税務最新情報

2018年07月20日号 (第366)

変動対価の場合の法人税及び消費税の取扱

 平成30年7月豪雨は大きな被害が発生しました。被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。なお、税務上の取り扱いとしても、7月10日が、納期の特例を受けている場合の源泉税の納期限となっており、現実的な問題として直面することになりました。「災害による申告、納付等の期限延長申請書」という書類の提出で、納期限、申告期限を延長してもらえる場合があります。それ以外にも雑損控除の対象となる場合などもあります。被害があった場合は、写真などで、記録を残しておくことも大切です。

 今回は、会計基準の変更に伴う法人税通達のご紹介、個別の論点としては3回目となります。タイトルの変動対価は馴染みが薄いですが、割戻し、あるいはリベートが発生する場合の売上と考えてください。

◆法人税法上の取扱

 会計基準では、以下のように取り扱われます。

〇顧客と約束した対価に変動対価(顧客と約束した対価のうち変動する可能性がある部分 ex.値引き、リベート等)が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積もる(基準50)

〇見積もられた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める(基準54)

【仕訳例】

販売契約に売上高に対してリベートを15%支払う条件がついている場合
(現金) 10,000(売 上 高)  8,500
 (返済負債) 1,500

 従来は、販売した時に1万円の売上を計上して、リベートの支払いがあった時に1,500円、売上を取り消すという処理だったのですが、リベート部分を見積もり、その部分を負債として処理するとのことです。現実的には、減額の発生する部分を見積る必要が生じ、より正確に見積るためには過去の実績などの統計が必要で手間がかかりそうです。これらの税務上の処理については、法人税基本通達2-1-1の11では、以下の通りとしています。

〇値引き・割戻し等による対価の変動の可能性がある取引(返品・貸倒の可能性については除く。)について、変動対価につき引渡し等事業年度の確定した決算において、収益の額を減額し、又は増額して経理した金額は、引渡しの時の価額等の算定に反映する

 ただし、次に掲げる要件の全てを満たす場合に限る

(1)値引き等の事実の内容及び当該値引き等の事実が生ずることにより契約の対価の額から減額若しくは増額する可能性がある金額又はその算定基準が、当該契約若しくは法人の取引慣行若しくは公表した方針等により明らかにされていること又は当該事業年度終了の日において内部的に決定されていること

(2)過去における実績を基礎とする等合理的な方法のうち法人が継続している方法により(1)の減額若しくは増額の可能性又は算定基準の基礎数値が見積もられ、その見積もりに基づき収益の額を減額し、又は増額することとなる変動対価の額が算定されていること

(3)(1)を明らかにする書類及び(2)の算定の根拠となる書類が保存されていること

 通達の要件を見る限りは、(1)と(3)は当然ですし、(2)については代理店から販売実績の報告を受けているなどのケースが多いでしょうから、適用そのものはそれほど難しくないように思えます。

 会計基準が強制適用されない中小企業の場合は、継続適用するための管理を負担に感じるか否かではないかと思います。基本的には、金額が大きくなく、比較的に短期間に解消される事象なので、手間が面倒と思う場合は見送りとなるケースが多いと思います。

◆消費税の取扱

 前回も、前々回も、法人税の扱いと消費税の扱いは、全く別という形だったので、概ね想像はできましたが、この取扱についても、消費税では法人税とは全く別の取扱です。

 当初の販売段階では、値引き前の金額で売上を計上、次の販売の段階では、値引き後の金額で売上計上という流れで、会計処理と消費税の処理で異なる処理を要求しています。5年後には、インボイス方式の導入が決まっているので、請求書の金額と消費税は常に連動となりそうです。消費税まで考えると、中小企業には面倒なだけの処理になるので、やはり不採用とするのが現実的です。

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