税務最新情報

2024年03月11日号 (第498)

令和6年度税制改正大綱 消費税②

 みなさん、こんにちは。所得税の確定申告期限直前です。なんとなく副業を始めて、確定申告をしなければいけないと感じながらも先送りして、後で税務署から連絡が来て大変なことに、という話を聞きました。早目の対応が大切です。気を付けましょう。

 さて今回は、令和6年度税制改正大綱から、消費税関係の続きです。

高額特定資産の見直し

 高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、その課税期間に取得した金又は白金の地金等の額の合計額が200万円以上ある場合が加えられます。

 この改正は、令和6年4月1日以後の仕入れ分から適用されます。

 これまで、高額特定資産は金額基準で1,000万円以上ですから、意外な感じがします。かなり以前の話ですが、自動販売機節税と言う手法が流行り、それを防ぐために平成22年度税制改正で「届出書の提出制限」が導入されました。その後、平成28年度税制改正で「高額特定資産に関する改正」が導入され、令和2年度税制改正で「居住用賃貸建物に関する改正」が行われてきました。趣旨としては、アパートなどの居住用賃貸建物は、非課税売上の生じる資産であるのに税額控除が受けられてしまう、という法の抜け穴を防ぐための改正でした。居住用賃貸建物改正で、趣旨としては完結しています。

 今回の改正の趣旨は、居住用賃貸建物対策と言うより、免税事業者になる直前期、あるいは簡易課税を適用する直前期に、金地金を購入して税額控除が適用できてしまうことへの対応と思われます。例えば、原則課税を利用している事業者が、免税事業者になる直前期に金地金を消費税込み550万円で購入すれば、50万円の税額控除を受けて翌年免税事業者になった時点で560万円で売却すれば、実質的に10万円は転売益ですが、仕入税額控除50万円部分は国に補填してもらっているような構図になります。また簡易課税選択の直前期であれば、購入年度に50万円の税額控除、売却時に事業者への売却で90%の税額控除を受けることで、二重に控除が受けられる問題が生じていました。

適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れ

 1件の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額が、その年又はその事業年度で10億円を超える場合、その超えた部分の課税仕入れについて80%の経過措置を認めないこととされます。

 この改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

 新規設立法人や特定新規設立法人に該当しない免税事業者となれる会社を設立し、その会社を経由して仕入れることで、販売会社では消費税が免税、購入側では経過措置で80%の税額控除が可能となってしまいます。言い方を変えれば、仕入の消費税の80%を国に肩代わりさせることができてしまう問題点を防ぐための改正です。

自動販売機特例の住所の記載

 インボイス制度で帳簿への記載を要件としていた自動販売機特例については、帳簿への住所等の記載が不要とされました。

 令和5年10月1日以後に行われる帳簿の記載について、運用上記載がなくても改めて求めないものとされます。

 改正前に国税庁が示していた自販機で購入した場合の帳簿の記載要件ですが、住所については市区町村の記載で良く、「新宿区 自販機」と記載すれば、インボイスがなくても仕入税額控除が可能とされていました。この場合の「新宿区」との記載に、どのような意味があるのか?ということで批判の声が出ていましたが、それに対応する改正です。

 今回の改正は令和5年10月に施行された法律が、令和5年12月の改正大綱に記載され、運用上は遡って令和5年10月から不要という特別な取扱いでした。

 

 インボイス関係については、上記の自販機のケース以外にも、水道光熱費や電話代、ETCの利用料金など、明らかに登録事業者への支払いなのにインボイスが入手しにくい取引などもあり、さらなる改正を期待したいところです。

記事提供
メールでのお問い合わせの際は、必ず住所、氏名、電話番号を明記してください。

過去の記事一覧

ページの先頭へ