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2023年03月01日号 (第461)
令和5年度税制改正 生前贈与加算の年数の延長
みなさん、こんにちは。3月になりました。個人の確定申告期限が近づいています。まだ確定申告を終わらせていない方は、早めに終わらせるように頑張りましょう。
今回は令和5年度税制改正における、生前贈与加算の改正についてご紹介をしていきます。
生前贈与加算とは
生前贈与加算という言葉は、一般の方には馴染みがないと思いますので、まずは生前贈与加算の概要をご説明します。
相続税の計算を行う際に相続財産として考えられるものは、相続があった時点で被相続人(亡くなった人)が保有する財産です。しかし相続税法では、死亡前3年以内に被相続人から相続人が贈与を受けていた場合、その財産は相続税の計算を行う際に、相続財産に加算して相続税の計算を行う仕組みです。
趣旨としては、被相続人が亡くなる前に贈与することで、相続税を不当に軽減させないようにする仕組みです。具体的には、令和4年8月1日に相続が発生した場合、令和元年8月1日から令和4年7月31日までに行われた被相続人から相続人への贈与財産が、相続税の計算に組み入れられることになります。
暦年贈与では、年間110万円の贈与税に対する非課税枠が存在します。よって、3年間で330万円まで贈与税について無税で移転することが可能です。生前贈与加算という仕組みが存在しなければ、330万円までは相続税の軽減に利用できてしまいます。
また、相続税も贈与税も超過累進税率となっています。相続税率が30%程度かかることが予測される場合、10%の税率分だけ暦年で贈与を利用するなどの税率差を利用した相続税の軽減についても、生前贈与加算で防止されることになります。
なお、支払った贈与税がある場合は、相続財産に贈与財産を組み入れると同時に、生前贈与分を含めて計算された相続税の額から、生前贈与に係る贈与税を控除する調整が行われます。
令和5年度税制改正で生前贈与加算の組み入れ期間が3年から7年へ延長
令和5年度税制改正で、相続税の計算に組み入れる生前贈与加算の対象を、3年間から7年間に延長することとされました。ただし、延長した4年間の贈与のうち100万までは、相続財産に加算しないこととされ、令和6年分の贈与から適用されます。
改正の趣旨としては、贈与を利用した相続税の軽減防止に3年間では足りないため、その期間を7年にするということになります。延長される4年について、100万円までは相続財産に加算しないのは、相続税対策ではない常識的な贈与を除外するためと思われます。
年間110万円の非課税枠を毎年利用しているケース、あるいは、年間500万円程度の贈与を継続している場合などは、それなりに相続税の負担が増えることになります。
実務的には難しい側面も
相続税の申告を行うにあたって、生前贈与加算は期間が3年でも、実務的な負担が重いものでした。通帳から通帳へ贈与している場合などは一目瞭然ですが、それ以外の場合は相続人の記憶に頼ることとなります。最近は、被相続人が90歳代、相続人が70歳代という老々相続が日常ですから、被相続人か相続人が詳細な記録を残していない限り、網羅的な把握が難しい側面があります。
今年の改正で7年間になってしまうと、隠すという悪意が全くない場合でも漏れが生じる可能性があります。計画した贈与であれば記録を残すと思いますが、そうでない場合はどうやって把握すればよいのか、現時点では見当がつかない状態です。特に相続税の申告の場合、相続があって初めて関与する場合が多く、実務家泣かせの改正だと思います。
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