税務最新情報
2022年12月20日号 (第454)
最近の税務調査事情
みなさん、こんにちは。今年は少し税制改正大綱の公表が遅いですね。可能であれば、全体像を今回ご紹介できればと思っていたのですが、締め切りの関係もあり別の話題にします。最近、税務調査の立ち合いをしたので、それに関連して税務調査事情についてお話します。
税務調査のイメージと実際
SNSなどで、「突然、国税庁の人が大人数でやってきて、いろいろな資料を持っていかれた」などの記載を見かけますが、税理士からすると、閲覧数を増やすためのネタと感じてしまいます。
そもそも国税庁は直接調査をしませんし、通常は税務署の調査です。資本金1億円以上の場合には国税局の所管となるケースがありますが、大人数で無予告で、というのはドラマや映画の査察のイメージで、よほど悪質な脱税をしているケース以外はあり得ません。
税務調査の大部分は事前に連絡があり、日程調整を行ったうえで行われます。税務調査に来る人数も、税務署の調査であれば1~2人程度です。また、強制的に資料を持っていかれることも、通常の税務調査ではありません。
無予告の調査
無予告の調査も行われます。具体的には、飲食店などの現金商売の場合、無予告で調査が行われるケースがあります。しかもお店が開いてからではなく、早朝に社長の自宅に来て、「カバンの中を見せてください」という雰囲気で始まり、その後、店に移動して「レジの中を確認させてください」などと、現金がいくらあるのかの確認をしていきます。
無予告の調査の場合「税理士が来るまで待ってほしい」、あるいは「急ぎの用事があるので後日にしてほしい」と伝えても、「現金だけ確認させてください」とか、「カバンの中だけ確認させてください」などと引き下がってもらえず、なし崩し的に調査が始まってしまう場合があります。理屈としては強制調査ではありませんし、事前の予告もないので拒絶することはできるはずなのですが、税務署側も調査のプロですから簡単には引き下がってくれず、経験値の乏しい納税者側が折れてしまうケースが多いのではないでしょうか。
後ろめたいことがないのであれば、その場で現金など確認してもらった方が、その後の調査もスムーズになるという側面もあるのですが、無予告で自宅を訪ねられれば、普通の感覚なら納得できないでしょうし腹も立つでしょうから、それが拗れの原因になって、終始、対立的な税務調査になってしまうケースもあります。
大部分の税務調査は事前に予告がありますし、無予告の調査は一般的ではありません。ただし現金商売をしている場合は、無予告の調査もあり得るということを認識しておく必要があります。
コピーの代わりにデジカメで撮影
法人の調査であれば、「コピーを取らせてください」という形になるところ、個人事業者や相続の調査では、「デジカメで写真を撮らせてください」というケースに遭遇します。以前は、ハンディコピー機を持ち込んでコピーしていたのですが、最近はデジカメの撮影が多いです。納税者からすると、通帳の他、いろいろな書類の撮影をされるし、何を撮影しているのかわからないので不安な気持ちになりがちです。
この辺りは微妙な部分なのですが、税務署側としても税務調査で確認した資料などについて、調査の記録に残す必要があり、一定のボリュームについてはやむを得ないと思います。
普通、税務調査を受ける側の心理としては、通常は嫌な気分になります。一方で、税務署の調査官も、調査の現場に行くたびに嫌がられているムードは伝わっているでしょうから、調査をする側もきっと楽しくはないでしょう。戦う姿勢を見せようとする人や、税制に対する不満をぶつける人もいらっしゃいますが、戦う必要もありませんし、言いなりになる必要もありません。淡々と早くスムーズに税務調査が終わるように対応するのが合理的と思います。
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