税務最新情報

2018年04月10日号 (第356)

事業承継税制に伸るか反るか

 みなさん、こんにちは、4月になり暖かい日が続いています。そして、平成30年度税制改正について、政令なども公表され、詳細な部分も明らかになりました。

 今回は、事業承継税制について、詳細な内容を説明する前段階として、どのようなスタンスで接するかについて考えてみます。正直な気持ち、制度としてはとても良い制度だと思います。ただし、なんとなくのお祭りムードで、採用するには重い制度です。

◆魅力的な事業継承税制

 前回から、お伝えしているように、平成30年度税制改正で、取引所の相場のない株式について、無税で事業承継できる制度へと変貌しました。過去から指摘されていたリスクもほぼ解消され、文句の付けようのないくらい良い制度になったと判断出来ます。

 また、課税庁側が、事業承継がスムーズに進むことを期待して、完成させてきた制度ですから、租税回避などのように後で問題になるなどの心配も不要です。

 ただ、どんなに優れた制度でも、必要がないのに利用したり、無理矢理当てはめたりしたのでは、効果が期待出来ません。もっと、解りやすい例えを使うなら、どんなに優れた商品でも、必要としない人にとっては無意味なものになってしまうという点です。

◆事業承継税制が当てはまらない事例

 事業承継税制は優れた制度ですが、当てはまらない事例もあります。

 例えば、現在は株式の評価額はそれなりに高いけれど、毎年下落傾向が続いていて、将来的には、相続税がかからなくなることが予測される場合は、制度を利用する必然性がありません。また、自然に株式の評価が下落するのでなくても、現社長に役員退職金を支給することで株式の評価がゼロになるというようなケースなら、事業承継税制を利用しないで、評価がゼロになった時点で、通常贈与により承継という選択肢もあります。

 事業承継税制は、贈与の場合は、現社長が株式を保有していて、代表者を交代するタイミングで贈与が必要です。ところが、実務的には、代表者はすでに変更済みで、株式について前社長から、少しずつ贈与を受けているケースなど、制度に当てはまらない事例もよくみかけます。

 そして、それ以上に多いのが、後継者そのものがいない場合など、制度を利用したくても、どうしようもない事例です。良い制度ですが、当てはまらないケースも多くあります。

◆手間の問題

 事業承継税制は、非常に優れた制度ですが、「特例承継計画」について「認定支援機関」の指導助言に基づいて作成して、「都道府県知事の確認」を受けます。その後、贈与税や相続税の申告の際には、認定申請をして「認定」を受ける必要があります。

 認定書を付けて、税務署へ贈与税・相続税の申告をした後、特例承継期間である5年間は、都道府県庁と税務署へ年1回報告書を提出する必要があります。さらに5年経過後も、税務署に3年に1度継続届出書の提出が必要で、これは、納税猶予を受けている期間、ずっと必要となります。

 認定支援機関の指導が必要なので、外部への委託費用が必要になります。相続税・贈与税の申告後5年間は毎年、その後も3年に1度、手続についても、委託費用が発生する可能性があります。さらに、5年以上手続きに縛られることに対する精神的な負担なども生じます。

 数千万円以上の納税猶予・免除であれば、費用対効果でも積極的に受けるべきと思われます。数百万円の納税猶予・免除の場合は、株式の評価について下落する可能性や、代替的な節税手法の検討など悩ましさが生じます。例えば、現時点の株式の評価が低く、上がる可能性を懸念し、価格を固定させるだけなら、相続時精算課税の利用もあり得ます。

 

 結局のところ、うまく制度が当てはまらない場合はどうしようもなく、代替的手段の検討も必要、費用対効果での検討も必要となります。良い制度だから利用しなければ、ではなく、少し距離をおいた視点も大切です。

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