税務最新情報

2014年10月20日号 (第239)

保険料の取扱いについて(6)

 みなさん、こんにちは、今年1月から施行されている生産性向上設備投資促進税制ですが、経済産業省が7月18日に公表したニュースリリースによると、6月まででB類型の利用について証明件数が828件、金額ベースで1兆4,371億円だそうです。1件当たりの平均が17億ということで、大企業が積極的に利用していることがみてとれます。

http://www.meti.go.jp/press/2014/07/20140718004/20140718004.html

 財務省公表の平成26年度の法人税収の予算が10兆円程度ですが、税収にかなり大きなインパクトを与えます。
 さて、今回は保険料の取扱いの締めくくりで、前払保険料の取扱いなどについて、ご紹介していきます。

決算月に保険に加入した場合の取扱い

 3月決算法人が、節税対策として、慌てて3月に保険に加入した場合に、本当に節税効果があるのでしょうか。理論的には、3月に加入して、3月から翌年の2月までの1年分の保険料を前払いしているという状況であれば、3月中に費用となるのは3月分だけで、4月から翌年2月までの保険料は、前払費用として資産に計上されることになり、利益の圧縮効果はありません。会計監査を受けている場合などは、厳密な処理を行うため、結果として費用を前倒しで計上するという効果は見込めないケースが多いです。
 企業会計の考え方では、重要性の乏しいものであれば、前払費用として資産計上を行わず支出時の費用とする処理を認めています。この考え方を受けて、法人税基本通達でも下記のとおり定めています。

2-2-14(短期の前払費用)
 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14おいて同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に参入しているときは、これを認める。(昭55直法2-8追加、昭61直法2-12改正)
(注)例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の形状と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの運用はないものとする。

 

 通達では、継続適用を前提に支払った日から1年以内に提供を受ける役務について、支払った日の損金とする処理を認めています。
 一方で、支払った日から1年を超えて役務の提供を受ける場合や、利益が出たから今期だけまとめて1年分支払うというような利益操作のための支払の場合は、この取扱いを受けることができません。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/02/03.htm

 この取扱いを受ける場合の注意点は、前払いをして損金処理が認められるのは1年以内に役務提供を受ける部分だけということです。例えば、数年分の前払いをすると、逆に厳密な処理が要求されるので、節税対策としては使えなくなるという点です。

自賠責保険の取扱い

 自動車保険の任意保険は、通常保険期間が1年ですから、支払時の費用として処理することが一般的です。
 一方で、自賠責保険については、車両を購入した際や、車検の際に車検の期間に合わせて保険契約を結ぶことが日常的で、通常は1年を超える保険期間となります。自賠責保険の保険期間が2年、3年という場合、上述した法人税基本通達の取扱いから外れることになりますが、実務的には自賠責保険については、支払時の損金としてよいと言われています。
 この根拠については、法令や通達からは直接読み取ることができません。しかし、法人税の事例集、国税OBの方が書かれた質疑応答事例などで、自賠責保険は法律上強制されているもので、金額的にも小さく、租税公課と同様な性格であることを理由として、支払時の損金とすることが、実務では一般的であるとして紹介されています。

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