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2022年12月12日号 (第453)

経過措置とはなんだろう?

 みなさん、こんにちは。先日、税理士ではない人向けのインボイス研修会を行いました。説明していて、話を解りにくくしている正体は「経過措置」だと気づいたので、今回は経過措置とはそもそも何かという話をご紹介します。

そもそも経過措置とは

 税法の話に限らず、「経過措置」という言葉は度々耳にします。検索すると、Weblio辞書では次のように記載されています。

特定の法律や制度や体制などから、新しく別の法律や制度や体制などに移行する際に、その移行中や移行完了後などに発生する、不利益や不都合などを極力減らすために取られる一時的な措置や対応などのことを幅広く指す表現。

 上記の説明でおおよそ理解はできますが、一時的な措置や対応であるという点が重要です。税法では経過措置が取られることがよくありますが、あらかじめ3年間などと期限が定まっている場合もあれば、入り口の段階が一定期限内であれば半永久的に効力が生じる経過措置もあります。

 さらに解りにくくしているケースが、「当分の間」とか「当面の間」という定め方です。本来、一時的な措置であるはずなのに終わりの期限が定まっておらず、入り口の期限も定めていない経過措置があります。極端な言い方をすると、法律で定めた内容と異なるルールが経過措置として適用され続けるのです。

 期間を定めない経過措置なら、最初からそれを法律にすれば良いのではないかという意見もあると思います。立法側としては、「本来はこうなるところを一時的に緩めているのだよ」という見せ方もありますし、心の準備をする期間的な意味合いもあるでしょう。

経過措置があるだけで覚えることは二倍以上

 経過措置がある場合は、本来のルールと経過措置の両方を理解する必要があります。実務の結果だけを考えると、「経過措置だけ説明するとか、経過措置だけ覚えるではだめなのか」との意見もあります。しかし、経過措置は一定の条件のもと認められるケースが多いので、「通常はこうだけれども、一定の場合には異なる処理が認められる」という二重の説明が必要になります。

 例えば、本来の処理なら ①インボイスがなければ仕入税額控除ができないと理解すればよいのです。しかし、経過措置があると ②当初3年間は、免税事業者からの仕入れでも80%は仕入税額控除ができる。 ③その後の3年間は、免税事業者からの仕入れでも50%は仕入税額控除ができる。このように、経過措置が一つできると仕入税額控除について三つのことを理解する必要があります。

経過措置が利用できなくなった後のことを考える必要性

 例えば、経過措置を適用した場合の結果、「年間18万円程度の納税なら許容できる」という判断で免税事業者が消費税の課税事業者になった場合、当面は想定した結果なので問題ありません。

 その後、経過措置の期間が終了して、税額が18万円から45万円に増額した場合どうなるでしょうか。金額的に許容できないから免税事業者に戻ることは、理屈としては可能です。しかし、取引先に対して免税事業者になるのでインボイスが交付できなくなることの説明が必要になり、それが億劫で免税事業者に戻りにくいという事情が生じるかもしれません。

 消費税の課税事業者を選択するといった場合は、経過措置が終了したときの影響まで考慮して判断をすることが重要となります。

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