税務最新情報

2020年11月10日号 (第378)

税務調査で確認される人件費について

 みなさん、こんにちは、コロナの影響で時間が経つのが早いというか、不安定なままで11月になってしまいました。確定申告の期限が延長されたり、4月5月の緊急事態宣言のおかげで、年間のスケジュール感が狂った年になりました。

 今回は、税務調査で確認される人件費関係の内容について、ご紹介していきます。

◆役員給与について

 役員給与あるいは役員報酬については、法人税法上のルールにより「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「利益連動給与」のいずれかに該当しないと、損金として認められない取扱いとなっています。

 実務上のミスとしてよくあるのが、単純に業績が悪いことを理由に役員給与を減額したり、4月から他の従業員と同様に増額したりなどです。定期同額にならないため、低い額で均して、超える部分は損金不算入となります。もちろん、職制上の地位の変更があった場合や、業績悪化改定事由など、変更できる場合もあるのですが、意外とミスをして損金不算入となりやすい部分です。

【国税庁】役員に対する給与

◆身内への給料について

 個人事業で専従者給与の額、法人の場合で経営者の身内への給料などで、給与と仕事の内容がマッチしているのかという視点で確認されます。

 例えば、経営者の奥様に給与を月額40万円払っている場合です。毎日出勤して普通に仕事をしているようなら全く問題にならない額ですが、勤務実態がない場合には問題となります。よって、どのような仕事をしているのか、出勤の頻度などの確認が行われます。

 ただ、給与の額が高いか安いかは、主観的な要素がありますから、意外と難しい問題があります。例えば、社長と同じ時間勤務していて、仕事も同じようにしているケースは中小企業では普通にあります。このような場合に、社長の給料が100万円、奥様の給料が100万円だったときに問題になるかというと、指摘はされても最終的には問題とならないことが多いでしょう。ただし、仕事の内容と金額とのバランスでの検討になるので、いくらまでだったらOKのように簡単に白黒が出にくい側面があります。

◆源泉徴収の漏れ

 税務調査で問題になりやすい項目として、源泉徴収の漏れがあります。学生のアルバイトだったので源泉徴収していなかったところ、だんだん金額が増えていって、源泉徴収が必要な額を継続してしまったとか、本来乙欄で徴収しなければならない人を甲欄で徴収していたなど、いずれにしてもミスが起こりやすい分野です。

◆不正はないかという視点での調査手法

 税務調査では、ミスや間違いなどの指摘もありますが、それ以上に不正がないかという視点でのチェックが行われます。

 具体的には、架空人件費が含まれていないかなどの視点です。給与がアルバイト分まで銀行振込で行われている場合には、それほど細かく確認しないかもしれません。一方で現金で支給が行われているような場合は、住所、名前、支給額を控えていき、市区町村に照会をかけるような調査を行います。実在の確認ができますし、住民税の所得との突合も可能です。また、アルバイトの出入りが多く、住民税の非課税となる学生が多い場合は、入社時の履歴書と支給時期のタイミングの確認を行うなどの調査手法があります。

 また、印象に残っているのは、タイムカードをずらっと並べて、比較検討をするような調査手法です。何を調べているのか、聞いてみたところ、同じ時刻に来て、同じ時刻に帰る人がいないかなどのチェックだそうです。送迎バスで、多数の従業員が同時刻に来て、同時刻に帰るような場合には効果はないかもしれませんが、車や自転車などでバラバラに通勤している状態で、常に同じ時刻の打刻が続くようだと、1人で2枚タイムカードを押しているのではないか、つまり架空の人件費ではないかとの視点です。

 それ以外には、従業員に経営者と同じ名字の人がいると、親戚の方ですか?と確認されることがあります。これも、名前を使わしてもらっているのではとの懸念なのでしょう。

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