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2023年02月10日号 (第459)

令和5年度税制改正 帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める経過措置

 みなさん、こんにちは。確定申告期間です。多くの税理士事務所では、非常に忙しい状態になっています。早めの資料準備をこころがけましょう。

 さて今回は令和5年度税制改正の中で、インボイス制度に関する経過措置における、帳簿のみで仕入税額控除を認める経過措置についてご紹介します。

原則は帳簿の記載とインボイスの保存

 インボイス方式が導入される令和5年10月以降、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスの保存一定の事項が記載された帳簿の保存が必要となります。

 今回の経過措置は、一定の条件の下、インボイスの保存がない場合でも仕入税額控除を認めるという特例です。

経過措置の内容

 基準期間における課税売上高が1億円以下、又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月から令和11年9月までの6年間の課税仕入れについて、支払い対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除を認めるという内容です。

趣旨がいまいちわからない制度

 この経過措置は中小企業向けの特例なのですが、保護しようとしているターゲットが見えにくいです。

 免税事業者からの仕入れについては企業規模に関係なく、インボイス制度開始後3年間は80%税額控除でき、その後3年間は50%税額控除できるという経過措置が別に存在していました。その意味では、適用対象となる企業の保護というよりは、適用対象となる企業の支払い先の免税事業者を保護しようとているようにも見えます。

 この経過措置は、支払い対価が1万円未満という線引きです。具体的に想像できるのは、飲食店での軽い食事、タクシーの支払い、ちょっとした小物の購入くらいです。飲食店については、個人経営の場合にあてはまるケースを想定できますが、チェーン店であれば登録事業者になっています。また、タクシーなどについても、業界として大部分が登録事業者になるようですし、インボイスを受け取れない物品の購入も、それほど事例としては多くないように思います。中小企業の取引先である下請の救済という意味なら、1万円という線引きでは効果がありません。

 現行法では税込みの支払金額が3万円未満の場合、帳簿の保存のみで仕入税額控除を認めるという特例があり、中小企業向けに特例を一度になくしてしまうのは酷であることから、折衷的な形で経過措置として制定したのだと思われます。

 

 納税者有利の経過措置ですから、ないよりはあった方がよいのですが、経営者が基準期間や特定期間の売上高を意識しているケースは少なく、期間限定であることから、実務における混乱の原因になりそうです。

 適用対象企業を限定せず恒久的な制度であれば、少額取引やネット取引についての事務の緩和として非常に効果があるように思うのですが、効果の見えにくい改正となりました。

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