税務最新情報

2023年11月01日号 (第485)

インボイス導入後あれこれ

 インボイス制度が導入され、1か月が経過しました。制度導入後に見られる実際の動きなどについて、ご紹介していきます。

手書きの領収書お断りの掲示

 10月になり近くのパン屋さんで、「手書きの領収書お断り」という張り紙を見かけました。張り紙によると、レシートが適格簡易インボイスに該当する旨と、手書きだと控えが残らない(レシートから印字して、手書きで補完する形式でした)ので発行できない旨の記載がありました。SNSなどの情報によると、大手量販店で手書きの領収書を発行しないという情報もありましたし、ネットで「手書き領収書廃止」と検索すると、数えきれないほどの会社がインボイス制度導入に伴い、手書きの領収書を廃止しているようです。

 管理する側の立場からすると、手書きの品代の領収書よりレシートの方が、日付や内容が明らかなので安心感があります。また発行する店側も、レシートを印字した後に手書きの領収書を作成する手間を考えると、レシートに統一する方が合理的と思えます。

タクシーで配車アプリを利用すると領収書がもらえない?

 タクシーで配車アプリを利用すると、タクシー代がクレジットカードで決済されます。インボイス導入前は普通に領収書を受け取れたのですが、インボイス導入後は領収書を交付しない方向のようです。元々、クレジットカード決済の場合、代金の受け取りがありませんから領収書の発行義務はないのですが、普通にやり取りが行われていました。

 配車アプリを利用した場合、配車アプリ運営会社側で適格簡易インボイスを発行する形になるので、タクシー会社の登録番号で適格簡易インボイスを交付してはいけないということのようです。具体的に領収書を入手する方法は、配車アプリから領収書発行とすると、指定のメールアドレス宛に領収書のPDFが送られる仕組みとなっています。

 こちらも管理する側の視点で考えると、乗車場所と降車場所などが記載されているので、不正防止の観点からは良い方向なのかもしれません。一方で、領収書をメールで転送する手間が必要となるので、精算忘れなどのミスは生じやすくなるかもしれません。

インボイスを交付してもらえない?

 10月になって、「インボイスを交付してもらえない」という話が寄せられるようになりました。原因はいくつか考えられます。ECサイトを利用して海外に注文や申込みをした場合、そもそもインボイスが発行されないケースがあります。「予約サイトでホテルを予約したところ、予約したサイトからも宿泊したホテルからも、インボイスの交付が受けられなかった」との話も聞きました。こちらは原因が不明で、上記のタクシーの配車アプリのように、インボイスの発行元が定まっていて、他では発行できないのではないかとの理由が考えられます。

 また取引先と金額の交渉でトラブルが発生し、インボイスが交付してもらえないという事例もあるようです。インボイスについては、消費税法で交付義務について定められています。しかし、インボイスの偽造などに対する罰則規定は存在するのですが、不交付については罰則が定められていません。理論的に考えれば、インボイスを交付してもらえないことで、仕入税額控除を受けられなかったことによる損害、あるいはインボイスが存在しないことで追徴される税額などが発生した場合、不法行為による損害賠償請求が可能かもしれません。しかし現実的には、損害の額と訴訟費用を考慮した場合にペイするのか、あるいは請求が認められたとして回収できるのかという問題が残ります。

 

 始まったばかりのインボイス制度ですが、いろいろな問題が出てきているようです。特に、正しいインボイスがもらえない(あるいは、受け取り方が不明)というケースが多いように見受けられます。

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