税務最新情報

2019年06月20日号 (第349)

軽減税率導入後の税額計算

 みなさん、こんにちは、今年の税制改正は地味な改正でしたが、そろそろ今年の改正に対応した通達が公表される時期です。今年の改正というわけではありませんが、通達公表で注目されているのが、保険の取扱いについてです。保険会社によっては一部保険販売の自粛をしているほどで、節税向けの保険が使いにくくなると噂されています。

 さて、今回は、軽減税率導入後の消費税の計算方法についてご紹介していきます。

◆インボイス方式導入までの消費税計算

 今年の10月1日に複数税率が導入された後の消費税計算ですが、請求書に税区分ごとの金額の記載が要求されており、実務としては請求書を見て、税区分ごとに会計ソフトに金額を入力することになります。

 税率が5%から8%に上がった時も、経過措置の適用で5%と8%の取引が混在していますし、複数税率になることで、特別新しい処理をしなければいけないということではありません。ただし、会計ソフトが新しい税率に対応している必要はあるので、バージョンアップなどは必要になります。

 一方で、会計ソフトを利用しないで、手書きやエクセルで帳簿を作成している場合は、8%の請求分と10%の請求分を別けて記載する工夫が必要です。もっとも、請求書や領収書に、税区分ごとの金額が記載されているはずなので、難しいことではありませんが、従来は1行で済んでいたものを、8%と10%の2行に別けて記載するなど、手間は増えてしまいます。

◆特例計算

 軽減税率の8%と標準税率の10%を、別けて会計ソフトに入力すれば軽減税率導入後でも消費税計算は行えます。しかし、その前の段階で、標準税率と軽減税率を別けることができないケースが現実的には起こる可能性があります。例えば、レジの使い方が不明で、合計の売上金額しか把握できないケースなどは、高齢な経営者が一人で商売をしている場合には起こりがちです。このような場合に備えて、基準期間の課税売上高5千万円以下の中小事業者には特例計算を認めています。売上について区分が不明な場合と、仕入について区分が不明な場合とに分けて、下記のような内容です。

(1)売上に関する特例
①小売等軽減仕入割合
 卸売業及び小売業に限定して利用できる特例で、簡易課税適用の場合には利用できません。

小売等軽減仕入割合の計算式

②軽減売上割合の特例(10日間サンプル法)
 通常の連続する10営業日のサンプルを用いて計算します。期間内のいつでも構いません。

軽減売上割合の特例(10日間サンプル法)の計算式

③50%簡便法
 売上の50%を軽減対象課税資産の譲渡等として扱います。上記の①と②が利用できない場合の簡便法で、軽減税率の対象となる課税売上の占める割合がおおむね50%以上である事業者に限定して認められる特例計算です。
(2)仕入れに関する特例
①小売等軽減売上割合
 卸売業及び小売業に限定して利用できる特例で、簡易課税適用の場合には利用できません。小売等軽減売上割合の計算式
②簡易課税の適用
 通常は事業年度が始まる前に提出が必要な簡易課税選択を、進行期中に提出することで簡易課税の適用が可能となる取扱いです。

 特例計算については、下記のとおり適用できる期間が異なるので注意が必要です。

売上特例小売等軽減仕入割合令和元年10月1日から令和5年9月30日までの期間
軽減売上割合(10日間サンプル法)
50%簡便法
仕入特例小売等軽減売上割合令和元年10月1日から令和2年9月30日の
属する課税期間の末日まで
簡易課税特例

 また、特例計算を利用するかしないかで計算結果が異なるので、不利な選択にならないように気をつけましょう。

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