額が10,000円増えるごとに決済手数料73円(消費税別)が加算されます。

 クレジットカードを利用した場合のポイントは、カードの種類により異なるので、一概に言えませんが、ポイントの還元率が0.78%より高ければ、クレジットカードを利用する方が有利になります。もっとも、上記のように決済手数料は1万円刻みなので、100円の納付でも78円の決済手数料など、少額の場合は明らかに不利になることも考えられます。国税の納付でポイントが還元されるかの確認も必要ですが、1%程度の還元率なら、高額な納付であればクレジットカードを利用した方が有利になるかもしれません。ただし、クレジットカードによる納付の上限が1,000万円未満なので、還元率1%なら1,000万円の納付に対して22,000円程度の差異なので、通常は気にしないのではないでしょうか。

高額資産を取得した場合の仕入税額控除の見直し

 かつて、自動販売機節税と呼ばれる消費税の還付スキームが流行した時期がありました。平成22年度税制改正で、課税事業者が強制される期間に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合の届出書の提出制限を設けることで、そのようなスキームが利用しにくくなりました。しかしながら、PFI事業で巨額の建設工事などで消費税の還付を受けた後、翌年に簡易課税を適用した場合に、非常に巨額の益税となる事案があることを会計検査院が指摘していました。そこで、以下のような制度を導入することになりました。

 免税事業者を除く事業者が、簡易課税制度の適用を受けていない課税期間中に、国内において、高額資産の仕入等(一取引単位に付き税抜き1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産を取得)をした場合に、その仕入等の属する課税期間からのその課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間まで、事業者免税点制度及び簡易課税制度を適用できないことになりました。

 なお、この改正は平成28年4月1日以後に高額資産の仕入等を行った場合に適用されます。ただし、高額資産の仕入等であっても、平成27年12月31日までに締結した契約によるものには、適用されない取扱となります。

輸出物品販売場での取扱の変更

 平成28年5月1日以後に行われる、輸出物品販売場での販売について、下記のような取扱の変更があります。

・免税対象品の購入下限額が、一般物品及び消耗品ともに5000円以上に引き下げられました。改正前は、一般物品は1万円以上とされていました。

・通常生活の用に供するものに該当しないものとして、「金又は白銀の地金」については免税対象外として規定されました。

・購入物品を輸出物品販売場から直接海外や空港へ直送する場合は、パスポートの提示だけで、販売することが可能となります。従来は、購入記録票の作成が必要とされていました。この改正により輸出物品販売場の負担が大幅に軽減されます。

・商店街組合員であるショッピングセンターと、その商店街組合に係る地区又は地域を、一つの特定商業施設として設置することが認められます。結果として、ショッピングセンターのテナントが、商店街の組合員でなくても、一つの免税手続きカウンターで、手続きを行うことが可能となります。

適格請求書等保存方式の場合の消費税の計算方法

(1)売上げに係る税額の計算

①割り戻し計算

 現行と同じように、帳簿で課税売上高を集計して、税込金額から割り戻して、税率の異なるごとに区分した課税標準である金額に税率を乗じて計算する方法です。

②積上げ計算

 適格請求書発行事業者が、適格請求書又は適格簡易請求書の写しを保存している場合は、これらの書類の消費税を積み上げて、消費税額を計算する方法です。

(2)仕入に係る税額の計算

①積上げ計算

 原則的な方法で、適格請求書及び適格簡易請求書に記載された消費税額を積み上げて、消費税を計算する方法です。

②割り戻し計算

 売上げにかかる税額の計算で、積上げ計算をしない事業者については、帳簿で課税仕入れの金額を集計して、税込金額から割り戻して、税率の異なるごとに区分した金額に税率を乗じて計算する方法です。

 

 実務的には、多くの場合、割り戻し計算を行うように感じます。なぜなら、帳簿からの割り戻しであれば、帳簿の作成を行えば自動で消費税の計算が可能ですが、積上げ計算を行うには、帳簿を作成して、それと別に適格請求書等を集計するという作業が必要になります。また、交通費や自動販売機からの購入など、一定の場合には適格簡易請求書すら存在しない場合に、積上げを行うための資料作りをするというのも、現段階では想定しにくいと思います。もっとも導入が数年後なので、適格請求書等に二次元バーコートなどを埋め込み、読み込めば会計ソフトへの取り込みと、適格請求書の集計が同時にできるなど、インフラが整うことで、積上げ計算が主流になる可能性もあります。

免税事業者等からの課税仕入れ

 免税事業者は、適格請求書発行事業者として登録することができず、適格請求書等を発行することができません。免税事業者から仕入等を行った場合に、経過措置が設けられており、当面は課税仕入のうちの一定割合について、税額控除が認められますが、最終的には仕入税額控除ができなくなります。

平成33年4月1日から平成36年3月31日までの免税事業者からの課税仕入れ

一定の帳簿の記載を要件に消費税相当額の80%を仕入税額として控除可能

平成36年4月1日から平成39年3月31日までの免税事業者からの課税仕入れ

一定の帳簿の記載を要件に消費税相当額の50%を仕入税額として控除可能

 経過期間を終えた平成39年4月以降は、免税事業者からの課税仕入れは、仕入税額控除を受けられなくなります。

 実務的には、オープンしたばかりで免税事業者である飲食店で打ち合わせをした場合、あるいは、免税事業者である個人タクシーを利用した場合には、同じ金額を支払ったとしても、仕入税額控除が受けられなくなります。課税仕入れを行う場合に、相手先が適格請求書発行事業者であるかの確認を行うことになると推測されます。一人親方として、建設業をしている場合などに、適格請求書発行事業者でないことで、外注先になれないなどの弊害が生じる可能性も考えられます。

 現在の制度では、免税事業者でも消費税相当を上乗せして請求して、本来納付すべき金額があったとしても、その部分が益税になっています。一方で、消費税を上乗せしなければ、仕入や諸経費に上乗せされている部分の負担が重いものになります。免税事業者からの課税仕入れについての税額控除が認められなくなった場合は、課税仕入れを行う側が、仕入税額控除できなくなる部分について、値引きなどの対応をしなければ仕事がこないなどということが想定されます。この場合は仕入や経費にかかる消費税は自分が被ることになるので、益税どころか損税になってしまいます。まだ、少し先の話ですが、事業者向けの仕事を行っている免税事業者は、課税事業者の選択について、真剣に考えることが必要となります。

適格請求書の交付義務と記載事項

 適格請求書発行事業者は、国内において消費税が課税される資産の譲渡等を行った場合において、他の事業者から求められたときは、適格請求書の交付義務を負います。

(1)適格請求書

 適格請求書とは、下記の事項が記載された請求書、納品書等の書類をいいます。

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②課税資産の譲渡等を行った年月日                             

③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、その旨)                                                     

④課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率                                                           

⑤消費税額等                                                       

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

(2)適格簡易請求書

 適格請求書には、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が必要ですが、タクシーに乗車した際、小売店などで、必ずしも宛名を記入することは、現実的ではありません。そこで、適格請求書発行事業者が、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業又は駐車場業等の不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業者である場合には、適格請求書に代えて適格簡易請求書を交付することができます。

 適格簡易請求書は、下記の事項が記載された請求書、納品書その他これに類する書類をいいます。

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②課税資産の譲渡等を行った年月日

③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、その旨)

④課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率

⑤消費税額等

 なお、適格請求発行事業者が、あらかじめ相手の事業者の承諾を得たときは、適格請求書の交付に代えて、適格請求書の記載事項に係る電磁的記録を提供することが認められます。

適格請求書の交付が困難である場合の交付義務の免除

 適格請求書を交付することが困難である一定の取引については、適格請求書の交付義務が免除されます。一方で、適格請求書の交付が困難である事業者から、課税仕入れを行った事業者については、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入れ税額控除が認められます。

 適格請求書を交付することが困難である事例としては、自動販売機から購入する場合や入場券など証拠書類が回収される場合、中古品販売業者が消費者から仕入れる場合などが想定されます。なお、現行の3万円未満の課税仕入れについて、請求書等の保存を不要とする取扱は廃止されます。

◆適格請求書等保存方式

 現行の消費税法では、仕入れ税額控除の適用を受けるためには、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿及び請求書等の両方を保存する義務があります。ただし、税込支払金額が3万円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、帳簿の保存のみで仕入れ税額控除を認めています。現行では、免税事業者からの仕入であっても、仕入れ税額控除を認める仕組みとなっています。

 平成33年4月以降は、適格請求書等保存方式が導入され、一定の帳簿に加えて、適格請求書等の保存が、仕入れ税額控除の要件とされます。適格請求書等とは、具体的には下記のものをいいます。

①適格請求書
②適格簡易請求書
③適格請求書の記載事項に係る電磁的記録
④事業者が課税仕入れについて作成する仕入明細書等の書類で、適格請求書の記載事項が記載されているもの(適格請求書発行事業者の確認を受けたものに限る)
⑤媒介又は取次ぎに係る一定の書類

 帳簿及び「請求書等」から帳簿及び「適格請求書等」への変化であり、イメージ的には今までとあまり変化がないように見えます。しかし、「適格請求書等」を発行できる事業者は適格請求書発行事業者に限られ税務署に申請を行い、登録を受ける必要があります。

 現時点では、売り手側に消費税を区分記載した請求書の交付義務・保存義務は課されず、偽りの請求書の交付に対する罰則規定も存在しません。適格請求書等保存方式が導入された場合は、適格請求書等を発行した事業者は、適格請求書等の保存義務が生じ、適格請求書類似書類等の交付が禁止され、罰則規定も設けられます。

 つまり、仕入れ税額控除を受ける側では大きな変化ではありませんが、適格請求書等を発行する事業者の負担が増加することになります。

◆適格請求書発行事業者の登録

 適格請求書等を発行することができるのは、「適格請求書発行事業者」に限られます。適格請求書発行事業者となるためには、免税事業者以外の事業者が、納税地の所轄税務署長に申請書を提出して、適格請求書を交付できる事業者として登録を受ける必要があります。

 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号などは、インターネットを通じて登録後公表されることになります。

 適格請求書発行事業者が、登録の取消しの届出書を所轄税務署長に提出することで、その登録は取り消されます。この点については、実務上気をつけておく必要があります。従来は、事業者免税点制度により年間の課税売上高が1,000万円以下になることで、その翌々年から免税事業者になりましたが、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、登録の取消を行わなければ、事業者免税点制度を利用できないことになります。よって、事業者免税点制度の適用のためには、適格請求書発行事業者の登録の取消しが必要となります。

 

区分記載請求書等保存方式

 消費税の軽減税率の導入に伴い、平成33年4月からは適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス方式が導入されます。軽減税率の導入が平成29年4月なので、適格請求書等保存方式が導入されるまでは、暫定的に区分記載請求書等保存方式が採用されます。

 基本的には、現在と同じように帳簿及び請求書を保存することで、仕入れ税額控除を認める仕組みですが、帳簿に記載すべき内容として「軽減対象資産の譲渡等である旨」が追加され、請求書には「軽減対象資産の譲渡等である旨」と「税率の異なるごとに区分して合計した対価の額」の記載が必要になります。

 ただし、実務上は、請求書を記載する側が、軽減対象資産の譲渡である旨や、税率の異なるごとに区分してくれとは限りませんので、請求書の交付を受けた事業者が事実に基づき追記することが認められます。

簡便計算

 売上高及び課税仕入れ等について、軽減税率を含めて正確に区分して会計ソフトに入力することができれば、消費税の計算自体は正しく行うことが可能です。しかし、現在のレジシステムや、販売管理システム、仕入管理のシステムなどの変更が間に合わずに、軽減税率を含んだところで正しく区分できない可能性が考えられます。

 そこで、経過措置として、軽減税率の対象となる売上高や課税仕入れが正確に把握できない場合に、簡便的な方法により区分して消費税の納付税額を計算する方法を認めています。

 細かい要件などは、政令が公表されないと明らかにならないので、割愛しますが、概ね下記のような簡便法が認められています。

◆売上高に占める軽減対象課税資産の譲渡等の金額が把握できない場合の簡便法

 簡便法①

通常の事業を行う連続する10営業日の次の割合

 簡便法②

卸売業及び小売業に係る課税仕入れ等に占める軽減対象課税資産の

譲渡等にのみに要するものの割合

 簡便法③ 50%を軽減対象課税資産の譲渡等とする方法

◆仕入れ等に占める軽減対象課税資産の譲渡等の金額が把握できない場合の簡便法

簡便法④

卸売業及び小売業に係る資産の譲渡等に係る次の割合

簡易課税

※本来、課税期間の開始前に届出が必要な簡易課税を、

進行年度中に届出書を提出することで利用できるようにします。課税仕入れについては、

みなし仕入率を利用するので区分管理ができていない場合でも、税額計算が可能となります。

簡易課税に準ずる計算

※本来、簡易課税を適用できない大規模な事業者が簡易課税と同様の計算方法を用いることで、課税仕入れについて区分管理ができていない場合でも、税額計算が可能となります。

 売る側が正確に軽減税率の対象となるものを正確に区分できない場合と、課税仕入れ等を行う側が、軽減税率の対象となるものを正確に区分できない場合と、両方が想定されています。

(1)売上に占める軽減税率の対象となる金額が把握できない場合

 簡便法①は、売上高に占める軽減税率の対象となる金額が不明な場合に、サンプルとして連続する10営業日の、数字を把握して、それを年間の軽減税率による売上の割合と考える方法です。

 簡便法②は、売上高に占める軽減税率の対象となる金額が不明な場合で、卸売業や小売業に限定して認められる方法です。卸売業や小売業は、仕入れてそのままの状態で販売するので、仕入に含まれる軽減税率の対象となる金額の割合が、売上高の中に占める軽減税率の対象となる金額の割合と、ほぼ一致するであろうとして認められる手法です。

 簡便法③は。売上高に占める軽減税率の対象となる金額が把握できない場合に、割り切りで50%を軽減税率の対象となる売上高とする計算方法です。ただし、主として、軽減税率を対象とする事業者に認められる方法なので、通常は実額で計算するよりも不利になることが想定されます。

(2)課税仕入れに係る軽減税率の対象となる金額が把握できない場合

 簡便法④は、課税仕入れに係る軽減税率の対象となる金額が不明な場合で、簡便法②と同じように卸売業と小売業であれば、仕入に占める軽減税率の割合と売上高に占める軽減税率の割合が、ほぼ連動することを前提として、売上に占める軽減税率の割合がわかるのなら、その割合で、課税仕入れの中の軽減税率の割合を推定するという手法です。

 仕入控除税額の計算を行う際に簡易課税という手法があります。業種ごとに応じた、みなし仕入率を用いて仕入控除税額を算定するので、課税仕入れについて正しく集計することができなくても税額計算が可能となります。軽減税率の導入に伴い、通常は課税期間が始まる前に届出が必要な簡易課税について、進行期中に届出を行うことで簡易課税を適用できる取扱としました。また、本来は、簡易課税を適用できない大規模な事業者についても、簡易課税と同様の計算による仕入控除税額の計算を認める取扱を1期間に限って認めました。

(3)適用期間

 

中小事業者

基準期間の課税売上高が5,000万円以下

中小事業者以外

基準期間の課税売上高が5,000万円超

簡便法①

平成29年4月1日から平成33年3月31日までの期間

※課税期間は無関係     

平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間

簡便法②

簡便法③

簡便法④

平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間

簡易課税の届出書の特例

平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間までに届出書の提出

※効力はその後も継続

 

――――

 

簡易課税に準ずる方法

――――

平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間

 計算方法によって、納付税額に差異が生じますから、適用可能な計算方法で、有利なものを使うというような検討が必要になります。

 

飲食料品

 軽減税率の対象として、飲食料品という情報は早い段階から報道されてきましたが、具体的に軽減税率の対象となる飲食料品についてご紹介していきます。

 飲食料品とは、食品表示法に規定する食品に該当するもので、酒税法で規定される酒類を除くものとされています。

 ただし、食品であったとしても、次の①及び②は軽減税率の対象とはなりません。

①飲食店業等その他の事業を営む者が行う食事の提供

 テーブル、椅子、カウンターなどの飲食のための設備がある場所で行う飲食料品を飲食させる役務の提供、つまり飲食店における食事の提供は、軽減税率の対象となりません。

 ただし、料理飲食店が、持ち帰りのために容器に入れ、又は包装を施して販売するような場合は、軽減税率の対象となります。つまり、出前やテイクアウトの場合は、軽減税率の対象に含まれることになります。

②相手が指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を行う飲食料品の提供

 具体的にはケータリングサービスや、出張料理などを想定しています。

 ただし、有料老人ホームなど、人が生活を営む場所において行う一定の飲食料品の提供の場合は、軽減税率の対象となります。

 また、食品と食品以外の資産が一の資産を形成し、又は構成している一定の資産については、商品価値が一万円以下であり、価格に占める飲食料品の割合が3分の2超であれば、食品として軽減税率の対象に含まれるようです。

 実務的な視点からは、いろいろな問題点が考えられます。

 飲食店の経営者とお話ししたところ、店内で食べる場合と出前の場合で、値段が変わるというのは非常にやっかいとのことでした。例えば、税抜き800円なら、軽減税率の対象とならなければ税込880円、軽減税率の対象となる場合に864円となります。釣り銭の用意も手間ですし、出前という付加価値が加わるのに受け取る金額が小さくなることについても、現場の側からすれば大きな違和感となります。釣り銭のことだけを考慮すれば、実際には出前を含む料金設定と、店内で食べる料金の税抜き金額に差を設けて、受け取る総額を一致させるなどで対応可能ですが、結局同じ金額を受け取る場合でも、レジに打つ際は、異なる税区分での入力をしないと、正しい消費税の計算が行えないなどの問題が残ります。

 軽減税率の対象商品である食品を扱う事業者だけに影響があるのかというと、普通の会社でも、来客のためのお茶菓子や、打ち合わせの際のお弁当代など、軽減税率の対象となる商品を購入するので、消費税額の計算を行う際に、税区分の異なるごとに管理を行うことが必要になります。

新聞

 新聞等について、降ってわいたように軽減税率の対象になることが決まりました。ただし、新聞と言っても非常に限定的な取扱とされています。

 一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞で、週に二回以上発行するもので、定期購読契約に基づく場合に限定されています。

 別の言い方をすれば、週一回刊行のものは軽減税率の対象とならず、定期購読の場合に軽減税率の対象となる新聞であっても、駅の売店やコンビニエンスストアで購入する場合は、軽減税率の対象とならないことになります。

 実務的な視点では、売る場所で、軽減税率の対象なのか対象とならないのか明確になってくるので、売る側の負担はそれほど生じないと思われます。ただし、購入側では、新聞の定期購読について、軽減税率の対象となるのか否かを判断した上での、区分経理が必要になるので、多少事務が繁雑になるという側面があります。

消費税の軽減税率制度の開始時期と対象品目

 平成29年4月1日から予定されている消費税率10%(国分7.8%、地方分2.2%)への引上げと同時に、消費税の軽減税率制度が導入されることになりました。

 軽減税率の対象となるのは、飲食料品(酒類及び外食を除く)と週2回以上発行される新聞の購読料とされました。

 なお、軽減税率は8%(国分6.24%、地方分1.76%)と全体では、現行の消費税率と同じですが、国分と地方分の内訳が変更になっています。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)

 軽減税率制度の導入に伴い、平成33年4月から適格請求書等保存方式が導入されることとなりました。仕入れ税額控除の要件として、適格請求書及び帳簿の保存が必要となります。

 消費税の計算方法については、適格請求書の消費税額を積上げ計算する方法と、取引総額から割り戻し計算との選択制となります。

 適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者とされています。適格請求書発行事業者とは、免税事業者以外の事業者であって、納税地を所轄する税務署長に申請書を提出して登録を受けた事業者をいいます。

 免税事業者は、適格請求書を発行することができないことになります。仕入れ税額控除を受けるための要件として、適格請求書が必要であることから、同じ商品を購入する場合、同じサービスの提供を受ける際に、適格請求書が発行可能な取引先を選別するという事態が生じることに繋がることが予測されます。例えば、タクシーに乗る際に、免税事業者である個人タクシーではなく、適格請求書(厳密には適格簡易請求書)が発行可能なタクシーを選択するなどの現象が起こることが予測されます。

 なお、適格請求書等保存方式が導入されて、すぐに免税事業者からの課税仕入れについて、仕入れ税額控除を認めない形とはしないで、6年間の猶予期間を設けて、  最初の3年間は80%部分の仕入れ税額控除を認め、残りの3年間は50%部分の仕入れ税額控除を認めるという形になります。

 免税事業者は、課税事業者を選択することで、結果として、適格請求書発行事業者となることが可能です。よって、適格請求書を必要とする事業者向けのビジネスをする場合には、敢えて課税事業者を選択するというような流れになっていくことが想定されます。

 適格請求書発行事業者の登録は、平成31年4月1日からとされており、課税事業者であれば自動的に適格請求書発行事業者になるというわけではないので、注意が必要です。

適格請求書等保存方式導入までの経過措置

 平成29年4月1日に軽減税率制度が導入されるのに対して、適格請求書等保存方式が適用されるのは平成33年4月1日とされています。その隙間の期間については、区分記載請求書等保存方式という制度が経過的に採用されることになります。

 区分記載請求書等保存方式では、軽減税率の対象となる取引があった場合に、帳簿に「29年軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨」の記載が必要となります。また、請求書等に、「29年軽減対象資産の譲渡等である旨」及び「税率の異なるごとに区分して合計した対価の額」の記載が必要となります。

税額計算の特例

 軽減税率が導入された直後は、レジの変更や会計システムの変更が間に合わず、税率ごとに正しく区分した経理処理が行えないことが想定されます。そこで、売上高や仕入等について、税率の異なることに区分することが困難な場合に、一定の簡便計算を認めることとしています。この簡便方法の採用により、税額計算の結果が異なり有利不利が生じるので注意が必要です。

住宅の三世代同居改修工事等に係る特例

 自己の有する家屋に三世代同居改修工事を行った場合に、借入金により改修を行った場合に利用できるローン減税と、自己資金で改修を行った場合の投資型減税のいずれかを、適用することができます。

(1)三世代同居改修工事

 本制度の対象となる三世代同居改修工事とは、次の①及び②の要件を満たす工事で、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住の用に供した場合に適用可能となります。

①調理室、浴室、便所又は玄関のいずれかを増設する工事で、改修後、いずれか2つ以上が複数となるもの

②工事費用の合計額が50万円を超えるもの(補助金の交付がある場合は、補助金を控除した後の金額で判定)

※自己資金による投資型減税の場合は、標準的な工事費用相当額が50万円を超えることとされています。

(2)ローン型減税

 対象となる住宅借入金等は、償還期限が5年以上の住宅借入金等です。

 控除限度額は、下記のとおりとなります。

 

対象工事限度額

控除率

三世代同居工事

250万円

2%

その他工事

750万円

1%

 具体的には、三世代同居工事で250万円×2%で年間5万円、その他工事で750万円×1%で7.5万円の合計額12.5万円が、1年間の最大の控除限度額となり、5年間で最大で62.5万円の税額控除を受けることが可能となります。

(3)投資型減税

 三世代同居改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%に相当する金額の税額控除を受けることが可能となります。よって、最大で25万円の税額控除が可能となります。

 標準的な工事費用相当額とは、三世代同居改修工事の改修部位ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に、その三世代同居改修工事を行った箇所数を乗じて計算した金額です。

セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC医薬品による控除制度

 セルフメディケーションの推進のため、スイッチOTC医薬品の購入費用を対象とする所得控除制度で、国税及び地方税で創設されます。スイッチOTC医薬品とは、要指導医薬品及び一般医薬品のうち、医療用から転用された医薬品をいいます。よって、医薬品すべてが対象となるわけではありません。

(1)制度の内容

 健康の維持増進及び疾病の予防への取組として、①特定健康診断、②予防接種、③定期健康診断、④健康診査、⑤がん検診など一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る、一定のスイッチOTC医薬品の購入の対価を支払った場合に、その年中に支払った対価の額の合計額が1万2千円を超える時は、その超える部分の金額(上限8万8千円)について、その年分の総所得金額等から控除できる制度です。

 なお、支払った対価の額は、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補填される部分の金額を除きます。

(2)医療費控除との関係

 本制度は、医療費控除と重複適用はできません。医療費の金額が大きい場合には、従来の医療費控除を受ける方が有利となります。一方で、スイッチOTC医薬品の購入はしていたものの、年間の購入額が10万円以下で医療費控除が適用できなかった場合には、本制度の利用がマッチします。医療費控除と本制度では、対象となるものの範囲が異なりますが、実務上は医療費控除の裾野を広げるような運用になると思われます。

空き家に係る譲渡所得の特別控除制度

(1)概要

 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、その家屋及び敷地等を譲渡した場合に、その譲渡益から3,000万円の控除が受けられる制度です。国税及び地方税で創設される取扱です。

 本制度の趣旨とするところは、空き家対策であることから、比較的売りやすい物件や、高額な物件は、本制度が利用できない仕組みになっているので注意が必要です。

(2)対象となる資産

 対象となるのは、被相続人の居住用家屋とその家屋の敷地の用に供されていた土地等です。被相続人の居住用家屋とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(区分所有建築物以外は、昭和56年5月までに建築された家屋に限定)で、相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものをいいます。ただし、譲渡対価の額が1億円を超えるものは除外されます。

① 被相続人居住用家屋とその敷地に供されている土地等の場合は、下記の要件を満たす必要があります。

イ 相続の時から、譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されたことがないこと。

ロ その譲渡の時において、地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合するものであること。

※耐震に対する基準を満たさない場合は、その基準を満たすためのリフォームをしてから譲渡することが必要になります。

 

② 敷地等の場合は、被相続人居住家屋で下記イの要件を満たすものを除却した後に、その敷地の用に供されていた土地等で下記ロの要件を満たす必要があります。

イ 相続の時から建物の除却の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されたことがないこと。

ロ 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用、又は居住の用に供されたことがないこと。

 

(3)金額の判定

 上記で、1億円を超える譲渡は、本制度の適用外であると書きましたが、その判定は、相続の時から、その相続をした日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に、相続人が行った対象資産の譲渡の合計額で行います。

(4)適用関係

 本制度は、平成28年4月1日以後に行われる譲渡から適用があります。つまり、平成25年1月2日以後に発生した相続から適用が可能となります。

 本制度の適用を受けるためには、確定申告書に地方公共団体の長等が要件を満たすことの確認をした旨を証する書類その他の書類の添付が必要となります。

 なお、相続税の取得費加算制度とは、選択適用となっており、併用はできません。また、居住用財産の買換え等の特例とは重複適用その他所要の措置が講じられる予定です。

 

地方拠点強化税制の拡充

 雇用促進税制のうち地方活力向上地域特定業務施設整備計画に係る措置について、所得拡大税制と重複して適用することが可能となります。

 なお、重複して適用する場合には、所得拡大税制の適用の際に計算の基礎となる、雇用者給与等支給増加額から、雇用促進税制の給与等支給額として一定の方法により計算した金額を控除して計算することになります。

 国税及び地方税に共通する取扱となります。

 東京23区から、本店を地方に移転させる計画がある場合などは、是非利用したい制度です。

企業版ふるさと納税の創設

 地方再生法の改正を前提に、地域再生法の改正法の施行日から平成32年3月31日までの間に、地域再生法の認定地域再生計画に記載された地方再生推進寄附活用事業に関連する寄附金を支出した場合には、一定の税額控除を受けられる制度が創設されます。

 青色申告書を提出する法人が対象で、国税及び地方税で税額控除が受けられます。

 なお、地方公共団体に対する寄附金は、全額損金算入されますが、損金算入に加えて税額控除が受けられるという制度です。

  個人のふるさと納税の場合は、実質2千円の負担で、お礼の品を受け取れることで、爆発的な人気です。一方で、企業版ふるさと納税は、通常の地方自治体への寄附よりは税務上有利となりますが、得をするという制度ではありません。

国家戦略特別区域における指定法人の所得の特別控除制度

 青色申告書を提出する内国法人で、国家戦略特別区域の指定の日以後に設立され、その区域内に本店又は主たる事務所を有し、専ら特定事業を営むものは、国家戦略特別区域法の施行の日から平成30年3月31日までに国家戦略特別区域担当大臣の指定を受けた法人については、設立の日から5年間、所得の金額の20%の所得控除が受けられる制度です。

 例えば、千葉市では、ドローンによる医薬品の宅配サービスの実験などを行う前提で、国家戦略特別区域となっています。国家戦略特別区域法の改正が行われ、法人の指定制度が施行された後、千葉市が国家戦略特区域として指定された後に設立された法人が、指定を受けた場合に適用できる制度です。

環境関連投資促進税制の縮減

 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、以下の見直しをして、適用期限を2年延長して、平成30年3月31日までとしました。

①風力発電設備について即時償却を廃止

②対象資産として、太陽光発電設備を電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の認定発電設備以外のものとする(固定買い取り制度以外)

③税額控除の対象資産から車両運搬具を除外

 太陽光発電装置を設置して、即時償却を行うという節税手法が流行しました。しかし、平成28年度税制改正で、節税手法としての利用はしにくくなることになりました。

成長志向の法人税改革で法人実効税率20%台へ

 平成27年度に成長志向の法人税改革という大きな目標に向けて動き出しました。その内容は、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる、言い換えれば広く薄く課税する方向への転換です。広く薄く課税することで、収益拡大に向けた前向きな投資、賃上げが可能な体質へ転換を促すことを趣旨としています。

 平成28年度税制改正により、平成28年度には法人実効税率は29.97%となり、目標である20%台に達成します。なお、平成30年度には法人実効税率は29.74%となる予定です。前年からの引下げは下記の通り0.5%ですが、数年間のスパンで見るときな引下げとなっています。

  平成26年度
 改正前 
 平成27年度
 27年度改正 
 平成28年度
 28年度改正 
 平成30年度
 28年度改正 
法人税率   25.5% 23.9% 23.4% 23.2%
大法人の法人事業税所得割    7.2% 6.0% 3.6% 3.6%
法人実効税率 34.62% 32.11% 29.97% 29.74%

 中小企業の視点からみると、法人税及び事業税については、軽減税率が適用されており、東京都の中小法人であれば所得金額が400万円以下の場合で21%強と優遇されています。中小法人向けの税率については、今回の改正では変更がありません。

課税ベースの拡大

 法人税率を引き下げることと引き替えに、課税ベースは拡大される形の改正が行われます。税率を下げる替わりに、課税所得が高くなるような改正です。結果として、広く薄く課税することが可能となります。

①減価償却方法の見直し

 減価償却の方法には、定率法、定額法などの計算方法があり、定率法の方が早期に減価償却費を多額に計上できる特徴があります。平成28年度税制改正では、建物附属設備と構築物の償却方法を定額法に一本化することになりました。平成28年4月以後に取得される固定資産に適用されます。

②租税特別措置法の見直し

 生産性向上設備投資促進税制は、節税メリットが大きく非常に多額の利用実績があった制度です。本制度について、平成28年度は即時償却を廃止し、50%の特別償却が残る形になります。税額控除も上乗せ措置である5%は廃止、4%の税額控除だけが残ります。また、平成29年度には、措置法の期限切れで廃止となることも明らかにされました。

③欠損金繰越控除額の見直し

 欠損金の繰越控除については、財源の確保と、法人に与える影響を平準化するために下記のとおり変更されます。

 平成27年度改正平成28年度改正 
 事業年度開始日控除限度割合  事業年度開始日控除限度割合 
平成27年4月~ 平成29年3月 65%平成27年4月~平成28年3月 65%
平成28年4月~平成29年3月 60%
平成29年4月~ 50%平成29年4月~平成30年3月 55%
平成30年4月~ 50%

 

④法人事業税の外形標準課税の拡大

 資本金1億円超の外形標準課税が適用される法人の法人事業税は、所得割、付加価値割、資本割から構成されますが、広く薄く課税する趣旨から、所得に課税される所得割のウエイトを小さくし、赤字法人にも課税される付加価値割と資本割のウエイトを、大きくします。

       現行          平成28年度改正    
  付加価値割     0.72% 1.2%
資本割 0.3% 0.5%

 外形標準課税が適用される法人では、所得割のウエイトが小さくなることに伴い、地方法人特別税の税率が現行の93.5%から、平成28年度以降は414.2%に変更になります。

 なお、付加価値割の税率アップが中堅企業へ与える影響が大きいことから、平成28年4月から平成29年3月までに開始する事業年度の付加価値額が40億円未満の法人については、一定の軽減措置が講じられることになります。

法人税関係

・平成28年4月1日以後開始事業年度について、法人税率が23.9%から23.4%に引き下げになりました。0.5%と微妙な下げ幅ですが、法人実効税率が20%台になるという点では意味のある改正です。ただし、中小法人の場合は、課税所得800万円部分までは、法人税率が15%と軽減されており、その部分は変更がありません。

・法人税率の引き下げに伴う財源不足の関係から、繰越欠損金の控除限度額の制限について微妙な調整が行われ、繰越期間の延長が1年先送りとされました。

・外形標準課税が適用される法人については、付加価値割及び資本割りの割合が増加し、所得割の割合が減少という形で、赤字法人に対する課税が強化されています。

・平成28年4月1日以後取得する建物附属設備及び構築物についての減価償却方法は、定率法が廃止され、定額法を利用することになります。

・中小企業でも多く利用されていた生産性向上設備投資促進税制は、平成29年3月31日までに取得した資産で廃止されることになりました。また、即時償却と税額控除率の上乗せ措置については、平成28年3月31日取得分までとされ、期限は延長されないことになりました。

所得税関係

・相続の開始の直前に被相続人の居住の用に供されていた一定の家屋及び、その敷地の用に供されていた土地等を、相続により取得した個人が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までに、一定の要件で売却した場合には、居住用財産の3千万円の特別控除が受けられる制度が創設されます。

・健康の維持推進のために特定健康診査、予防接種、定期健康診断、がん検診等を行い、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、要指導医薬品及び一般医薬品のうち、医療用から転用された医薬品を購入した場合に、その年中に支払った金額が1万2千円を超える時は、その超える部分の金額(上限8万8千円)について、所得控除できる制度が導入されます。

消費税関係

・消費税については、平成29年4月1日より消費税率を10%への引き上げ、同時に軽減税率が導入されることになりました。軽減税率は減税前の税率と同じ8%で、軽減税率の対象となるのは、食品(酒類及び外食サービスを除く)と新聞とされました。

・軽減税率の導入に伴い、適格請求書(インボイス)が、平成33年4月1日から導入されることになりました。適格請求書を交付するためには、適格請求書発行事業者として登録が必要となります。適格請求書発行事業者としての登録は、平成31年4月1日から申請可能です。免税事業者は、適格請求書を発行できない仕組みとなっていて、取引先との関係から適格請求書を発行する必要がある場合は、敢えて課税事業者を選択することで、適格請求書発行事業者となることが可能です。

・適格請求書等保存方式の導入と軽減税率の導入に時間差があります。そこで、適格請求書保存方式が導入されるまでは、帳簿及び請求書への記載で対応する形になります。

・軽減税率に関する売上高・仕入高を正確に集計するための準備期間として、簡易課税に準じる方式など、いくつかの簡便な計算方法が認められます。簡便な計算を用いることで、益税となる場合も損税となる場合もあるので、その利用に当たっては注意が必要です。

その他

・クレジットカードにより国税を納付できる制度が導入されます。

・マイナンバーの記載が必要とされていた所得税の青色申告承認申請書、消費税簡易課税制度選択届出書、給与所得者の扶養親族申告書、退職所得申告書など多くの書類にマイナンバーの記載が不要となります。

平成28年分源泉徴収税額表

 年末調整に関する書類と一緒に平成28年分源泉徴収税額表が税務署から送付されてきているはずです。ここで、気をつける必要があるのは、平成27年分と内容が変更になっている点です。税率の変更であれば、1ページ目から源泉徴収の金額が変更になっているので、すぐに気づくのですが、平成27年分と平成28年分は途中まで、ずっと同じ金額が並んでいるので、一見すると、変化がないように見えるところが落とし穴です。

 少々細かい話になりますが、甲欄適用の場合は、社会保険料控除後の給与金額が100万1千円以上の人から、源泉徴収税額が変更になります。乙欄適用の場合は月額40万4千円以上の人から源泉徴収税額が変更になります。

 こちらは、下記の記事のとおり給与所得控除が給与収入額1,200万円で打ち止めになった影響で、別の言い方をすれば給与収入額が1,200万円を下回っている場合には影響がありません。

https://www.tohoren.or.jp/taxinfo/20140203583.html

 このような一部だけの方が対象になる改正は、ミスが起きやすいので、注意が必要です。甲欄適用の場合は月額100万円が目安ですが、乙欄適用の場合は月額40万円でも数字が変わる点は気にしておいてください。

 なお、平成29年になると、さらに給与所得控除の上限が小さくなるので、来年にも同じような問題が生じます。

12月分の給料を1月10日に支払う場合の年末調整

 新しく関与するお客さんから、時々ある質問で、「12月分の給料を1月に払う場合は、年末調整に含めるのですか」というものがあります。誤った処理として、12月分で1月10日支給日分を年末調整に押し込む形で、2月10日~翌年1月10日支給日分で、年末調整をしているケースも散見されます。この点については、単純に1月10日~12月10日に支給する給与で、年末調整するのが正解です。

 年末調整は、本年中に支払の確定した給与が対象になるのですが、この場合の確定した日は、契約又は慣習により支給日が定められている給与については、その支給日とされています。つまり、翌月10日が支給日とされている場合は、12月分の労働に対応するものであったとしても、あくまでも支給日である1月10日が確定した日付となり、来年分の年末調整に含めることになります。平成27年12月の労働の対価であったとしても、平成28年1月10日が支給日の場合は、平成28年分源泉徴収税額表の対象になるのでお気をつけください。

 ただし、12月25日が支給日であるにも関わらず、会社の資金繰りの都合で、翌年の1月10日に支払われたような場合は、従業員にとっては、本来の支給日である12月に給与の収入があるものとして、年末調整に含めることになります。

 なお、会社の決算であれば、12月分の労働の対価ですから、翌年1月10日に支給されるとしても、12月分の給与として未払金を計上するのが正しい処理となります。この当たりの違いは、所得税の取扱と法人税の取扱の差異から生ずるものであり、割り切って考える必要があります。

株式の分散化

 同族会社の株式の評価は、原則的な評価の場合と少数株主にとっての配当還元方式による評価の場合とで、評価額に大きな差が生じます。具体的には、原則的な評価であれば一株200万円、それに対して配当還元方式を用いると一株2万5千円と評価されるような 場合があります。そこで、生前に配当還元方式による評価が適用される人に贈与して、代表者自身の持つ財産額を減らすという方法があります。持ち株比率が5%未満となる状態の、役員でない従業員、いとこ、甥や姪、孫の配偶者などへの贈与であれば、原則的な評価なら一株200万円の株式を、配当還元方式による評価で一株2万5千円の評価で贈与することが可能となる場合があります。この部分の判定は、難しくなるので、税理士などにご相談されるとよいかと思います。
 あるいは、もっと単純に、年間の贈与税の非課税枠、あるいは税率が低い範囲で、子や孫に株式を贈与するなどの方法を用いる場合もあるかもしれません。
 いずれの場合でも、代表者の株式を分散させることで、相続税の負担は軽くなりますので、相続税という視点だけで見ると良い結果をもたらします。しかし、分散した株式を買い集める必要が生じた場合には、時価での買い取りに応ずる必要があり、長期的には、節税できた金額以上の負担が生じる可能性があります。また、それ以外にも、帳簿の閲覧請求、株主総会の招集請求、総会検査役の選任請求など、少数株主の権利を行使されることで、煩わしい対応が必要になる可能性もあります。
 株式の分散は、相続税対策としてはメリットがあるかもしれませんが、その後にトラブルをもたらす可能性があるので、一長一短と考える必要があります。個人的には、株式は分散しない方がよいと思っています。税金を安くするよりもリスクをなくすことの方が大切です。

早すぎる対策

 事業承継の失敗事例として、早すぎた対策というケースがよくあります。例えば、長男に事業承継することを決め、長男に大部分の株式を移動させた後に、長男が事業を承継しないなどの事例です。この場合でも、長男が株式を新たな後継者へ移動することに抵抗を示さなければ問題ないのですが、株式の移動に応じないとか、会社にとって好ましくない形で株主権の行使を行うと中小企業にとっては、大きな問題が生じます。
 それ以外で、典型的なのが、娘婿を後継者と定めて株式を移動していったところ離婚してしまったなどというケースです。娘婿がその後も会社をしっかりと経営してくれるのであれば、会社として実害はないのかもしれませんが、感情面、株式を贈与した経営者の老後の問題、娘の生活費など、いろいろと難しい問題が生じます。
後継者が決まったとしても、経営者が現役でいる期間は、株式を移動していくタイミングは慎重に決める必要があります。

 

順番が変わってしまうケース

 後継者が決まり、株式を移動してしまった後に、後継者が先に亡くなってしまうケースがあります。想定外のことなので、避けられないことなのかもしれませんが、いろいろと難しい側面があります。
 例えば、経営者が自分の相続対策は十分にしていても、後継者の相続対策をしておらず、大きな相続税負担となるなどの事態が生じます。親から子へ贈与税を負担しつつ、長期間かけて株式を移動したのに、子から親への相続で、さらに税負担が発生するというのも、気持ち的にはやりきれなさが残ります。
 親に株式が戻ってくるのであれば、まだ良い方で、後継者に配偶者と子供がいると、相続財産を取得するのは、後継者の配偶者と子供ということになります。後継者の配偶者との関係が良好であれば、何ら問題が生じませんが、場合によっては、配偶者の一族が会社の経営に入り込み、経営者が解任されてしまうなど、思いがけない事態が発生する可能性も考えられます。
 いずれにしても、事業承継の対策のつもりが、悪い結果に結びつくことも、実務の世界ではよくある話です。物事がすべて予定通りに進むということは、まれであり、必要な時点で必要な部分について対策を行うという考え方が重要です。何もしないことが一番の対策ということもありますので、事業承継対策は慎重に判断すべきです。

年末調整の準備

 年末調整の際に、最低限、集めなければいけない書類としては、下記の二つとなります。

□ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

□ 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書

 また、中途入社の方からは前職分の源泉徴収票、住宅ローン減税を受ける方からは、給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書を収集する必要があります。
年末調整の詳細については、年末調整の詳細をご覧ください。

平成28年分の扶養控除等申告書

 平成27年分の年末調整で使用するのは、平成27年分の扶養控除等申告書ですが、通常は平成28年分の給与支払いに備えて、この時期に平成28年分の扶養控除等申告書を、従業員に提出してもらうケースが多いと思います。平成28年分の扶養控除等申告書には、マイナンバーの記載欄が新しく設けられています。ところが扶養控除等申告書提出時点で、番号通知カードが手元に届いていないケースが多く、現時点では記入できないというケースも多くあるようです。
 なお、扶養控除等申告書については、税務署長から提出を求められた場合を除き、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要があります。つまり、平成28年分の扶養控除等申告書であれば、平成36年1月10日までの保存義務があります。
 扶養控除等申告書は、マイナンバーが記載された書類であることから、安全管理措置を講じた上で、保存期間が経過した後、廃棄またはマスキングなどが要求されており、その負担が懸念されていました。マイナンバーの記載がなくても扶養控除等申告書は、個人情報が記載された書類であるため安全管理措置を講じるのは当然ですが、保存期間が過ぎた時点での廃棄となると負担となってしまいます。

国税庁FAQ

 平成27年10月28日に更新された国税庁のマイナンバーに関するFAQの源泉所得税に関するFAQ1-9で、下記の内容が公表されています。

給与支払者と従業員との間での合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に「個人番号については給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」旨を記載した上で、給与支払者において、既に提供を受けている従業員等の個人番号を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養等控除申告書の提出時に従業員等の個人番号の記載をなくして差し支えありません。

原則的な処理としては、平成28年分以降の扶養控除等申告書には、本人と扶養家族のマイナンバーを記載すべきですが、長期にわたり保管する書類の安全管理措置への対応の負担軽減を図るための取扱だとのことです。 マイナンバーを預かり一つのファイルにしておき、必要に応じて確認できるようにしておけば、安全管理措置や廃棄が必要な書類を集約できるので、管理が行いやすくなります。
なお、国税庁のFAQは、国税庁のFAQにあります。

 先に紹介したFAQは10月28日更新のものですが、執筆時点では11月10日更新と、頻繁に更新されています。国税庁のFAQは、事業者の負担に配慮した形の運用がなされており、非常に参考になります。ぜひ、ご一読ください。

承継の対象となる会社の株式

 会社の株式については、後継者が定まっている場合には、後継者に株式を移動していくことになります。
 株式の特徴は、業績によって、株式の評価額が変動することです。例えば、災害などにより大きな損失が計上された場合は、株式の評価額が極端に下がりますし、含み損のある固定資産の売却、退職金の支払いなどでも株式の評価額が下がります。一方で、業績が良い状況が続けば、株式の評価額はどんどん増加します。
 業績が悪い時、例えば株式の評価額がゼロに近い時に、後継者が決まっているのなら、株式を後継者にまとめて移動させることも可能です。
 業績が良く一度に株式を移動できない場合には、贈与税の税率が低いところで、贈与をしていくとか、これからも更に株式の評価額が大きく上昇することが見込めるなら、相続時精算課税を利用するなどの方法もあります。また、条件にマッチするようであれば、事業承継税制の適用を検討することも考えられます。

不動産

 土地については、小規模宅地の評価減を利用することで、80%引きの評価になる場合があります。事業用で400平米まで、自宅用で330平米までが、それぞれ評価減の対象になります。事業用については、同族会社に貸している事業用宅地なども該当する場合がありますので、可能な限り小規模宅地の評価減が受けられるような体制づくりをすることがポイントとなります。
 建物については、利用していないものがある場合は、取り壊してしまうことで、建物の評価額をゼロにし、かつ、取り壊しに要する資金分の相続財産を減少させることになります。また、貸すことができるのなら賃貸することで、貸家としての評価となり、わずかですが、評価額を下げる効果が期待できます。 

現預金・有価証券等

 基本的に、現預金については、相続税が課税されたとしても、支払いに充てることができるので、無理に減少させる必要はないと考えます。また、事業を行っていくうえで、現預金をある程度保有していることは重要ですし、事業承継後の自分の老後の資金としても、一定額は持っておきたいものです。有価証券についても、上場株式や国債などであれば、すぐに換金できる点と、評価する上で微妙に現預金より有利になることがあるので、現預金をある程度保有しているのであれば、有価証券のままで保有するのがよいと考えます。一方で、換金しにくい非上場の株式であれば、保有割合で評価額が小さくなる場合があるので、贈与などで、分散させてしまうことが非常に有効な対策となる場合があります。
 事業者の場合には、手元の現金を減少させる相続税対策は、あまりお勧めとは思いませんが、現預金があまりに多額にあるという場合は、保険金の非課税枠があるのなら保険への置き換え、相続税率より低い税率での贈与などは、検討してよいと思います。また、緊急の相続税対策としては、孫などへの教育資金の一括贈与などは効果的です。

 相続税対策については、何が相続税の主な原因なのかを明らかにして、その資産の特性に応じた対策が必要となります。

 

事業承継の出口戦略

 事業承継というと、相続税のことを連想されるかもしれませんが、現状では後継者がいないことの問題の方が事例としては数が多いようです。
 事業がイマイチで、将来性も乏しく、後継者がいない場合は廃業を検討するということになります。廃業は、一見簡単そうにみえますが、意外と難しい部分があります。事業資金を会社が借りている場合には、返済を続けるためには事業を継続する必要があるとか、働ける間は少しでも収入が継続するほうがよいとか、計画的に事業規模を縮小というのも現実的には思い通りにいかないなどです。つまり、事業を承継しない場合でも、計画と対策は必要になるということになります。
 事業がうまくいっている場合で、後継者がいない場合は、時間があるようであれば後継者を探す・育てるということになります。一方で、時間がない場合などは、M&Aなどの検討も必要です。中小企業にはM&Aは無関係と思っている経営者も多いようですが、思いの外M&Aがマッチする場合もあります。
 理想的なパターンは事業が順調で、株式の評価額も高いというケースです。このような場合に、経営者の相続人が事業を承継しないのに株式を相続する形よりも、相続前にM&Aで換金してしまうのが有効です。M&Aで株式を譲渡した場合は、利益に対して概ね20%の課税ですから、税負担としては重くなく、事業用の不動産・人材などを含めた事業をキャッシュに換えるという出口戦略です。
 事業を、それなりにまとまったキャッシュに換えることができるのは、かなりハッピーな方で、多くの中小企業のM&Aでは、非常に安価に株式を譲るということも検討する必要があります。もともと、株式の評価額が高くない場合には、当然に高い金額で買い取ってもらうことはできないでしょう。しかし、事業に魅力がある場合や、特殊な技術を持つ会社の場合には、M&Aに応じてもよいという会社が現れる可能性があります。株式を安価に譲ってメリットがあるのかと疑問に思われるかもしれませんが、従業員の雇用を守る、会社の持つ技術を次世代に承継させること、会社そのものが存続することなど、それなりの効果は期待できます。

後継者が決まっている場合の基本戦略

 後継者が決まっている場合の事業承継は、株式を、どんなタイミングで、どのように後継者へ移転させるかを検討する必要があります。
 親から子への事業承継であれば、株式が低い時に贈与を行うなど、事業承継と相続税対策を一度に行うことが可能ですし、基本的な戦略と位置づけられます。
 一方で、後継者が子でない場合などは、株式を贈与するというケースは少なく、適正な金額で買い取ってもらうという方向になりがちです。この場合に、株式の評価が高すぎて、後継者がとても買い取れないような場合は、会社に自己株式として買い取ってもらい、純資産額を圧縮した上で、後継者に株式を買い取ってもらうなどの準備が必要になります。
 また、相続税の負担が重い場合には、事業承継税制の適用についての検討も必要となります。
 事業承継というと、税金対策というイメージが強いかもしれませんが、その前に、方向性というか全体像を考えてみることがより重要となります。

 

タワーマンション節税とは

 一般の新聞などでも紹介されているので、耳にされた方も多いと思いますが、タワーマンション節税と呼ばれる節税手法が 、ここ数年、注目されてきました。
 簡単に説明すると、タワーマンションの高層階などを購入すると、実際に売買される価格と、相続税の評価額で大きな差額 が出るので、相続税対策のためにタワーマンションを数億円で購入しても、相続税の評価額は数千万円となり、結果として相 続税が節税できるというものです。問題となるのは、相続税は低く評価されたとしても、実際に処分すれば購入した時点と概ね同じ金額で売買できてしまうので、相続税だけ有利になるという特徴があります。

タワーマンション節税は安全な方法なのか

 さて、相続税が大きく有利になると報道されたタワーマンション節税ですが、安全な手法なのかというと、決して安全では ありません。税理士の業界では、平成23年7月に、タワーマンション節税が否認された裁決があるので、絶対に安全な方法 ではないというのが一般的な解釈です。また、裁決にはいたらなくても、タワーマンション節税を実施したところ、税務署から修正申告を求められるという事案は多くあると思われます。
 なお、今年の7月に「タワーマンション節税に関する規制がパブリックコメントに」という報道がありましたが、現段階ではパブリックコメントに付されていません。現実に、住宅として利用している場合や、節税目的でない取得の場合への対応など、通達での線引きが難しい部分がありますし、通達を参考に抜け道を探すことなども考えられるので、意外と難しいのかもしれません。
 タワーマンション節税は、財産評価基本通達による評価が実際の取引価格に比べて低くなることに原因があるのですが、財産評価基本通達6では、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」という取扱があり、実務は著しく不適当であることを根拠に運用されているようです。

最近の相続

 タワーマンション節税の話から内容が変わります。今年になって亡くなった方の相続税から基礎控除が小さくなりました。
 実際、従来の年に比べて随分と相続税の仕事が増加したという感覚があります。そして、金額的にも基礎控除が小さくなったことによって、申告義務が発生しているという案件が多いように感じます。
 相続税の申告が必要となるのは、遺産総額から債務額などを控除した金額が、基礎控除を超える場合です。なお、申告義務はあるけれども、配偶者の税額軽減や小規模宅地の評価減を受けることで、結果として相続税がかからないケースもあります。
 従来は、相続税がかかる人はごく僅かというイメージでしたが、今年の相続を見ていると、思いの外、相続税の申告が必要な人が増えているように感じます。都心で、貸家をもっているケース、首都圏で農地を持っているケースなどでは、相続税がかかるか否かについて、ぜひご検討ください。同じ金額を支払うにしても、納税額が100万円を超えることが多いので、予想しているのと予想していないのでは、大きな違いです。

◆新たに必要となる書類

 平成28年1月以後に支払う給与などから、国外親族に係る扶養控除、配偶者控除などの適用を受ける場合は、会社に「給与所得の扶養控除等(異動)申告書」を提出する際に、その国外居住親族に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」を提出または掲示しなければならないこととされました。なお、送金関係書類については、送金の事実の確認が必要となるため、扶養控除等申告書を提出する際ではなく、年末調整を行う時に提出又は提示となります。
 また、確定申告において、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合は、確定申告書に「親族関係書類」及び「送金関係書類」を添付または提示しなければならないことになりました。

◆親族関係書類とは

  親族関係書類とは、下記のいずれかの書類で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものとなります。なお、その書類が外国語で作成されている場合には、その翻訳文も必要になります。

  1. 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族のパスポートの写し
  2. 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)

 なお、1を見て気づかれた方もいらっしゃるかと思いますが、外国人の方だけが対象になるわけではなく、日本人の方で、子供が長期留学などをしている場合にも必要になります。

◆送金関係書類とは

 送金関係書類とは、下記の書類で、居住者がその年に国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、行ったことを明らかにするものをいいます。

  1. 金融機関の書類又は写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類。こちらも、外国語で記載されている場合は、その翻訳が必要となります。
  2. クレジットカード会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード会社のカードで、国外居住親族が商品
    を購入したことなどにより、その商品購入代金相当額の金銭をその居住者から受領していることを明らかにする書類。

 なお、実務的な視点からは、金額の基準が気になるところですが、国税庁のQ&Aでは金額基準を公表していません。また、生活費又は教育費に充てるための支払いを都度、各人に行っていることが要件とされているため、複数年分を送金している場合は、送金した年度でしか送金関係書類に該当しないことになるので注意が必要です。
 送金手数料がもったいないので、直接手渡しをしているという話を耳にすることがあります。国税庁Q&Aでは、手渡しの場合は、送金関係書類がないため扶養控除等を適用することができないとしているので注意が必要です。

 

◆電気通信利用役務に関する取扱の概要

 平成27年10月1日より、電気通信利用役務について、内外判定について取扱が変更となり、それに伴い新しい課税方式が導入されました。

1、内外判定の取扱の変更
 消費税は、国内の取引に対して課税される仕組みとなっており、内外判定とは、その取引が、国外取引に当たるのか、国内取引に当たるのかの判定を行うことをいいます。平成27年度税制改正では、インターネットを通じた電子書籍・音楽・映画などのダウンロードサービスや、クラウドサービスなどを「電気通信利用役務」と分類し、その内外判定については、サービスを行う者の住所から、サービスを受ける者の住所で判定するとの改正を行いました。
 具体的には、国外のアマゾンから電子書籍をダウンロードする場合に、従来はサービスを行う者の住所地で判定したため、日本の消費税は無関係でした。しかし、改正後は、サービスを受ける者の住所地で判定することになり、日本の法人がダウンロードを行う場合には国内取引として、日本の消費税が課税されることになりました。

2、課税方式
 日本でサービスを受けていれば、その電気通信利用役務の提供を国外の事業者が行っている場合に、日本の消費税が課税されることになりました。現実問題として、国外の事業者が行うサービスについて、どのように日本の消費税を課税するのかという問題が生じます。
 具体的な課税方式として、電気通信利用役務を事業者向けサービスと消費者向けサービスに分類し、事業者向けの電気通信利用役務についてはリバースチャージ方式、消費者向けの電気通信利用役務については国外事業者申告納税方式という2つの課税方式を用意しました。

国外事業者に対する課税の限界

 事業者向けの電気通信利用役務については、サービスを受ける事業者に、納税義務を転嫁するリバースチャージ方式を採用することで、国外事業者が行う課税取引について、理論上は課税できる仕組みとしました。
 一方で、消費者向けの電気通信利用役務は、消費税の納税義務のない消費者に納税義務を転嫁するわけにはいかないため、リバースチャージ方式は採用できません。そこで、国外事業者が申告を行う形としました。しかし、国外の事業者が日本の消費税を納税することが担保されないままで、仕入税額控除を認めるわけにいきません。そこで、当分の間は、国内事業者が国外事業者から提供を受けた消費者向け電気通信利用役務の提供については、仕入税額控除の適用を認めないことにしました。
 ただし、国外事業者が日本の消費税を納税している場合にまで、仕入税額控除を認めないのでは、消費税の仕組みとして問題が残ります。そこで、「登録国外事業者」から受けた、消費者向け電気通信利用役務については、登録番号が記載された請求書等の保存を要件に仕入税額控除を認める取扱としています。
 「登録国外事業者」が10月1日に公表されました。

 アマゾンやドロップボックスなど馴染みにある会社が登録されています。消費者向け電気通信利用役務の提供を国外事業者から受ける場合には、類似のサービスがある場合は、登録国外事業者からサービスを受ける方が、仕入税額控除が受けられるので有利になります。電気通信利用役務の提供を受けている場合には、ぜひご検討ください。

法人地方税の予定納税については注意が必要

 お客さんの法人税、消費税、法人地方税などの予定納税の納付書の作成を行うことがあります。基本的には、国税である法人税や消費税は、予定納税の納付書に金額が印字済みなので、間違うことはありません。一方で、法人地方税の予定納税については、金額が印字した状態で納付書が届く場合もあれば、金額の印字がない納付書のケースもあり、地方自治体によって、全く異なる状況です。
 金額の印字がない場合ですが、通常は概ね前年の2分の1となるので、それほど間違いも多くはないのですが、平成26年10月1日以後に開始する最初の事業年度または連結事業年度の予定申告についての予定納税は、以前にご紹介した地方法人
税の創設の影響で、単純に前年の金額の2分の1ということにはならないので、注意が必要です。
 なお、地方法人税については、こちらを、ご参照ください。

予定納税の額の計算方法

 平成26年10月1日以後に開始する最初の事業年度または連結事業年度の予定申告について、具体的な法人地方税の予定納税の額の計算方法は、下記のとおりとなります。

法人事業税
前事業年度の法人事業税額÷前事業年度の月数×7.5
地方法人特別税
前事業年度の地方法人特別税÷前事業年度の月数×4
都道府県民税法人税割額
前事業年度の都道府県民税法人税割額×3.8÷前事業年度の月数
市町村民税法人税割額
前事業年度の市町村民税法人税割×4.7÷前事業年度の月数


 ちなみに、均等割額については、従来通り、全事業年度の概ね2分の1の金額となります。

日常的な予定納税の計算の際の注意点

 予定納税のお話をしたついでに、予定納税の計算で間違いやすい取り扱いについてご紹介します。上記で概ね2分の1という書き方をさせていただいたのは、ちょうど2分の1にならないケースがあるからです。上記の計算式で、「割って掛ける」計算式と「掛けて割る」計算式と二パターンの種類があった点にお気づきでしょうか。例えば、昨年の税額が444,400円だった場合に、単純に2分の1であれば、222,200円となります。ところが、「割って掛ける」計算をすると下記のようになります。

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 このように割り切れない数字になるのですが、税額の計算は100円未満切り捨てとなるので、222,100円となります。つまり、単純に2分の1で計算した場合と、計算結果が異なるケースが出てくるのです。ちなみに、前年の税額が10万円の場合でも、50万円の場合でも、上記の計算式に当てはめると、2分の1の金額にはなりません。意外と、よくあるパターンなので気にしておく必要があります。
 逆に、「掛けて割る」パターンの場合は、2分の1の金額となります。

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 実務では、「掛けて割る」パターンの方が少数派で、予定納税で間違いやすい事例です。国税である法人税や消費税も「割って掛ける」計算式となります。単純に2分の1で計算して、100円多く支払ってしまうという間違いはありがちですので注意が必要です。

 

日本型軽減税率制度の全体像

 日本型軽減税率制度では、消費者は、いったん10%を含む価格で代金を支払い、その場で2%相当部分の還付ポイントを取得する仕組みとなります。還付ポイントは、日本型軽減税率の運用のために必要な事務を行う「還付ポイント蓄積センター」で集計され、一定の限度額を設けて、その支出を行った個人の口座に還付されるという形で運用されます。
 還付ポイントは、マイナンバーが記された「マイナンバーカード」を、軽減税率の対象品を購入した際にレジにかざすことで、還付ポイント蓄積センターに蓄積される仕組みとなります。
 なお、マイナンバーカードには、マイナンバー、氏名、住所、生年月日、性別などの個人情報が含まれていますが、これらの情報を引き出すにはパスワードが必要で、購入先の店舗に個人情報が自動的に流れるという心配はありません。マイナンバーカードから、読み取りが行われるのは、公的個人認証用の「符号」のみと説明されています。
 実際の還付手続は、還付手続のためのポータルサイトを利用して行うことが計画されています。

 還付ポイントの対象品目は、酒類を除く飲食料品で外食サービスを含むとされています。

 還付金額については、上限を設けることとされており、マスコミの報道などでは、1人当たり4,000円あるいは5,000円とされており、年間20~25万円の飲食費に対応する消費税部分となっています。なお、与党税調の資料では、信頼できる統計に基づく算式をもって決める方向で検討としており、金額面については流動的です。

実現可能性について

 与党税調の資料では、施行時期は、「マイナンバーカード」の普及の見通し、政府のセキュリティに係る取り組み、事業者の準備スケジュール、行政実務の準備スケジュールを見極めながら検討と書かれており、消費税率が10%に引上げられる平 成29年4月からとは、考えていないように読み取れます。
 一方で、還付ポイント蓄積センターは、独立した機構や建物ではなくサーバーという説明がなされており、妙にリアリティ があるのも事実です。
 政府が公表しているマイナンバー制度利活用推進ロードマップ案によれば、平成30年には、個人番号カードに、運転免許証、健康保険証などの機能を持たせることも検討されており、マイナンバーカードの利用促進にも役立つので、意外に早い導入となることも考えられます。

消費税率10%引き上げ時に対応

 将来的に、日本型軽減税率制度の導入が行われる可能性はさておき、平成29年4月に10%に引上げられる消費税率に対する軽減税率はどうなるのでしょうか。日本型軽減税率制度の根本は、事業者に負担をかけない、いったんは標準税率で販売するという部分が特徴であり強みですから、従来型の軽減税率の形式は採用しないと考えるのが、合理的です。
 食料品の購入実績に基づいて還付ポイントを集計するものの1人当たりの上限額を設けて還付をするということは、結果として多くの納税者には上限額が還付されることになります。考えようによっては、定額給付と同じ結果になるようにも思えます。与党税調の資料を見ると、日本型軽減税率の説明の前に、諸外国の税制を活用した給付措置の説明をしているので、とり
あえずは、定額給付、あるいは給付付税額控除制度という形で、軽減税率の代替とする可能性が高そうです。

 

住所地に住んでいない場合のマイナンバーの入手

 来月以降、個人番号を記載した通知カードは、原則として住所地に送られてくることになっています。やむを得ない場合には、住所地ではなく実際に住んでいる場所で受け取ることができるとの取扱があります。やむを得ない場合とは、東日本大震災で避難しているケース、長期入院していて家族がいない場合などです。本人の住所地のある市区町村に申請書を提出するこ
とになります。なお、提出期限は平成27年9月25日までとなっています。不明な点は、ご自分の住民票がある市区町村へお尋ねください。

◆安全管理措置について

 マイナンバーについては、適切な安全管理措置が必要とされています。この点については、中小企業の場合は、不必要なデ ータは極力持たないという考え方も一つの解決策です。
 例えば、年末調整に関する事務は税理士事務所に依頼し、社会保険関係の手続は社会保険労務士に任せるということであれば、社内でマイナンバーとひも付けにしたデータを、保有する必要がありません。つまり、パソコン等への入力は不要になります。従業員や取引先からマイナンバーを取得したら、そのまま税理士事務所や社会保険労務士事務所に預けてしまい、完成した書類が届いたら従業員に配布するものは配布して、保存義務があるものは年度ごとにわけて、鍵付きのロッカーへ保管するというような対応でもそれほど問題がありません。保管期限が切れたものを、廃棄しやすいように年度と内容物は明記して封緘してしまうなどの手法も考えられます。多くの場合は、税務調査のときなどにしか見ることはない書類です。
 一方で、中小企業でも、年末調整や社会保険の事務を社内で行っている場合は、何らかの形で、従業員や取引先のマイナンバーを管理することが必要になります。小規模なら、リストを一枚作成するくらいでも大丈夫ですが、それなりの人数になるとコンピュータで管理する必要が生じると思われます。このような場合には、以前ご紹介している安全管理措置について具体的な検討を行う必要があるでしょう。

番号の取得と本人確認

 番号の取得と本人確認は、基本的には中小企業でも社内で行う必要があります。

 番号の写し間違い、記載間違いなどは、必然的に生じるミスですから、それなりの対策が必要です。番号にはチェックディ ジットという確認用の番号が付いているので、通常はマイナンバーを取り扱うソフトに入力する段階でエラーが発生して気づく仕組みになっています。ただ、番号間違いのものでもチェックをすり抜ける可能性もあるので、細心の注意が必要です。番号間違いを、防ぐためには、番号取得時に確実にチェックするなどの対応が必要です。従業員の提出する扶養控除等申告書については、従業員が記載するのが原則であり、扶養家族について会社で番号確認を行う義務はありません。しかし、記載のミスがあると業務が滞ることになるので、安全管理措置を講じたうえで、従業員の家族の通知カードの写しを提出する仕組みとすることも一つの方法です。特定個人情報保護委員会が公表しているQ&A6-2-2で、記載が正しいことの確認のために、扶養家族の通知カードのコピーを取得してよいとの回答があります。
 通常は会社が行うべきとされている番号の収集については、外部へ委託することも可能であり、マイナンバー制度に関する番号収集代行サービスなども、多くの広告がみられます。中小企業などでは、よくわからないからと、税理士事務所へ委託するなどのケースもあるでしょう。外部へ委託する場合は、書面や電子メールで行う本人確認のように対面しない場合に必要とされる、個人番号がわかる書類と写真付きの身分証明書のコピーを収集して委託先へ渡す場合と、書類の収集そのものから委託する場合とが考えられます。中小企業の場合であれば、書類の収集までは会社で行い、その後の処理について外部へ委託するなどの方法が現実的だと思われます。
 マイナンバー制度自体が新しい制度なので、多くの書籍が出版されていますが、どうしてもゼロからの説明になりますし、新しい情報が次から次へと出てきているのが現状です。不明な点がある場合には、難しく考えずに、関与している税理士や社会保険労務士など、マイナンバーを記載する事務に関わる専門家に質問してみるのがよいと思います。

 

本人確認の手法と確認した資料の取扱い

 マイナンバーを従業員や取引先から入手する際に、本人確認が必要となります。中小企業などでは、対面による本人確認を行うことが多いと思われます。また、不動産の使用料などの支払調書を作成する為に、家主のマイナンバーが必要となりますが、このような場合には、郵便やメールなどの手法によってマイナンバーの取得と本人確認作業を行うことになります。
 本人確認は、対面による場合でも、郵送やメールによる場合でも、確認すべき書類は基本的には同じです。
 なお、本人確認の際に、確認した書類は必ずしも保存義務がないので、その後の安全管理措置を考慮すると預からないというのが、手間がかからないように思います。もちろん、安全管理措置を講ずることを前提に、写しを保管しておくことも認められます。
 なお、本人確認は番号法で求められている作業であるため、本人確認書類の写しをとらない場合でも、どのような書類によって、本人確認を行ったかは、記録しておくとよいと思います。

◆どのような書類によって本人確認を行うか

 本人確認については、番号の確認と身元確認という2つのステップがあります。

①番号の確認
 番号の確認は、基本的には、番号通知カードか、個人番号カードによって、番号を確認します。番号通知カードを紛失している場合で、個人番号カードを入手していない場合などは、個人番号が記載された住民票を取得してもらい、その住民票によって番号を確認することになります。

②身元確認
 身元(実在)の確認については、通常は運転免許証かパスポートなど顔写真付きの証明書によって行います。
 
 運転免許証もパスポートも持っていない場合には、在留カード、運転経歴証明書、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、特別永住者証明書、あるいは、これらに類する書類で写真が表示されているもので、個人番号利用事務実施者が適当と認めるもので身元確認を行うことが認められています。個人番号利用事務実施者は、行政機関のことであり、税に関する分野に関しては、国税庁告示として、写真付き学生証、写真付き身分証明書、写真付き社員証、写真付き資格証明書などを例示として公表しています。
 写真付きの証明書がない場合は、以下の書類2つ以上によって、身元確認を行います。

ア.公的医療保険の被保険者証、年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書等
イ.官公署又は個人番号利用事務実施者・個人番号関係事務実施者から発行・発給された書類その他これに類する書類で、個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの

 国税庁が告示として公表しているものは、学生証(写真なし)、身分証明証(写真なし)、社員証(写真なし)、資格証明書(写真なし)(生活保護受給者証、恩給等の証書等)、国税・地方税・社会保険料・公共料金の領収書、納税証明書、印鑑登録証明書などです。

個人番号の提供が受けられない場合の取扱い

 マイナンバーについては、大切な番号なので安易に教えてはならないということを誤解して、会社が番号の提供を求めても教えてもらえないケースが考えられます。また、自分の所得が税務署に筒抜けになることを嫌い、敢えて非協力的な対応をするような取引先が存在することも想定されます。研修会などでは、「教えてもらえない場合はどうすれば?」は定番の質問となっています。国税庁のFAQでは、下記のような解説があります。
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 できるだけ番号を提供するよう求め、それでも提供を受けられない場合は、経過を記録しておくことが必要とのことです。
なお、マイナンバーの記載が必要な書類に、マイナンバーを記載しないという実務は避けた方がよいでしょう。マイナンバー制度を軌道に乗せるということが当面の目標ですから、マイナンバーの未記載などは、税務調査の呼び水になる可能性が想定されます。

 

なぜ、本人確認が重要なのか

 マイナンバー制度の導入に関連して、マイナンバーの安全管理措置について注目されています。しかしながら、現実的には、多くの中小企業でも、個人情報については大切に扱っているはずですし、書類等が盗まれたりしないように配慮は行っているはずです。その意味では、従来からの個人情報や書類や電子データを安全に扱うという、当たり前のことの延長線上にあります。廃棄に関する取扱いが今までになかった部分でしょうか。
 また、マイナンバーを書類に記載するという作業は、記載項目が一つ増え、記載あるいは入力箇所が少し増加するだけのことであり、本質的に新たな作業が生じるということではありません。
 一方で、本人確認という作業は、企業が本人からマイナンバーを取得する際に、その本人がマイナンバーの正式な持ち主である事を確認する作業であり、今までにない新たな仕事という側面があります。
 なぜ、本人確認が重要なのかというと、マイナンバーに、その個人の情報が集約されることで、初めて行政の効率化に繋がるからです。仮に、マイナンバー制度を導入しても、本人確認がいい加減に行われれば、仕事をしていない他人のマイナンバーを利用して、所得税を逃れるなどの不正が可能となってしまいます。つまり、マイナンバー制度の根幹を支えるのが、本人確認という作業になります。

マイナンバーの通知と個人番号カード

 平成27年10月から、住所地にマイナンバーの通知カードが送付される予定になっています。例えば、マイナンバーの通知カードでは、「法人太郎」さんのマイナンバーが、「123456789012」であることは確認が可能です。しかし、マイナンバーの通知カードを持参している人が「法人太郎」さんであることが確認できません。
 どのように確認を行えばよいかというと、「法人太郎」さんの免許証やパスポートなど顔写真付の公的な証明書で、持参している人が「法人太郎」さんであることを確認します。そして、このような作業のことを「本人確認」と呼びます。
 ところが、免許証もパスポートも持っていないという人も多くいます。そこで、平成28年1月以降、本人が希望すれば「個人番号カード」を住所地の自治体が無料で発行してくれるという取扱があります。個人番号カードは、表面が顔写真付の身分証明書になっており、公的な身分証明書としての性格を持っています。また、裏面は個人番号が記載されています。よって
、個人番号カードがあれば、裏面でマイナンバーの確認、表面で本人確認と、一枚でマイナンバーと本人確認が行えるようになっています。

実務上の本人確認作業

 実務的な視点で考えると、本人確認をスムーズに行うには、従業員に個人番号カードを取得してもらうのが有効です。しかしながら、従業員や雇用予定者などが、必ずしも個人番号カードを取得しているとは限りません。そこで、個人番号カードを取得していない場合や、面談できない場合にどのように本人確認を行うかなどについて、事前に想定しておくことが必要とな
ります。
 次回は、企業が実際に行う本人確認の方法についてご紹介していきます。

 

人的安全管理措置

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 人的安全管理措置については、本則的な取扱と中小事業者の取扱で差異がありません。これは、事業者が取扱担当者の監督と教育を行うという極めて常識的な内容だからです。

物的安全管理措置

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 特定個人情報のために区域を新たに設けることは中小事業者にとって現実的ではないという質問がよくあります。例えば、ワンルームマンションの一室を事務所にしているような場合であれば、来客スペースと執務スペースを区分していれば、執務スペースが管理区域であり取扱区域に該当し、来客スペースから特定個人情報がみえないようなレイアウトをしておけば大丈夫ではないかと思われます。会社の備品が盗難に遭わないようにすることは当然ですし、個人情報が来客者の目に付かないようにしておくことも当然のことですから、区域の管理と盗難防止については、常識的な対応で問題ないと考えられます。
 特定個人情報を持ち出す場合の具体例として、年末調整の際や社会保険の手続の関係で、税理士事務所や社会保険労務士事務所に書類を郵送する場合は、書留などの追跡可能な手段を取る、USBメモリーなど電子データで持ち運ぶときはパスワードを設定するなどの配慮を行う必要があります。
 なお、実務上、負担が増えると思われるのは、必要なくなった特定個人情報の廃棄です。特定個人情報は番号法で必要とされる事務を行う場合に限り保管ができる取扱になっています。例えば、年末調整で利用する扶養控除等申告書は、所得税法上7年間の保存義務があるので、7年間は保存が必要ですが、その期間を経過した時点で廃棄が必要になります。

技術的安全管理措置

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 中小事業者の場合は、ウイルス対策ソフトを最新の状態にしておくこと、メールに添付で特定個人情報を送付する場合にパスワードを設定すること、特定個人情報を扱うパソコンを限定してログインのパスワードを設定しておくなどの対応となります。  中小事業者に該当しない場合は、組織的安全管理措置でシステムログが要求されていることなども踏まえ、ある程度のシステムの更新が必要になります。  安全管理措置については、ここまでで、一通りとなりますが、中小事業者に該当する場合は、ある程度常識的な管理をしていれば、極端に難しい要求ではないように思います。対策をしなくてよいということではありませんが、過度に難しく考える必要はなさそうです。一方、中小事業者に該当しない場合には、計画的な対応が必要になると思われます。

マイナンバーのための安全管理措置の基本

  マイナンバーを扱う事業者の安全管理措置については、特定個人情報保護委員会が公表しているガイドラインで詳細に定められています。
 番号法そのものでは、詳細な安全管理措置についての定めがありません。番号法では、特定個人情報保護委員会が、国民生活にとっての個人番号その他の特定個人情報の有用性に配慮しつつ、その適正な取扱いを確保するために必要な個人番号利用事務等実施者に対する指導及び助言その他の措置を講ずることを任務とすると定めており、ガイドラインが委員会によって公表されています。
 前回、ご紹介したように、安全管理措置には、原則的な取扱いと中小事業者向けの取扱いとで区別を設けています。まずは、基本方針と取扱規程についてです。

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 基本方針については、中小事業者に該当してもしなくても、策定することは強制されていません。しかし、従業員などに、特定個人情報をどのように取り扱うべきかについて、明確にすることができるので、作成することが望ましいでしょう。
 取扱規程は中小事業者に該当しない場合は、必ず作成が必要となります。また、中小事業者に該当する場合は、取扱規程の作成義務はありません。ただし、お客さんとお話をしていると、何も作成しないと、余計にわからなくなるので、サンプルがあれば参考にして、取扱規程を作成したいというお話もよく聞きます。

組織的安全管理措置

 特定個人情報保護委員会が公表しているガイドラインによれば、組織的安全管理措置について、本則の取扱いと中小事業者の取扱いを比較すると下記のとおりです。

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  組織的安全管理措置については、全ての項目で、中小事業者に簡素な取扱が認められており、責任者を決めること、取扱状況を記録しておくこと、何かあった場合に責任者に報告される仕組みを作っておくこと、定期的な点検と、それほど難しい内容ではありません。一般企業が、マイナンバーを取り扱うのは、当面は、年末調整関係、社会保険関係、労働保険関係の書類の作成に限定されますので、それらの業務に関係する人が事務取扱担当者、それらの担当者の統括者が責任者と思っておけばよいでしょう。事務員1人というようなケースなら、事務員が事務取扱担当者、社長が責任者という形になります。
 中小事業者に該当しない場合は、マイナンバーの取扱について、利用実績を記録して、さらに取扱状況を確認する手段が必要となるので、コンピュータシステムに頼ることになると思われます。
 なお、ボリュームの関係で、次回に続きます。

 

マイナンバーの罰則規定

 マイナンバーに関する法律は、正式には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」ですが、長いので番号法と記載します。
 昨年、大手企業が個人情報を流出して話題になり、今年の6月にも日本年金機構の個人情報の流出が話題になりました。報道の扱われ方からも、個人情報に対する関心の高さが伺われます。
 番号法では、個人情報利用事務等に従事する者が、正当な理由無く、特定個人情報ファイルを提供した場合には、4年以下の懲役又は200万円以下の罰金、又は、その併科と規定しています。企業で、従業員の不正による番号の漏洩があった場合には、企業イメージを毀損するだけでなく、懲役などの実刑判決にも繋がる可能性があります。

マイナンバーの取扱いに求められる安全管理措置

 マイナンバーは、その制度の性格上、非常に取扱いを慎重に行う必要があります。税金や社会保険の手続のために、会社に入社した場合には、マイナンバーを会社に伝える必要がありますし、不動産を賃貸する場合や、源泉徴収の対象となる報酬を受け取る場合には、支払調書作成のために、支払いをする相手方に自分のマイナンバーを伝える必要があります。つまり、パスワードのように秘匿されるものではありませんが、法律の定めがある場合には伝えることが必要な番号です。一方で、安全にマイナンバー制度が運営されるためには、なりすましなど悪意を持った者による犯罪に備えるため、マイナンバーを扱う者には、安全管理措置が要求されています。
 安全管理措置の大まかな体系としては、下記のとおりとなります。

 ①組織的安全管理  事務取扱者及び責任者の明確化
 ②物理的安全管理  特定個人情報を取り扱う区域の管理等
 ③技術的安全管理  情報システムの管理等
 ④人的安全管理  事務取扱担当者の監督・教育

 詳しい説明は、各論の話しとなるので、次回以降とします。簡単に説明すると、①会社としての仕組み作り、②マイナンバーを取り扱う場所や保管方法について、③パソコン等による管理を行う場合のルール、④マイナンバーを取り扱う者の教育と監督について、マイナンバーが適切に管理できるようにしてくださいという内容です。

安全管理措置の中小規模事業者に対する特例

 番号法では、重い罰則規定があり、安全管理措置についても細かな定めを置いています。ただし、中小企業に、大企業と同じルールを適用することは、現実的ではありません。そこで、安全管理措置については、中小事業者に対する特例を設けることで実務への配慮がされています。

 番号法における中小企業とは、事業者のうち従業員の数が100人以下の事業者で、次に掲げる事業者を除く事業者をいいます。
  • 個人番号利用事務実施者(税務署、年金事務所、健康保険組合、ハローワークなど)
  • 委託に基づいて個人番号関係事務又は個人番号利用事務を業務として行う事業者(税理士事務所、社会保険労務士事務所など)
  • 金融分野の事業者(銀行、信用金庫、保険会社など)
  • 個人情報取扱事業者(国の機関、地方公共団体、独立行政法人など)

 マイナンバーに関して、中小事業者に該当する場合は、安全管理措置に関する取扱いが緩和されています。まずは、自分の会社が中小事業者に該当するのか否かの確認が必要です。従業員が100人以下でも、税理士事務所、社会保険労務士事務所、健康保険組合、信用金庫、信用組合などは、中小事業者から除かれることになります。
 なお、保険の代理店等が中小事業者に含まれるかは、微妙なところですが、保険会社で、代理店がマイナンバーを取り扱わない仕組みを模索しているとの話しを聞いたことがあります。
 自分の会社が中小事業者から除かれる業種でないか否かについても注意が必要です。
 次回は、安全管理措置について、原則的な取扱いと中小事業者向けの取扱いを比較してご紹介していきます。

 

マイナンバーの概要

 マイナンバーは、市区町村長が住民票を有する全ての者に対して指定する12桁の番号です。マイナンバーの通知は、今年の10月から始まり、市区町村から通知カードが郵送されてきます。
 マイナンバーは、住民票を有する全ての者に対して付与されるものであり、成人に限らず、赤ん坊にも割り振られることになります。実際に、確定申告、年末調整、社会保険の手続などの際に、扶養家族のマイナンバーを記入することになります。
 なお、マイナンバーは、原則として変更されません。しかし、漏洩などがあり、不正に使われるおそれがある場合に限り、本人の請求や市区町村の職権によって変更されることになります。
 また、マイナンバーは住民票を有する者に指定されるため、日本人でも海外に長く住んでいて、住民票を有しない場合には、マイナンバーが付されません。一方で、外国籍の方でも住民票がある長期の滞在者や特別永住者などにはマイナンバーが指定されることになります。

マイナンバーの利用の制限

 レンタルビデオ店などの会員になる際に、免許証のナンバーを書き写されること、あるいは、携帯電話を契約するにあたって免許証のコピーを取られることなどがあります。免許証が身分証明書の一つとして、民間企業で利用されている一例です。
 一生変更されることがないマイナンバーは、個人を特定して管理するには非常に便利に思えますが、民間企業でマイナンバーを利用することは認められていません。
 マイナンバーの利用が認められるのは、国や地方公共団体が、社会保障、税、災害対策の3つの分野で、さらに法律か条令で定められた手続でしか利用できないことになっています。

マイナンバーを大切にしなければならない理由

 会社に入社する場合に、社会保険の手続、扶養控除等申告書など、本人だけでなく家族のマイナンバーを記載することになります。また、学生時代にアルバイトを、10箇所で行えば、10箇所の会社に対してマイナンバーを提出することになります。あるいは、不動産のオーナーは、借り主に対して借り主が変更になる度に、支払調書に記載するためにマイナンバーの提出を求められる場合があります。
 一方で、マイナンバーは大切な番号なので、むやみに他人に提供することはできませんと一般的に説明されています。
 マイナンバー関係の研修会の際に、むやみに他人に教えてはならないのに、会社に提供しなければならないのは、矛盾しているのではないかという質問を受けることがあります。この点については、マイナンバー自体は、暗証番号とは異なり、秘匿する番号ではなく、必要に応じて提供する番号と理解してくださいと説明しています。
 民間企業が、税務署への支払調書の作成、年末調整及び社会保険の手続で、従業員のマイナンバーを提供してもらう必要があります。その場合でも、マイナンバーを従業員コードとして利用するなど、民間企業内での利用はできないことになっています。あくまでも、国や地方公共団体に対する手続を行うときのみに利用するということになります。
 マイナンバーが漏洩した場合に、必ずしも大きな被害に結び付くというわけでは、ありません。しかし、悪意を持った者が他人のマイナンバーを入手することで、「なりすまし」などの犯罪に繋がる可能性も考えられます。つまり、暗証番号のように秘匿すべき番号ではないものの、マイナンバーの制度を守るためには、大切に扱わなければならない番号と位置付ける必要があります。
 中小企業でも、従業員や家賃の支払先などのマイナンバーを入手する必要が生じます。民間企業が、他人から預かるマイナンバーをどのように管理していく必要があるのかについて、次回以降ご説明していきます。

 

通常は翌月10日が納期限

 従業員に給与を支払う際に、源泉所得税、復興特別所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険と多くの項目について、天引きすることになります。
 源泉所得税と復興所得税を給料から天引きする場合に、源泉徴収という言葉を用います。源泉徴収した、源泉所得税等は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納付が必要になります。
 個人住民税についても、事業主は特別徴収義務者として、全ての従業員について、個人住民税を特別徴収しなければならないこととなっており、給与から住民税を天引きする取扱いとなっています。そして、源泉所得税等と同様に翌月10日までに納付しなければなりません。
 なお、源泉所得税等の場合も住民税の場合も、翌月10日が土曜日、日曜日、または祝日の場合は、その翌営業日が納期限となります。

納期限の特例について

 源泉所得税等の場合でも住民税の場合でも、毎月、納付を行うことは、中小企業にとっては煩雑となります。そこで、半年分まとめて納付する納期の特例という取扱いがあります。源泉所得税等の場合でも住民税の場合でも、納期の特例を利用したい場合は、届出が必要になります。要件は、源泉所得税等及び住民税のいずれも、給与の支給人員が常時9人以下であることです。
 なお、源泉所得税等については、その年の1月から6月までに源泉徴収した源泉所得税等は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した源泉所得税等は翌年1月20日が、それぞれ納付期限になります。
 一方で、住民税の納期限は、6月分から11月分までが12月10日、12月分から翌年5月分までが翌年6月10日となっており、源泉所得税等の納期限と一か月ずれることになります。
 なお、納期の特例を利用する場合に、金融機関に行く回数は減少しますが、金額がまとまってしまうケースがありますので、資金繰りの計画に含めておくことが重要です。

源泉所得税等の納付と住民税の特別徴収に関する実務上の注意点

 源泉所得税等で、注意しなければいけないのは、不納付加算税の取扱いです。納期限までに支払いが間に合わなかった場合に、遅れた期間に応じて延滞税が発生しますが、延滞税は日割り計算されるために早い段階で気づけばそれほど大きな金額となりません。一方で、不納付加算税は、1日遅れただけでも5%の負担が生じてしまいます。仮に、納付すべき源泉税額が100万円の場合は、1日遅れただけで5万円の加算税が生じる可能性があります。不納付加算税が5%となるのは、自発的な納付で、かつ、税務調査による告知があることを予知した場合でないことが要件とされており、税務調査で発覚した場合などは10%の不納付加算税となり、さらに重い負担となります。
 なお、その直前1年間で納付が遅れたことがない源泉徴収義務者、初めて源泉徴収義務者となった場合で最初の納付の際に、納期限までに納付ができなかった場合で、期限後一か月以内に自主的に納付すれば、不納付加算税が課税されない取扱いがあります。
 特別徴収した住民税については、納期限を遅れると延滞金が課税される仕組みになっています。
 また、住民税については、源泉所得税等のように当月の給与の額によって金額が変動するわけではなく、前年の所得に基づいて、従業員の居住する市区町村から届く通知書に基づいて納付することになります。従業員が退職した場合などは、事由発生日の翌月10日までに「給与支払報告・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を提出する必要があります。この際に、通知書と同時に送付されてきた納付書に印字されている金額には退職者分も含んでいるので、退職者分を控除した金額に修正して納付することが必要になります。退職者分の住民税を、誤って納付し続けるというミスがありがちですので、お気をつけください。



秋には制度案を取りまとめる方向?

 税制改正大綱によれば、消費税の軽減税率制度については、平成29年度からの導入を目指すとされています。本当に平成29年度からの実施を行うためには、平成27年の秋には制度案を取りまとめ、平成28年度税制改正に間に合わせる必要が生じます。
 先月22日と27日に、与党税制協議会・消費税軽減税率制度検討委員会の会合が行われるなど着々と準備が進んでいるように見えました。ところが、6月10日になって、与党協議が行き詰まり、当面の間、開催を見送ると報道されました。
 昨年、与党税制協議会から報告書が公表され、こちらの税務関連情報でも、ご紹介しましたが、その時は、あらゆる可能性を紹介するというような漠然としたものでした。

 先月の会合の内容は、軽減税率の対象を「酒類を除く飲食料品」、「生鮮食品」、「精米」に絞って、どのような影響があるかが検討されており、より現実的な話題となっています。

5月に議論された内容

 この5月に議論された内容は、軽減税率の対象を3案に絞り込んでのものでしたが、論点をまとめると以下のようになります。

対象品経理方法長所短所
酒類を除く飲食料品インボイス方式
ただし3年程度は経過措置として請求書等を保存する方式
消費者の理解が得やすい財源に与える影響が大きい
生鮮品インボイス方式
ただし3年程度は経過措置として請求書等を保存する方式
同上同上
精米区分経理に対応した請求書等を保存する方式財源に与える影響が小さい消費者の理解が得にくい

 軽減税率の対象を、酒類を除く飲食料品とすれば、消費者の理解は得られやすいものの、財源に与える影響は大きく、何らかの形で代替財源が必要となります。
 軽減税率の対象を精米に限定すれば、財源に与える影響は少なく、インボイス方式を必ずしも必要としないのであれば実行可能性は高いかもしれません。一方で、消費者の理解を得られるのか否かで疑問が残ります。
 生鮮食品を軽減税率の対象とする場合は、両者の長所短所について折衷的な結果となります。しかし、生鮮食品より価格が安いとされる加工食品が一般税率、生鮮食品が軽減税率となるのは、逆進性で問題があるとの指摘もあります。また、生鮮食品の線引きなども、現実的には難しそうです。
 軽減税率の対象を精米のみとする場合以外は、インボイス方式の導入が不可欠とする方向のようです。インボイスとは法定記載事項が記載されている請求書のようなものと考えてください。3年程度は猶予期間を設けるようですが、インボイスを発行するためのシステムを導入する必要があるなど、インボイスの発行が必要な事業者にとっては負担が生じることに繋がります。

軽減税率の行方を予想すると

 大綱では、平成29年度からの導入を目指すとしていましたが、現状の雰囲気では、時間切れもあり得るのかもしれません。与党協議がまとまらなければ、結果として先送りとなる可能性があります。
 結局のところ、軽減税率を導入して不足する財源をどこから捻出するのか、言い方を変えれば、一般消費税率を引き上げる前提の話しができなければ、軽減税率の話しは先に進まないのかもしれません。消費税率10%への引き上げも先送りしている現状では、触れることが難しい話題で、先送りせざるを得ないのかもしれません。 

通達の改正

 平成27年3月10日の馬券の払戻金に対する最高裁判決を受けて、その数日後に、国税庁は「最高裁判所判決(馬券の払戻金に係る課税)の概要等について」という文書を公表し、通達を変更することを明らかにしていました。
 平成27年5月に変更後の通達が公表されたので、ご紹介します。

改正後改正前

(一時所得の例示)

34-1 次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。

  1. 懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)
  2. 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)

(注)

  1. 馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用して独自の条件設定と計算式に基いてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。
  2. 上記1.以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。

※ 以下は変更がないので省略

(一時所得の例示)

34-1 次に掲げるようなものに係る初頭は、一時所得に該当する。

  1. 懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)
  2. 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等

※ 以下は変更がないので省略

 通達の内容は、括弧書きと注意書きが追加される形で、基本的なスタンスには変化がありません。
 注意書きの内容は、①馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいて、②インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に、③個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして、④当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げていることを要件として、さらに結果として、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合としており、一時所得とならないケースは、かなり限定的な取扱いとみるべきです。

一方で納税者が負けている判決も

 最高裁判決では納税者が勝訴しましたが、平成27年5月14日の東京地裁判決では、納税者が敗訴しています。金額的には最高裁判決と同等かそれ以上だったそうですが、馬券の購入の仕方が「男性の馬券購入は一般的な愛好家と変わらない」として、請求を棄却したそうです。
 通達の規定ぶりからも、一時所得にならないケースの方が希であり、実務的には、難しい判断の局面が増えたようなイメージもあります。

通達変更の影響

 通達の改正は、今後の取扱いに影響すると同時に過去の取扱いにも影響があります。法律の変更はなく、通達が法律の解釈と異なっていたわけですから、過去に通達にしたがった処理をしていた場合に、更正の請求を行うことが可能です。
 具体的には、今回の通達改正を知った日の翌日から2か月以内に更正の請求をすれば、最大で5年分の納め過ぎた税金について還付を受けることが可能です。知った日から2か月以内ですから、心当たりがある場合には、慌ただしい手続となります。

住宅ローン減税の基本的な要件

 住宅ローン減税の適用を受けるための要件として、基本的なものとしては、下記の通りです。

  1. 借入金の償還期間又は割賦期間が10年以上であること
  2. 対象となる借入金は、居住用の住宅、敷地、増改築資金であること
  3. 住宅の床面積が50平方メートル以上であること
  4. 合計所得金額が3000万円以下であること

 なお、中古住宅の場合は、築年数が木造の場合は20年以内であること、耐火構造の場合は25年以内であること、耐震基準であることの証明、瑕疵担保保険に加入していることなどの条件が加わります。
 また、借入金が勤務先の社内貸付制度を利用している場合は、年利率が1%以上であることが必要となります。

平成25年以前に居住開始した場合の住宅ローン減税

(1) 一般の住宅の場合

 平成25年以前の住宅ローン減税の概要は、以下のとおりです。政策的な減税であるため年度によって、大きく有利不利があります。改正時点では、景気の早期回復を趣旨として、早く購入する方が、有利な制度が適用できる仕組みとなっていました。

居住した年控除期間借入金の残高の
限度額
控除率年間の控除
限度額
平成20年10年又は15年2,000万円0.4~1%8~20万円
平成21年10年5,000万円1%50万円
平成22,23年4,000万円40万円
平成24年3,000万円30万円
平成25年2,000万円20万円

(2) 認定長期優良住宅等に該当する場合

 なお、平成21年から平成23年までに居住開始した住宅が、認定長期優良住宅に該当する場合は、下記のとおり、認定長期優良住宅に該当しない住宅を取得した場合に比べて有利な取扱いとなります。

居住した年控除期間借入金の残高の
限度額
控除率年間の控除
限度額
平成21~23年10年5,000万円1.2%60万円

 平成24年以降の居住開始からは、認定長期優良住宅に加えて、認定低炭素住宅に該当する場合にも、優遇措置がとられ下記のような取扱いとなっています。

居住した年控除期間借入金の残高の
限度額
控除率年間の控除
限度額
平成24年10年4,000万円1%40万円
平成25年3,000万円30万円

平成26年以降の住宅を取得した場合の住宅ローン減税

 消費税率の引上げに備えて、平成25年度税制改正で改正が行われました。消費税率引上げ後の税率で住宅を取得した場合には、より大きな住宅ローン減税の適用を受けられる制度で、駆け込み需要とその反動を抑制しようとする趣旨です。
 平成27年度税制改正では、消費税率10%への引上げが延期されたことに伴い、住宅ローン減税の適用期間について改正されました。
 消費税率については、経過措置の適用で、消費税率引上げ後も旧税率が適用される場合があるので、その時点における引上げ後の税率で取得した場合を、特定取得として、旧税率で取得した場合と区別して住宅ローン減税を適用します。

(1) 一般住宅の場合

取得形態居住年月日控除期間借入金の残高の
限度額
控除率年間の控除
限度額
特例取得以外平成26年~
平成30年6月
10年2,000万円1%20万円
特定取得4,000万円40万円

(2) 認定長期優良住宅等に該当する場合

取得形態居住年月日控除期間借入金の残高の
限度額
控除率年間の控除
限度額
特定取得以外平成26年~
平成30年
10年3,000万円1%30万円
特定取得5,000万円50万円

NISAの非課税枠の拡大

 平成26年1月1日より利用が可能となったNISA制度では、年間100万円を限度とする上場株式等の購入であれば、その株式等による配当や売却益が非課税とされます。
 平成27年度税制改正で、上記NISAの非課税枠が、年間の購入額100万円から年間の購入額120万円へと拡大されることになりました。なお、非課税枠の拡大は、平成28年分からとなります。
 金額が100万円から120万円となったのは、月々10万円ずつ積立的な投資を行いやすくする趣旨です。
 なお、NISAについては複数の口座を持つことができないように、口座開設時の手続が煩雑であるとの問題点が指摘されています。この点については、マイナンバーの利用により、口座開設が簡素化されることも予定されています。

ジュニアNISA制度

 従来のNISA制度は、その年の1月1日において満20歳以上である者に利用者が限定されていました。平成27年度税制改正で、その年の1月1日に20歳未満であっても、利用可能なNISA制度を設けました。極端な場合、生まれたばかりの子どもに、NISA口座を持たせることもできます。なお、年間の購入額が80万円であるなど、従来のNISAとは非課税限度額が異なるためジュニアNISAという呼び方をして区別することが一般的です。
 従来のNISAとジュニアNISAの異なる点は、下記の通りです。

  1. 利用者が20歳未満に限定
  2. 年間非課税投資額が80万円まで
  3. 18歳までは、払い出し制限が設けられていること
  4. 親権者等が未成年者の代理で運用を行えること

 通常は、未成年者は投資する資金を有しないので、資金の拠出については親権者等が行い、贈与税の非課税限度額の枠を利用して、毎年継続して投資が行えることが想定されています。
 また、18歳までは、払出し制限が設けられることになります。ジュニアNISAの株式を売却した場合等は、課税未成年者口座へ移動されることになり、通常は払出しができません。ただし、火災など災害等の事由があった場合は、税務署長の確認を受けることで払出しが可能となります。

帰ってくる予定がある場合は?

 さて、海外へ出国する場合に、保有する有価証券などについて、時価で売却したものとみなして、課税されるのが出国時課税制度です。ここで、疑問を持たれる方もいらっしゃると思いますが、出国はするけれども、数年後には戻ってくるという場合は、どうなるのでしょうか。日本に戻ってくるまでの間、有価証券を持ち続けているような場合にまで、課税されるのでは困ってしまいます。
 出国時課税制度の適用を受けた者が、国外転出の日から5年以内に帰国した場合で、国外転出の際に有していた有価証券等を引き続き保有している場合には、出国時課税制度による課税を取り消すことができる仕組みとなっています。この場合は、自動的に税金が戻ってくるわけではなく、帰国の日から4か月以内に更正の請求を行うことが必要となります。
 なお、帰国した場合でも、国外転出の際に有していた有価証券を売却した場合には、売却した部分について課税が取り消されることはありません。

帰国予定の場合の納税猶予制度

 帰国した場合に更正の請求ができるとしても、出国時に売却していない有価証券について課税される仕組であるため、保有資産の大部分が有価証券である場合は、納税資金が不足するという事態が生じる可能性があります。
 出国時課税制度の適用を受けた者が、国外転出の日の属する確定申告書に納税猶予を受ける旨の記載をすることで、国外転出をした日から5年を経過する日まで、納税猶予を選択することが可能です。なお、5年以内に帰国する場合は、帰国の日から4か月を経過する日までが納税猶予期間となります。
 なお、納税猶予制度を受けるためには、納税猶予額及び利子税に相当する担保を提供することと、納税管理人の届出が必要となっています。
 また、事情により海外出張が5年を超えるようなケースも想定されるので、納税猶予の期間については、申請をすることで、国外転出の日から10年を経過する日まで延長できることになっています。

国外転出とは?

さて、国外転出とは、どのような内容を示すのでしょうか。当然、海外旅行などで、短期間の間、海外に行く場合には含まれないことになります。
 本制度については、国税庁よりFAQが公表されていて、詳細は下記をご覧頂ければと思います。

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/denshi-sonota/kokugai/pdf/02.pdf

 上記FAQの中で、国外転出について、「国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。」と条文通りの説明があります。一般的には、住所地の市区町村に対して、国外転出届を提出することで国外転出となります。
 ただし、所得税法基本通達では、住所について、生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的な事実により判定するとしています。つまり、実質的な判断が行われるので、国外転出届出を提出しなければ課税されないというわけではありません。

出国時課税制度が必要になった理由

 租税条約では、株式など有価証券の売却益については、有価証券を売却した者が居住している国に課税権があるとされています。しかし、シンガポールや香港などでは、有価証券の売却による利益については非課税とすることで、世界中から富裕層が移住しやすいような政策をとっています。
 多額の含み益のある有価証券を保有している日本人が、国内でその含み益のある有価証券を売却した場合には、多額の税金がかかることが予測できます。この場合に、シンガポールへ移住してから、含み益のある有価証券を売却することで、有価証券の売却益に対する課税を逃れることが可能となっています。このような、国際的な租税回避を防止することを趣旨として、平成27年度税制改正で導入されました。

制度の概要

 国外転出をする居住者が、有価証券などを有する場合に、その国外転出の時に、その有価証券などを売却したものとして、所得税の課税が行われることになります。
 なお、具体的な計算方法については、納税管理人がいる場合といない場合では、以下のとおり異なる内容になります。

(1) 納税管理人がいる場合

国外転出時の有価証券等の時価 - 有価証券等の取得費 = みなし譲渡所得

(2) 納税管理人を定めない場合

国外転出予定の3ヶ月前の日における有価証券の時価 - 有価証券の取得費 = みなし譲渡所得

 この相違は、納税管理人を定めない場合は、出国時までに確定申告をする必要があることから、国外転出の予定日の3月前の時価を用いることになっているためです。
 なお、有価証券だけではなく、未決済デリバティブ取引についても、決済をしたものとみなした利益について、課税される仕組みになっています。
 なお、本制度は平成27年7月1日以降から適用開始となります。

出国時課税制度の適用対象者

 出国時課税制度は、富裕層の国外転出による国際的な租税回避を防止することを目的としており、対象となるのは下記の要件を満たす場合です。

(1) 資産規模要件

国外転出時の有価証券の時価と未決済デリバティブ取引等の利益の額又は損失の額が1億円以上である者(納税管理人を定めない場合は国外転出予定日の3ヶ月前の時価で判定)

(2) 在住期間要件

  1. 住居者
  2. 国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居住を所有してきた期間の合計が5年を超える者

贈与、相続があった場合の取扱い

 なお、上記の適用対象者が、有価証券等を贈与、相続、遺贈により非居住者に移転した場合は、適用対象者が国外に転出してから、贈与、相続、遺贈した場合と同様の結果になるので、贈与、相続、遺贈があったときにも時価で売却したものと、みなして課税される仕組みとなっています。
 贈与、相続の場合も平成27年7月1日以降から適用されることになっており、駆け込みで6月までに贈与を行うなどの対策が行われているようです。

ふるさと納税の魅力

 ふるさと納税自体は平成20年度税制改正で導入されましたが、ここ数年の税制改正の中で、もっとも注目された制度かもしれません。とにかく、大人気の制度と言っても過言ではないでしょう。
 例えば、控除限度額に余裕がある場合なら、5万円の寄付をした場合、4万8千円は、所得税や住民税が減額され、実質の負担としては2000円となります。一方で、自治体によっては、寄付金に対して、返礼品を贈ってきてくれるという取扱いを行っています。寄付金額に対する、返礼品の値段を還元率と呼びますが、還元率で50%以上としている自治体が相当多くあります。つまり、5万円の寄付をした場合に、実質負担は2千円なのに、還元率50%なら、2万5千円の返礼品が贈られてくることになります。2千円で、2万5千円の品物が入手できるわけですから、どう考えてもお得な制度です。
 なお、返礼品としては、自治体の地域の特産品である肉、山の幸、海の幸、米などの他、パソコンを用意している自治体もあり、非常に多彩な内容です。「ふるさと納税」と「特産品」などのキーワードで検索すると、気に入る返礼品がみつかるかもしれません。

控除限度額に注意

 ふるさと納税で注意が必要なのは、税額控除に限度額が設けられていることです。
 従来は、個人住民税の所得割の1割が上限とされていましたが、平成27年度税制改正で、平成28年度分以後の個人住民税については、個人住民税の所得割の2割が上限となりました。住民税は、平成27年度の所得に基づいて、平成28年度分の税額が決定される仕組みとなっており、平成27年に行った寄付金から、従来の倍の控除限度額という取扱いになります。
 なお、課税所得金額に応じて、いくらの金額の寄付までが、有利になるのかについて、示すと下記の通りです。

課税所得金額寄付金の目安課税所得金額寄付金の目安
200万円5万円800万円24万円
300万円7万円1000万円35万円
400万円11万円1200万円42万円
600万円17万円1500万円53万円


 総務省のサイトでは、収入金額と家族構成に応じた一覧表を公表しているので、参考にしてください。

参考:http://www.soumu.go.jp/main_content/000254926.pdf

 また、住宅ローン減税を受けている場合などは、税額控除額が別途あるため、計算結果が変わってくるので注意が必要です。

ふるさと納税ワンストップ特例制度により確定申告不要に

 ふるさと納税を促進し、地方創世を推進するために、確定申告が不要となる、ふるさと納税ワンストップ特例制度が創設されました。サラリーマンなどがふるさと納税を行った場合は、何の手続きもしなくてもふるさと納税の額にみあった税額控除が受けられる便利な制度です。
 具体的には、寄付を行う際に、自分の住所地に控除申請をしてくれるように依頼すると、寄付を行った自治体が、住所地の自治体に必要事項を通知する仕組みとなっています。
 ただし、ふるさと納税ワンストップ特例制度は、平成27年4月以降の寄付からの取扱いなので、平成27年3月までに寄付をしている場合には、確定申告が必要になります。また、寄付先が5つを超えるような場合は、確定申告が必要となります。

◆制度の概要

 平成25年4月1日から施行されている教育資金の一括贈与制度は、非常に注目度も高く、信託による利用の契約件数のみでも10万件以上となっており、納税者のニーズにマッチした制度でした。そこで、平成27年度税制改正では、結婚・子育て資金の一括贈与制度を新たに創設しました。
 扶養義務者間であれば、生活費については、その都度贈与が行われ、その支払いに直接充てられている場合は、非課税とされています。教育資金、結婚・子育て資金についても、必要の都度、贈与されている分には非課税となるものを、必要の都度ではなく、一括して贈与しても非課税とする点が両制度の共通点です。
 なお、利用にあたっては、教育資金の一括贈与制度と同様に、直系尊属が金銭を拠出し、信託銀行などの金融機関に信託等を行うことが条件となります。
 金額については、受贈者1人につき1,000万円までとされており、平成27年4月1日から平成31年3月31日までに拠出されたものに限り、贈与税を課税しないという仕組みです。なお、1,000万円のうち、結婚資金として利用できるのは300万円までに限定されています。

◆具体的な資金の使途

 結婚・子育て資金の具体的な使い途としては、下記のような内容です。

(1)結婚費用
 結婚に際して支出する婚礼(結婚披露宴を含む。)に要する費用、
住居に要する費用及び引越に要する費用など
(2)子育て費用
 妊娠に要する費用、出産に要する費用、子の医療費及び子の保育料のうち一定のものなど
子育て費用について、不妊治療やベビーシッターにかかる費用なども含まれます。

◆教育資金の一括贈与制度との相違点

 金額の上限が、教育資金は1,500万円、結婚・子育て資金は1,000万円と、金額の違いこそありますが、仕組みとしては非常に似ています。しかし、決定的に違う点があります。
 教育資金の一括贈与制度は、贈与した者が死亡した場合に、相続財産に組み込まれることはなく、受贈者が30歳になった時点で未使用の金額があれば、その残額について贈与税が課税される仕組みとなっています。相続財産に組み込まれないという点では、短期的な相続対策としての効果があるという特徴があります。
 一方で、結婚・子育て資金については、贈与をした者が死亡した場合は、相続財産に組み込まれる仕組みになっています。孫への相続の場合のような2割加算の対象とならないので、まったくメリットがないわけではありませんが、相続対策としての効果は薄いと考えるべきです。なお、贈与をしたものが生存している場合には、結婚・子育て資金は受贈者が50歳になって、未使用の金額があれば、その残額について贈与税が課税される仕組みとなっています。

◆教育資金の一括贈与制度の改正点

 教育資金の一括贈与制度は、平成27年12月31日で終了する予定でしたが、平成27年度税制改正で、平成31年3月31日の拠出まで、期限が延長されました。
 また、教育資金の中に、留学の渡航費用と通勤定期券代が含まれることになりました。なお、留学中の生活費については、教育資金に含まれないことになっていますが、扶養義務者が生活費としてその都度送金することにより、結果として贈与税は課税されないことになります。

 

従来の事業承継税制

 事業承継税制は、平成21年度税制改正により創設されました。ところが、創設当初の取扱いでは、①一定の雇用を維持できなかった場合に納税猶予が打ち切りとなること、②納税猶予が打ち切りとなった場合に多額の利子税の負担が生じること、③親族間承継しか認めないという制約があったこと、④事前の確認が必要とされ、事後の手続も煩雑であったこと、⑤先代経営者の退任が条件とされていたことなど、使いにくさの目立つ制度でした。
 利用しにくいという指摘を受けて、平成25年度税制改正により、問題点として指摘されていた部分の多くについては、改善され、使い勝手がよくなってきました。この点については、下記をご参照ください。

http://www.tohoren.or.jp/zenkoku/index.asp?patten_cd=12&page_no=563

平成27年度税制改正による改正点

 平成27年度税制改正における事業承継税制の変更点として、注目度が高いのは、贈与税の納税猶予に関する取扱いです。
 相続税について納税猶予制度を利用していた場合に、保有している株式を、さらに、後継者に事業承継税制を利用して生前贈与する場合は、納税猶予されていた相続税額は免除されるという取扱いでした。

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 一方で、先代経営者より贈与税の納税猶予制度を利用して、株式を取得した経営者が、先代経営者が存命中に、その株式を次の後継者に対して贈与する場合に、納税猶予が打ち切られてしまい、納税猶予されていた贈与税について納税が必要な仕組みでした。

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 このような取扱いにしたのは、親から自分への相続税について、世代飛ばしを、認めない趣旨だったと思われます。ところが、高齢化が進むことにより、親が95歳、自分が65歳というような状況で、子に事業承継税制が利用できないというのでは、酷な話しです。
 そこで、平成27年度税制改正により、初代から贈与税の納税猶予を受けていた二代目経営者が、さらに三代目へ贈与税の納税猶予をした場合に、二代目経営者の猶予税額について免除するという取扱いにしました。

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 なお、この場合の納税猶予の免除は、最初の贈与税の納税猶予制度の贈与税の申告期限の翌日から5年間経過した後に行われる贈与に限定されます。

 また、今回の改正で、最初の相続税・贈与税の納税猶予制度の相続税・贈与税の申告期限の翌日から5年以内の贈与でも、身体障害等のやむを得ない理由により、次の後継者に贈与税の納税猶予制度を利用する場合には、猶予税額の免除が認められることになりました。



国外事業者による電気通信役務に対する課税の仕組み

 電気通信役務について、役務の提供を受ける者の住所で内外判定を行うとした場合に、海外で役務提供を行っている者から課税できるのかという現実的な問題があります。そこで、今回の改正では、実体に即して2つの課税方法を用意して対応しています。

(1)リバースチャージ方式

 国外事業者が行う電気通信役務の提供のうち、その役務の性質又はその役務の提供に係る契約条件等により、役務の提供を受ける者が事業者であるものが明らかなものを「事業者向けの電気通信役務の提供」と分類します。そして、事業者向けの電気通信役務の提供については、役務の提供を受ける者が消費税の納税義務を行うことになります。

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 リバースチャージ方式の課税対象となるのは、事業として他の者から受けた事業者向け電気通信役務の提供で、「特定仕入」と呼ばれます。リバースチャージ方式の納税義務の対象は国内において行った課税仕入のうち「特定仕入」に該当するもので、「特定課税仕入」と呼ばれます。実務のイメージで言えば、グーグルに支払う広告費などが該当します。
 課税仕入を行った者が、納税義務を負うという点に違和感がありますが、実際には上記の図のように8万円の消費税を預かり、8万円の消費税を支払うということで、納税額はゼロとなるケースが多いはずです。別の言い方をすれば、100万円について課税仕入ができなかった従来と結果は同じとなります。そこで、当面の間は、課税売上割合が95%以上の場合は、その課税期間において行った特定課税仕入はなかったものとして取り扱われます。一方で課税売上割合が95%未満の場合には、納税額が生じますので注意が必要です。
 また、中小事業者向けの取扱いとして、免税事業者はリバースチャージについても納税義務は生じません。簡易課税の適用を受ける事業者についても、当面の間は、特定課税仕入はなかったものとして扱われるとしており、従来と変化はありません。

(2)国外事業者申告納税方式

 国外事業者が行う電気通信役務の提供のうち「事業者向け電気通信役務の提供」以外のものを「消費者向け電気通信役務の提供」と呼びます。「消費者向け電気通信役務の提供」については、役務提供を行っている国外事業者が納税義務者となります。イメージとすれば、アマゾンによる電子書籍の販売などを想定していただけると馴染みやすいと思います。
 ただ、ここで、国外事業者に納税義務を課すとしても、外国にいる事業者に強制力を行使できるのかという問題が生じます。仮に国内事業者が、外国事業者から「消費者向け電気通信役務の提供」を受けた場合に仕入税額控除を認め、一方で、国外事業者が消費税の申告を行わなければ、国として持ち出しが生じてしまいます。そこで、当分の間は、国内事業者が国外事業者から提供を受けた「消費者向け電気通信役務の提供」については、仕入税額控除の適用を認めないことにしました。つまり、従来通り、課税仕入に含まれないという、奇妙な状態になります。
 しかし、国外事業者が、日本の消費税を納税している場合にまで、仕入税額控除を認めないのでは、消費税の仕組みとして問題となるので、「登録国外事業者」から受けた「消費者向け電気通信役務の提供」については、登録国外事業者の登録番号が記載された請求書等の保存を要件に仕入税額控除を認める取扱いとしています。
 登録外国事業者とは、国内に税務代理人又は納税管理人又は事業所があるなどの要件を満たす一定の国外事業者であり、平成27年7月1日以降に、納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に申請書を提出することで、登録を受けることが可能となります。

国外事業者による芸能・スポーツ等の役務提供

 外国人の芸能人、スポーツ選手等の個人事業者が、日本国内で仕事を行えば日本の消費税が課税されます。この場合に、基準期間の課税売上高によって納税義務の判定を行うのですが、課税庁としては非居住者の状況を把握しきれないため、適正な課税が行えないことについて、会計検査院により指摘されていました。
 そこで、平成28年4月1日以後に行われる、国外事業者が国内において行う芸能・スポーツ等の役務の提供については、その取引に係る消費税の納税義務者が、役務の提供を行う事業者から役務の提供を受ける事業者に転嫁する仕組み、上記で説明しているのと同様に、リバースチャージ方式が採用されることになりました。

従来の取扱いと問題点

 日本の消費税の課税対象となるものは、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」とされており、国外で行われた取引、事業者でない個人が資産を売却した場合などは、消費税が課税されない仕組みとなっています。
 消費税法が公布されたのは昭和63年12月30日で、現在のようにインターネットを利用した国際間の取引などは行われていない時代でした。取引が国内で行われたか否かの判定を内外判定といいますが、国内及び国外にわたって行われる役務の提供についは、国内において行われたかどうかが明らかでないため、役務の提供を行う者の事務所の所在地で内外判定を行うという仕組みにしました。これは、明らかでないものについて、白か黒かをはっきりさせる必要があったために、そのように決めたと考えればわかりやすいでしょう。
 ところが、最近はインターネットを通じた、電子書籍、音楽、広告の配信などの電気通信役務の提供が一般的になりました。この場合に、国内の事業者が提供するものについては消費税が課税され、国外事業者が海外から行う役務提供については国外取引として消費税の対象外として扱われてきました。同じ種類の役務提供について、国内事業者が提供するか、国外事業者が提供するかで、税負担に差異が生じ、ひいては、国内・国外事業者における競争条件の不均衡が生じた状態となっていました。
 そこで、平成27年度税制改正により、この取扱いを変更して、平成27年10月1日から適用することとしました。実務にも、かなり大きなインパクトを与える改正です。

内外判定基準の見直し

 今回の改正で内外判定の基準が見直されることになりましたが、全面的に変更があるわけではなく、一部の取引についてのみ取扱いが変わります。例えば、役務の提供が行われた場所が明らかなものについては、従来通り役務の提供が行われた場所で内外判定を行います。また、役務の提供が行われた場所が明らかでないもので、国際運輸、国際通信、国際郵便、保険、プラント建設等に係る情報提供等については、従来通りで変更がありません。
 今回の改正で変更があるのは、下記の内容に限定されています。

電子書籍・音楽・広告の配信等の電気通信回路を介して行われる提供であって、電気通信役務の提供以外の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供や単に通信回線を利用させる役務の提供を除く

 

 このような役務の提供を「電気通信役務の提供」と定義して、従来は、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で内外判定していたものを、役務の提供を受ける者の住所・居所又は本店・主たる事務所等の所在地で内外判定を行うように改正されます。
 なお、役務の提供が行われた場所が明らかでないもので、上記の「電気通信役務の提供」に該当しない役務の提供については、従来通り、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で判定することになります。

 国外事業者が行う電気通信役務の提供については、国内取引と判定され、日本の消費税が課税されることになるのですが、その課税方式については、枝分かれして、少し難しい説明となるので、次回ご紹介させていただきます。

 

免税手続カウンター制度

 外国人観光客が買い物をする場所として、秋葉原や銀座の映像がニュースなどに非常に多く登場します。秋葉原や銀座での映像が多いのは、なぜでしょうか。秋葉原や銀座には、輸出物品販売場が非常に多くあります。そして、輸出物品販売場で、外国人観光客が、一定の手続をして物品を購入すれば、消費税がかからないという取扱いを受けることができるのです。これは、消費税は、国内の消費に対して課税されるものであり、輸出物品については免税としていることとのバランスをとる取扱いです。外国人観光客が外国で利用するモノを日本で購入する場合に、輸出と同じ取扱いをするという趣旨です。
 ただし、外国人観光客への販売であれば、全ての店舗で免税の取扱いができるということではありません。税務署へ輸出物品販売場として、許可を受ける必要があり、その許可を受けるための条件もハードルが高いものです。また、輸出物品販売場としての許可を受けることができたとしても、販売する際に、パスポートを確認して、購入記録表を作成、購入記録表をパスポートに貼り付け割り印、購入者誓約書にサインを受け取るなど事務手続が煩雑で、小規模な店舗では対応しにくいものでした。
 平成27年度税制改正では、輸出物品販売場について、その販売場における全ての免税販売手続を、免税手続カウンターを設置する事業者に代理させることを前提とした許可制度となります。
 他の事業者が経営する販売場における免税販売手続の代理をしようとする事業者は、その販売場が所在する次に掲げる場所に設けた物的施設において免税販売手続を行うことについて、納税地を所轄する税務署長の許可を受けなければなりません。

(イ)その販売場が商店街振興組合の組合員が経営する販売場であるときは、その組合の定款に定められて地区

(ロ)その販売場が中小企業等協同組合法上の組合の組合員が経営する販売場であるときは、その組合員が形成する一の商店街

(ハ)その販売場が大規模小売店舗内であるときは、その大規模商売店舗の施設

(ニ)その販売場が一棟の建物内にあるとき(上記(ハ)に該当する場合を除く。)は、その建物

 この改正により、負担が重い事務手続を、免税手続カウンターを設置する事業者に委託することが可能となり、小規模な店舗でも容易に輸出物品販売場としての許可を受けることが可能になります。外国人観光客が多数来るような観光地においては、ショッピングセンター内、あるいは商店街に、免税カウンターを設置することで、街全体の集客力を高めるなど大きなビジネスチャンスとして期待できます。

臨時販売場制度

 外航クルーズ船が寄港する港湾の港湾施設内に場所及び期限を定めて臨時販売場を設置しようとする事業者(既に輸出物品販売場の許可を受けている事業者に限る。)が、あらかじめ臨時販売場を設置する見込みである港湾施設につき納税地を所轄する税務署長の許可を受けている場合は、その設置日の前日までに輸出物品販売場を設置する旨の届出書を税務署長に提出することで、その臨時販売場を輸出物品販売場とみなす制度が創設されます。
 従来は臨時の輸出物品販売場という取扱いがなかったため、本来の輸出物品販売場と同様に場所ごとに許可を受ける必要があり重い負担でした。今回の改正で、負担が軽減され、臨時の輸出物品販売場を設けやすくなります。

復興支援

 福島復興再生特別措置法の改正を前提に、帰還困難区域など一定の区域内に平成23 年3月11 日において事業所を有していた法人で同法の避難解除等区域復興再生推進事業実施計画の認定を受けたものが、積立期間内の日を含む各事業年度において、その実施計画に記載された避難解除等区域復興再生推進事業の用に供する施設又は設備の新設、増設、更新又は修繕に要する支出に充てるため、その実施計画に記載された投資予定額の2分の1相当額以下の金額を福島再開投資等準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、損金算入することができます。
この準備金は、企業立地促進区域において機械等を取得した場合の特別償却制度の適用を受ける場合にはその適用を受ける減価償却資産の特別償却実施額に相当する金額を取り崩すほか、その積立期間の末日の翌日以後2年を経過する日を含む事業年度の翌事業年度から3年間でその2年を経過する日を含む事業年度終了の時における準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入することになります。

中小法人向けの施策

 税制改正大綱によると、租税特別措置については、毎年度、期限が到来するものを中心に、廃止を含めてゼロベースで見直しを行うとしています。中小企業向けの施策で、租税特別措置法で定められているものもあるため、今後の見通しについては微妙ですが、平成27年度税制改正においては、法人税法本法の取扱いも租税特別措置法の取扱いも基本的に現状維持という方向です。

(1) 中小法人の軽減税率の特例

 中小法人の所得の金額のうち年800 万円以下の部分に対する税率が本来19%であるところを、15%とする取扱いの適用期限を、2年延長し、平成29年3月31日までに開始する事業年度までとなります。
 また、公益法人等又は協同組合等の軽減税率についても、同様の取扱いです。

(2) 繰越欠損金の控除限度額の取扱い

 中小法人に該当する場合は、欠損金の繰越控除制度において、控除限度額はその年度の所得の金額とされる取扱いは存置されます。なお、この取扱いは、法人税法本法の規定であるため、いつまでとの期限については定められていません。

(3) 貸倒引当金の取扱い

 中小法人に該当する場合は、貸倒引当金について、法定繰入率を利用することができる取扱いが、2年間延長され平成29年3月31日までに開始する事業年度までとなります。また、公益法人等又は協同組合等に認められる割増特例について同様の期間まで延長されます。

※ 中小法人の範囲

 中小法人とは、普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が一億円以下であるもの又は資本金もしくは出資を有しないものとされています。ただし、次の法人は除かれています。

ア 大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
 大法人とは、資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人、相互会社及び外国相互会社、法人課税信託に係る受託法人をいいます。

イ 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部を、その全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において、いずれか一の法人とその普通法人との間に、そのいずれか一の法人による完全支配関係があるとこととなる場合は、その普通法人

ウ 相互会社

エ 法人課税信託に係る受託法人

 なお、公益法人等又は協同組合等の他、人格のない社団等も法人税法の取扱い上は中小法人に該当します。
 最近は、中小法人の判定も難しく読むのが億劫かもしれません。およその理解としては、資本金5億円以上である法人の100%子会社などに該当すると、中小法人に該当しないと考えておくとよいでしょう。気になる場合は念のため税理士に確認しましょう。

地方拠点強化税制

 地域再生法の改正を前提に、以下のような措置が講じられます。新聞で、大手メーカーが地方に拠点を移すという報道がされており、地方でも期待が高まっています。建物について特別償却あるいは税額控除ができるので、金額的な影響も大きなものになります。

(1) 地方拠点建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の創設

 青色申告法人で地域再生法の改正法の施行の日から平成30年3月31 日までの間に地域再生法の地方拠点強化実施計画について承認を受けたものが、その承認の日から2年以内に、実施計画に記載された建物及びその附属設備並びに構築物で、一定の規模以上のもの(一の建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が2,000 万円以上(中小企業者は1,000 万円以上))の取得等をして、その事業の用に供した場合には、その取得価額の15%(一定の場合は25%)の特別償却とその取得価額の2%(一定の場合は4%)の税額控除との選択適用ができる制度です。税額控除を選択した場合は、当期の法人税額の20%が上限とされます。
 
なお、平成29 年3月31 日までの間に地方拠点強化実施計画について承認を受けた法人が取得等をしたものについては、その特別償却とその取得価額の4%(一定の場合は7%)の税額控除との選択適用ができることとして、早い段階で動けば優遇される取扱いがあります。
 地方税の計算では、特別償却については法人住民税及び事業税に、税額控除については中小企業者等に係る住民税について適用されます。

(2) 雇用促進税制の拡充

 雇用促進税制については、下記の優遇措置が講じられ、従来の雇用促進税制の要件を満たしている場合には一人当たり10万円の上乗せ、従来の要件を満たしていない場合でも減額はされるものの税額控除が可能で、さらにその後の年度にも税額控除されるという内容です。地方での雇用拡大に大きな期待が寄せられています。

イ 青色申告法人で地域再生法の改正法の施行の日から平成30 年3月31 日までの間に地方拠点強化実施計画について承認を受けたものが、その承認の日から2年以内の日を含む事業年度において、実施計画に従って移転又は新増設をした特定施設である事業所における増加雇用者数(法人全体の増加雇用者数を上限)に次の場合の区分に応じ次の金額を乗じた金額の税額控除ができる措置を講じられます。

(イ)現行の適用要件を満たす場合 50 万円

(ロ)現行の適用要件のうち雇用者増加割合が10%以上であることとの要件以外の要件を満たす場合 20 万円

(注)上記イの措置の適用を受ける場合で上記イ(イ)に該当する場合には、現行の雇用促進税制の適用の基礎となる増加雇用者数から、この措置の適用の基礎となる増加雇用者数が控除されます。

ロ 青色申告法人で地域再生法の改正法の施行の日から平成30 年3月31 日までの間に地方拠点強化実施計画(その法人の特定施設の特定地域から大都市等以外の地域への移転に関するものに限る)について承認を受けたものが、その承認の日から2年以内の日を含む事業年度(以下「対象年度」という)において上記イの措置の適用を受ける場合には、対象年度のうちその適用を受ける事業年度以後の各事業年度(その特定施設である事業所における雇用者数又は法人全体の雇用者数が減少した事業年度以後の事業年度を除く)において、対象年度のうち当該事業年度以前の各事業年度のその特定施設である事業所における増加雇用者数の合計数に30 万円を乗じた金額の税額控除ができる措置を講じられます。

(注)上記ロの措置は、事業主都合による離職者がある場合及び風俗営業等を行っている場合には、適用されません。

 ただし、上記イ及びロによる控除税額は、当期の法人税額の30%から現行の雇用促進税制による控除税額と上記①の税額控除制度による控除税額との合計額を控除した残額を上限とします。
 地方税の計算では、中小企業者等に該当する場合は、税額控除後の法人税額を基礎に法人住民税を計算することになります。

国家戦略特区

 国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却等又は法人税額の特別控除制度について、国家戦略特別区域法令の改正を前提に、次の見直しが行われます。

  1. 特定中核事業に革新的な情報サービスを活用した農業の生産性向上に係る研究開発に関する事業が加えられます。
  2. 特定中核事業以外の事業にインターナショナルスクールの整備に関する事業を加えた上、対象資産にその事業の用に供される貸付用の建物等が加えられます。

 また、法人の一般の土地譲渡益に対する追加課税制度の適用除外措置について、国家戦略特別区域法の改正を前提に、対象に、国家戦略特別区域内における認定区域計画に定められた同法の特定事業に係る一定の要件を満たす再開発事業を行う民間事業者に対する土地等の譲渡で当該譲渡に係る土地等が当該再開発事業の用に供されるものが加えられます。



法人事業税の税率の改正

 資本金の額又は出資金の額1億円超の普通法人の法人事業税の標準税率が、次のとおり変更されます。

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 なお、所得割の税率下段のカッコ内の税率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率で、実際には下段の数字を利用します。また、現行と記載されている税率は、平成26年10月1日以後開始する事業年度に適用される税率です。さらに、東京都では、標準税率ではなく、超過税率を利用しています。実際に地方税の申告をする際に利用する税率と大綱で公表している税率とは一致しないので、全体のイメージを掴むくらいの感覚で見ていただく必要があります。
 所得割の税率が低くなり、付加価値割と資本割の税率が高くなる方向であり、所得に対する負担を軽くしようという方向性がみてとれます。

地方法人特別税の税率の改正

 資本金1億円超の普通法人の地方法人特別税の税率が、次のとおり変更されます。

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資本割の課税標準の見直し等

 現行の外形標準課税の資本割は、「資本金等の額」に税率を乗じて計算されます。平成27年4月以降開始事業年度については、「資本金等の額」が「資本金に資本準備金を加えた額」を下回る場合は、「資本金に資本準備金を加えた額」を課税標準とすることになりました。自己株式の買取りなどで、「資本金等の額」が小さくなっている法人にとっては、大きな影響がある改正です。
 また、法人住民税の均等割についても、現行は「資本金等の額」によって判定していますが、この点についても改正があります。「資本金等の額」に無償増減資等の金額を加減算する措置が講じられ、その「資本金等の額」が「資本金に資本準備金を加えた額」を下回る場合は、「資本金に資本準備金を加えた額」が均等割の税率区分の基準となります。こちらも、実務的には影響が大きいと思われます。

付加価値割における所得拡大税制の導入

 平成27 年4月1日から平成30 年3月31 日までの間に開始する事業年度に国内雇用者に対して給与等を支給する法人について、その法人の雇用者給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額)の基準雇用者給与等支給額に対する割合が3%以上(平成28 年4月1日から平成29 年3月31 日までの間に開始する事業年度については4%以上、平成29 年4月1日から平成30 年3月31 日までの間に開始する事業年度については5%以上)で、下記のイ及びロの要件を満たす場合には、その雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることになります。
 イ 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額以上であること
 ロ 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を上回ること
 この改正は、給与額を増大させることで法人税の計算で税額控除できる枠組みを作っているのに対して、外形標準課税では給与額を増大させることで、付加価値割が高くなることの矛盾を解消するものです。今年の税制改正大綱で、キーワードのように頻繁に登場する「賃上げ」を後押ししてくれることが期待されます。

その他

 法人事業税の付加価値割及び資本割のウエイトが高くなることで、急激な負担増になることに備えて、付加価値割りが40億円未満の法人については、負担変動に対する軽減措置が設けられています。
 国税である法人税について、繰越欠損金の控除限度額、繰越欠損金の期間、中小企業者等の試験研究を行った場合の税額控除制度、中小企業者等の所得拡大税制について、改正があったことを受け、地方税についても整合性を持たせるための措置が講じられます。

法人税率の引き下げ

 平成27年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税率が現行の25.5%から、23.9%に引き下げられます
 なお、中小法人、公益法人、協同組合等については、軽減税率の取扱いが2年間延長されることになりました。結果として、所得の金額のうち年800万円以下の部分に対する税率は15%、800万円超の部分については19%の法人税率と、従来通りの取扱いとなります。

欠損金の繰越控除と制度等についての見直し

 欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、次のように段階的に引き下げられることになりました。

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 中小法人等については、従来通りで、控除限度額を所得金額までとする取扱いが存置されることになりました。
 平成29年4月以後開始する事業年度から生ずる欠損金については、欠損金の繰越期間が現行の9年から10年に延長されることになりました。

受取配当金の益金不算入制度の見直し

 益金不算入の対象となる株式等の区分及びその益金不算入割合については、次のとおりとなります。なお、大綱では、いつから開始かについて読み取れませんが、財務省の公表している資料によれば、平成27年4月以後開始事業年度から適用されるようです。

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 なお、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額については、その全額を益金算入とします。ただし、特定株式投資信託の収益の分配の額については、その受益権を、上表の非支配目的株式等として、その収益の分配の額の20%相当額を益金不算入とします。
 その他の株式等及び非支配目的株式等については、負債利子がある場合の控除計算の対象から除外されることになりました。

研究開発税制についての見直し

 平成27年4月以後開始事業年度については、以下の措置による控除税額の総枠を当期の法人税の30%とします。

(1) 特別試験研究費の額にかかる税額控除制度

 税額控除率を現行の12%から、(イ)特別試験研究機関等又は大学等との共同研究及びこれらに対する委託研究は30%、(ロ)それ以外のもの20%に引き上げます。
 控除税額の上限を試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制とは別枠で5%とします。
 特別試験研究費の範囲について、(イ)特別試験研究機関等のうち試験研究独立行政法人の範囲から国立研究開発法人を除外し、(ロ)特定中小企業者に対する委託研究の対象となる委託先の範囲に公益法人等、地方公共団体の機関、地方独立行政法人等を加え、(ハ)特定中小企業者に対して支払う知的財産権の使用料が加えられます。

(2) 試験研究費の総額にかかる税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制

 控除税額の上限を当期の法人税額の25%とします。
 なお、繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者税額控除限度超過額に係る税額控除制度は廃止されます。

所得拡大税制

 平成25年度税制改正で導入された所得拡大税制は、平成26年度税制改正で要件が緩和され、平成27年度税制改正で、さらに要件が緩和されました。実務でも、適用できるケースがよくあります。また、大綱を見ていると賃上げという言葉が、キーワードのようによく出てきます。今回の改正では、中小企業者とそれ以外の法人に区分して、雇用者給与等支給増加割合に関する要件を緩和しています。改正後の増加割合は下記のとおりです。

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◆法人税の方向性が明確に!

 法人税率の引き下げが折り込まれましたが、それ以上に、今後の方向性が明らかにされたところが興味深い内容となっています。
 法人税率が25.5%から23.9%に引き下げとなります。実効税率という視点では、現行が34.62%ですが、平成27年度32.11%、平成28年度31.33%と方向付けており、利益が出ている会社を応援する姿勢が見て取れます。また、少し先をみると、実効税率を20%台まで引き下げ、一方で課税ベースを拡大するために、外形標準課税の強化、減価償却の定額法への一本化、法人事業税の損金不算入、租税特別措置法のゼロベースでの見直しなどが検討されています。
 上記税率の引き下げ以外では、下記のようなものが気になるところです。

  • 中小法人等以外では、平成27年4月開始事業年度から繰越欠損金の限度額が80%から65%へ、平成29年4月開始事業年度には50%に縮小されます。
  • 平成29年4月開始事業年度から、繰越欠損金の利用期間が9年から10年に延長されます。
  • 会社支配目的でない株式保有について受取配当金の益金不算入の割合が50%から20%に縮小されます。
  • 外形標準課税において、付加価値割と資本割りのウエイトが高くなり、一方で所得割のウエイトが低くなります。

所得税関係

 注目されていた、配偶者控除関連の変更は見当たりませんでした。制度の拡充としては、未成年者向けのNISA制度が設けられます。全く新しい制度として、海外へ移住する場合に、保有する有価証券等の含み益に課税する仕組みが創設されました。
 ふるさと納税は、地方創生の推進につながるので、控除額の上限を引き上げ、確定申告不要な「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が設けられます。
 国外に多数の扶養家族がいる場合にその確認が難しいことが問題視されていました。そこで、日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等が義務化されます。

相続税・贈与税関係

 平成27年から相続税の基礎控除が下がるため、対策をされている方も多くいらっしゃいますが、今年の改正を見ると贈与が随分しやすくなったように思われます。
 直系尊属からの住宅資金の場合、消費税10%段階であれば、良質な住宅用家屋を取得するための資金なら3000万円までが非課税となります。
 20歳以上50歳未満の者へ、結婚・子育て資金の支払いに充てるために、直系尊属が1000万円までの金銭等を金融機関に信託した場合は、贈与税を課税しないという制度が設けられました。教育資金の贈与と似た制度ですが、贈与を行った者が死亡した場合は、相続税に組み込まれるため相続税対策としてのメリットは薄くなります。

消費税関係

 平成29年4月から消費税率が10%に引き上げられます。それに伴い、転嫁対策措置法も平成30年9月30日まで延長されることになりました。
 外国人旅行者向けの輸出物品販売場が免税手続カウンターを設置する事業者に手続を代行させる制度及び外航クルーズ船が寄港した際に臨時販売場を輸出物品販売場とみなす制度が設けられ、今まで以上に外国人旅行者向けの販売が行いやすくなります。
 外国事業者がインターネットを通じて日本の消費者へ向けての電子書籍や音楽の配信などの役務提供ついて、日本の消費税が課税されることになります。

こんな場合に寄附金が認定される

 税務の現場で寄附金が認定される場合は、一般的な寄附を行う行為とニュアンスが違うので注意が必要です。一般的には、寄附金を支払ったら寄附金となるというイメージですが、税務ではより広範囲に寄附金をとらえます。例えば、下記のような事例です。

  1. 取引先が資金繰りで困っているので、お金を貸した。取引先であり、資金繰りで困っているし、金利も低い時代なので金利を取らなかった。
  2. 知り合いの会社が人手不足というので、数ヶ月の間、無償で従業員を手伝いに行かせた。
  3. 利用していない自転車を、知り合いに、相場より安い金額で譲った。
  4. 新しい機械を購入したので、旧式の機械を、外注先にプレゼントした。
  5. 親会社の従業員が、子会社の仕事も日常的に行っていた。子会社の面倒を見るのは当然との認識で、子会社の業務を行った部分について代金を請求していなかった。
  6. 得意先の経営が厳しいとのことなので、売上代金を免除してあげた。
  7. 子会社が赤字なので、子会社の赤字を埋めるために、子会社へ仕入金額より安い金額で商品を販売した。
  8. 今は使っていない工場があるので、放置して荒れ放題になるよりはましと思い、取引先に無償で貸した。

 具体例を書き出すときりがないのですが、寄附するというイメージよりも、適正な代金を設定しなかった場合に寄附金の認定が起こりえると考えてください。
 実務上は、寄附するという認識のないまま、知り合いだから、取引先だから、子会社だから、少し便宜を図ったつもりが、寄附金の認定が行われることがあります。

寄附金の認定が起こるとどうなるのか?

 仮に、寄附金として認定された場合は、本来、得られる適正な金額を益金に計上して、寄附金とみなされた部分のうち、損金算入限度額を超える部分は損金となりません。
 例えば、受取利息を100万円計上すべきなのに、利息をとっていなかった場合には、下記のような、税務的な仕訳を行います。

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 受取利息は益金となり、寄附金部分は、損金算入限度額を超える部分は損金となりません。つまり、追加で法人税の負担が発生するということなります。経営者の立場からすると自分が善意で損をしているにも関わらず、追加で納税が発生するという、心情的には納得できない結果となります。
 実務上は、寄附金を認定したとしても、損金算入限度額以内に納まるため、結果として、課税されないということもあり、表面化しない場合もありますが、注意を払っておきたい部分です。
 なお、国外関連者に対する寄附金は、全額が損金不算入という取扱いがあります。国外に、子会社などを設立していた場合などは注意が必要です。親会社の従業員が、子会社の業務を行っていた場合などに、寄附金が認定され、全額損金不算入となれば、大きな税負担につながる可能性があります。

寄附金か否かの線引きは難しい

 お金を貸して、利息をとっていないというような場合には、寄附金が発生していたことを認定するのは容易です。
 一方で、新製品を開発してサンプルとして配布するとか、新規取引を始めるにあたり特別に割引を行うとか、不動産賃貸にあたりフリーレント期間を設けることは、ビジネスとして一般的に行われます。このような場合には、売上を得るために必要性があるものとして、通常寄附金の認定は行われません。
 実務では、寄附金に該当するのかしないのかが、争点になります。値引きとして処理したところ、値引きが異常であるとして寄附金の認定がされたとの訴訟事例もあります。寄附金については、寄附金として認定される可能性について、気にする習慣をつけ、不安な場合は税理士に相談するなど、客観的な視点でチェックすることが不可欠です。



寄附金とは

 寄付金という言葉自体は馴染みがあり、通常の日本語として定着しています。法人税法上は、「寄附金」という漢字を用いますが、法人税法では特別に定義規定をおいておらず、ほぼ一般的な寄付と同様の内容と理解してください。
 会計処理をしていて、寄附金なのか交際費なのか判断に悩むケースがありますが、国税庁のサイトでは、交際費と寄附金の区分について、下記のように説明しています。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5262.htm

交際費とは、得意先は仕入先その他事業に関係のあるものに対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。
一方、寄付金とは、金銭、物品その他経済的な利益の贈与又は無償の提供を言います。

一般的に寄付金、拠出金、見舞金などと呼ばれるものは寄付金に含まれます。
ただし、これらの名義の支出であっても交際費、広告宣伝費、福利厚生費などとされるものは寄付金から除外されます。

したがって、金銭や物品などを贈与した場合に、それが寄付金になるのかそれとも交際費になるのかは、個々の実態をよく検討した上で判断する必要があります。
ただし、次のような事業に直接関係のない者に対する金銭贈与は、寄付金になります。

  1. 社会事業団体、政治団体に対する拠出
  2. 神社の祭礼等の寄贈金

寄附金の相手先による分類

 法人が支出した寄附金については、その寄附をする相手先によって、損金算入できる額が異なります。

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 実務的には、国、地方公共団体、特定公益増進法人、認定NPO法人への寄附は、よくみかけます。注意点としては、NPO法人で「認定」が付かないところについては、一般の寄附金として扱われるので注意が必要です。また、学校法人へ寄附の場合で、代表者の母校への寄附金は、法人としての必要性が見いだせない場合などは、代表者への賞与と認定されるケースがあるため慎重に取り扱うべきです。

寄附金の損金算入限度額

 寄附金を支出した場合の、損金算入限度額は下記のとおり計算されます。

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※ 事業年度が12ヶ月でない場合は、資本金等の額に1000分の3.75(又は2.5)の計算を行う際に調整計算が必要になります。
※ 所得の金額は、支出した寄附金の額を損金に算入しないものとして計算します。



行為計算否認とは

 行為計算否認という言葉を初めて聞くと意味不明ですが、税法では、重要なテーマの一つとされています。例えば、下記のような事例について、どのように感じられますか。

都内の一等地に親から相続した貸しビルがあり、多額の収入があり、所得税が最高税率で課税されている状態が前提です。
そこで、妻と子供を役員として不動産管理会社を設立し、賃料の60%を不動産管理会社に支払う契約を結び、妻と子供は不動産管理会社から役員報酬をとることにします。

本来は、貸しビルの初留社の所得となるべき金額が、妻と子供に分散されることで、累進税率である所得税を随分と抑えられるかもしれない。

 当事者間がどのような契約を結んでも契約自由の原則から、国家は干渉することができないと民法では学習します。契約自由の原則という考え方からすれば、賃料の60%を不動産管理料として支払うという契約自体は問題がないことになります。
 一方で、税法の立場では、賃料の60%の不動産管理料は異常であり、妻と子供が役員をしている会社が相手だからこそ、異常な契約を結んだに過ぎないと判断します。この場合に、税負担が不当に減少しているとして、そのような「行為又は計算」を否認できるという取扱いがあります。
 もっとも、まったくの他人間の取引にまで行為計算否認が適用される事は問題ですから、法人税法では、下記の三つの場面に限定して規定をおいています。

法人税法132条 同族会社等の行為又は計算の否認
法人税法132条の2 組織再編性に係る為又は生産の否認
法人税法132条の3 連結法人に係る行為又は計算の否認

 行為計算否認については、上記のように限定した規定ぶりですが、まったくの無関係の者同士の取引なら、明らかに異常な取引であっても問題にならないのかというと、寄附金の認定や贈与の認定という別の形での対策がなされています。寄附金や贈与の認定については、別の機会にご紹介します。

行為計算否認の射程が変わる可能性

 行為計算否認は、私法上の契約を否認して、課税を行うというものですから、慎重な運用がなされるべきとされています。納税者の立場からすると、身内との取引は常に否認される可能性があるということでは、同族会社は常に否認のリスクを気にしておくという非現実的な状況になってしまいます。
 そこで、行為計算の否認が行われるのは、異常な取引について、「租税回避以外に正当な理由がない場合にのみ適用」されると、学説でも,裁判上も取り扱われてきたという長い歴史があります。
 ところが、ヤフー事件の判決を受けて、その取扱いに変化が生じる可能性があります。今年の3月18日の地裁判決、11月5日の高裁判決では、租税回避以外の目的があったか否かではなく、結果として法人税負担の不当な減少があったという、結果に基づいた判決がなされているからです。
 なお、ヤフー事件が、現時点では高裁判決がでた段階で、最高裁がどのような結果になるかは明かではありません。また、IBM事件では、今年の5月9日の地裁判決で、同じ行為計算否認に関して国側が敗訴しています。こちらについても、今後、高裁でどのような結果となるのかが注目されています。
 この二つの判決次第では、行為計算否認について、税法の教科書の内容が大きく変わるかもしれないというくらい影響力がある内容です。

3つの通達についての改正案

 従来から、書画骨とう等に対する取扱いとして、法人税基本通達7-1-1、連結納税基本通達6-1-1、所得税基本通達2-14に規定があり、減価償却資産に該当しないものについての取扱いを定めていました。
 今回は、その取扱いを変更するものです。上記のように通達は3つありますが、内容がほぼ同じなので、法人税基本通達で改正前と改正案のものを比較すると、下記のとおりです。

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20万円から100万円に変更された金額基準

 今回の改正で大きな点は、金額基準が従来は1点20万円未満(絵画にあっては、号2万円)という基準が、100万円以上という金額に改められたことです。実務上は、年鑑等に登載されていない限りは、書画骨とうに該当するか否か明らかでないとして、金額基準で判定せざるを得ないケースが多かったのではないでしょうか。20万円から100万円への金額基準の変更は非常に現実的な改正と思われます。
 また、従来は、年鑑等に登載されている場合は無条件に減価償却資産に該当しないという判定でしたが、今回の改正では年鑑等に登載されているか否かは検討しなくてよくなっている点でも使い勝手がよくなっています。

平成27年1月1日以後に開始する事業年度から

 この取扱いについては、平成27年1月1日以後に開始する事業年度において法人の有する美術品等について適用するとされています。つまり、これから取得するモノだけではなく、すでに所有しているモノについても、平成27年1月1日以後開始事業年度からは、税務上は償却可能となります。
 会社によっては、まとまった減価償却費が計上できるケースも考えられます。仮に減価償却を行うとした場合は、室内に飾るものであれば、器具備品の室内装飾品として、主として金属製のものであれば耐用年数を15年、その他のものであれば耐用年数を8年とすればよいと思われます。

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