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2020年02月10日号 (第352)

確定申告時期の税理士事務所の実態

 みなさん、こんにちは、ふるさと納税に関して、泉佐野市が除外されたことに対して、国地方係争処理委員会に審査請求し、委員会は、総務省に除外決定を再検討するように勧告していましたが、国は除外の判断を変えず、大阪高裁で争われていました。高裁では泉佐野市が敗訴しました。泉佐野市は上告する方針とのことですが、さてどうなったのでしょう。

 さて、今回は、確定申告シーズンということで、確定申告期間中に税理士事務所側が、どんな雰囲気なのかについて、ご紹介していきます。法人経営者の方は、多くの方が税理士に仕事を依頼しているはずです。現在、どんな状況なのかを知っていただければと思います。

◆忙しさの度合い

 私が、30年ほど前にアルバイトしていた税理士事務所では、確定申告シーズン中は、所長と副所長が1週間以上事務所に泊まり込んでいました。仕事をしていると電車で帰れない時間になるし、やらなければいけない仕事はたくさんあるしと言う感じで、お風呂は近所のサウナを利用、下着類はコンビニで調達という雰囲気でした。バブル時代だったという影響もあるかもしれません。

 それから、30年が経過して、令和の時代になりました。私の場合は、事務所に泊まることはありませんが、午前2時・3時までは、ざらに仕事をしています。10時くらいまで仕事をしている確率なら、1月後半から確定申告直前まで、ほぼ100%に近い状態になります。

 忙しさの度合いは、事務所によって、差はあっても、普通の季節に比べると相当忙しくなるのは事実です。

◆なぜ、忙しいのか?

 確定申告だから忙しいのは事実なのですが、もう少し細かな理由を考えると、以下のようになります。

 ①通常の仕事は普通にあります。具体的には、月次決算、定期的な訪問、法人税の申告などです。②さらに、1月末は、法定調書の提出、給与支払報告書の提出、償却資産税の申告の作業が、すべてのお客さん分について必要になります。なので、確定申告が始まるより前、1月後半も相当に忙しい状況になります。③そして、確定申告は、(ⅰ)お客さんと面談して、資料をお預かりして、お話を聞いて、(ⅱ)事務所で作業をして、さらに(ⅲ)申告内容の説明をするために面談、その後に(ⅳ)電子申告という雰囲気で、物理的作業量も相当増えますが、外出機会も増えてしまうなどの事情があります。

 人手を増やせば解決するかと言うと、この時期のように異常に仕事が集中する期間は、2ヶ月程度なので、そのためだけに人員を増やすのも無理があるという実情があります。

◆お客さんの誤解と解決策

 お客さんで、誤解が多いのは、「自分の確定申告は簡単だから、ぎりぎりでも大丈夫」というものです。どんなに、簡単な確定申告でも、手一杯のときは着手すること自体ができない状態になります。

 さらに、実際に多いのはぎりぎりに資料を渡されたところ、肝心の資料が足りないケースです。例えば、年金の源泉徴収票、住宅ローン減税を受けたいのに借入金の残高証明書がないケースなどです。また、打ち合わせの際に、保険金を受け取ったとか、株を売却して利益がでたとか、田舎の土地を処分したという、イレギュラーな話がでてくることがあり、そのような場合はそこから資料集めになります。実際に、資料が一枚足りなくて申告が期限までに行えないケースはよくあります。

 解決策としては、資料を早めに用意して渡すということにつきます。忙しい時期の中でも、微妙に資料待ちの時間が生じることもあります。軽い内容なら、そのような隙間時間に処理が進みますので、事務所の中での作業が貯まりきった状態になる前に送ってしまうのが最も有効です。

 また、資料が揃うまで送付しないというのも間違いです。ボリュームが大きい場合は、五月雨式にでも資料を送っていくことが有効です。合計で15時間かかる仕事が、3月になってから着手だと15日間の中で15時間作る必要があるので重い仕事になります。分割して、先に作業できるようにしておけば3月での負担は軽いものになります。

 冒頭に書いた、泉佐野市の問題のように、税金に関して訴訟に発展するケースがあります。難しい問題が自分の確定申告の中に存在する可能性があります。そのような場合に、十分な検討時間がとれる場合に比べて、十分な検討時間がとれないまま申告期限に間に合わせる場合では不利な結果になる可能性も考えられます。

 

 確定申告期限は3月15日までであっても、税理士事務所に資料を渡すのは2月中旬くらいまでと思っておくほうが、いざというときに困りません。

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