税務最新情報

2022年05月02日号 (第431)

実務目線で見たインボイス制度の問題点

 みなさん、こんにちは、ゴールデンウイークです。いかがお過ごしでしょうか。お客さんとの会話では、まん延防止措置が解除されて、少し業績が戻ってきているようです。ただ、町を歩いていると、飲食店の営業時間は短くなっていたり、テナント募集中の店舗が目立つなど、完全に元に戻るにはまだまだ時間がかかりそうです。

 最近、インボイス制度の延期を要望するような記事をみかけるようになりましたが、免税事業者が取引から疎外されるなど、一般的に言われている以外の問題点について検討していきましょう。

本当に全ての登録事業者が正しく対応してくれるのか?

 現在、軽減税率が適用される場合は、領収書や請求書に税率を明記しなければいけないことになっています。法律上のルールなのですが、実際に飲食店や青果店などの領収書で、税率が明記されていないケースを日常的にみかけます。もちろん、スーパーやコンビニなどのレシートにはしっかりと税率が明記されています。一方で、手書きの領収書では、明記されていないケースが頻繁にあるというのが実務をやっていての実感です。

 インボイス方式が導入された後、登録事業者なのに領収書に番号を記載していなければ、税額控除が認められないことになります。他に不備があって、インボイスとしての要件を満たしていない場合も税額控除が受けられないことになっています。国税庁のQ&Aなどでは、誤りがあった場合の対応として、下記のような取扱があります。

 買手である課税事業者は、交付を受けた適格請求書又は適格簡易請求書(電磁的記録により提供を受けた場合も含みます。)の記載事項に誤りがあったときは、売手である適格請求書発行事業者に対して修正した適格請求書又は適格簡易請求書の交付を求め、その交付を受けることにより、修正した適格請求書又は適格簡易請求書を保存する必要があります(自ら追記や修正を行うことはできません。)。

 インボイス方式の趣旨からはもっともなのですが、これを実務で徹底すると軋轢が生じます。例えば、高齢者が経営している飲食店や小売店で、インボイスの形式が正しくないからといって、差し替えを要求して対応してもらえるのかという問題があります。また、金額が僅少な場合にも、いちいちそんなことを要求するのが現実的かという話です。

 実務で法律通りの運用ができるのか心配になってしまいます。

正しく制度が理解されていない

 インボイス制度について、テレビなどに出演する識者と呼ばれる人は、インボイス方式を導入しなければ、免税事業者が消費税を請求できるので不公平だと説明します。

 しかし、実務をやっていると、小売店、飲食店などのエンドユーザー向けのビジネスでは、消費税を正しく転嫁できているケースはそれほど多くありません。例えば、飲食店で980円の定食という場合に、税率が上がった際に総額を増加できたのでしょうか。免税事業者の多くは小売店であり飲食店です。消費税分を実際に請求できているのかは曖昧です。一方で、仕入に関しては業者からの仕入ですから消費税分が必ず上乗せされているはずです。そのうような前提で、免税事業者が消費税を請求しているのがおかしいということで、インボイス方式を必要とするような説明は誤解を招いています。

 上記のような話も含め、一般の事業者にインボイス制度そのものが正しく伝えられていないと感じることがよくあります。登録した場合にインボイスの交付と保存の義務が生じること、インボイスがなければ仕入税額控除ができないこと、インボイスを交付するために免税事業者を続けられないことなど、インボイス制度の全体像が浸透しておらず、より丁寧な説明の時間が必要と思われます。

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