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2017年04月10日号 (第320)

タワーマンションに係る固定資産税の取扱い

 みなさん、こんにちは、事務所の周りでお花見をされている方をよくみかけますが、外の気温は15度ほどだそうで、まだまだ寒いですね。私の事務所の脇は、公園なので、桜がよく見えるのですが、今の事務所を気に入っている一つの理由です。

 さて、今回は平成29年度税制改正で、タワーマンションに関する固定資産税の取扱いの変更についてご紹介していきます。

◆タワーマンション問題

 最近タワーマンションが増えて、税の世界ではタワーマンション節税が大きく問題視されてきました。具体的にどのような節税手法が可能かというと、現金で1億円を相続すれば、1億円に対する課税なのに対して、1億円で購入したマンションの相続であれば、その評価額に対しての課税と言うことになります。例えば、1億円で購入したマンションの評価額が5,000万円であれば、5,000万円に対する相続税が節税できることになります。

 普通にマンションを購入しただけでも、上記のような購入価額と評価額の差額が大きく生じるケースがあるのですが、タワーマンションの高層階の場合は、そのメリットがより大きくなるケースがあります。タワーマンションの高層階は眺望がよいことなどから、取引価額が高いため、上記の節税効果がより顕著になります。また、固定資産税や不動産取得税は、同じ建物であれば面積按分されたため、取引価額が異なっても、固定資産税や不動産取得税は割安感が生じるなど、税金面で二重にも三重にもメリットが受けられる点が問題とされてきました。

相続税での評価に関する取扱い

 相続税の評価額を決定する財産評価通達について、タワーマンションに対する特別の取扱いは存在しませんが、そのような節税スキームについて、税務署に否認され、国税不服審判所で争われ納税者が負けているという裁決事例も存在します。

 平成23年の裁決ですが、2億9千万円強でマンションを購入、一ヶ月後に相続が発生、その相続税の評価額が6千万円弱だったそうです。さらに、相続の翌年には、そのマンションを2億8千500万円で売却しているという事例です。

 今年の改正では、相続税の評価に関する直接の変更はありませんでしたが、過去に否認事例もありますので、相続税対策としてのタワーマンションの活用は、リスクが生じる可能性について意識しておく必要があります。

タワーマンションに対する固定資産税の見直し

 今年のタワーマンションに対する固定資産税に関する改正は、評価額の計算は変更しないで、固定資産税の按分方法についての変更です。高さが60メートルを超える建築物で、複数の階に住戸が所在している建物を対象に、階層別専有面積補正率を用いて調整計算を行います。

 建物全体としての評価額は、従来と同じですから増税でも減税でもなく、階数に応じて負担が変わるだけの仕組みとなっています。補正率については、下記の通りです。

1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値とする

計算式に置き換えると、

x階の補正率=100+10÷39×(x-1)

具体的には、1階なら、  
 100+10÷39×(1-1)=100 
 40階であれば 
 100+10÷39×(40-1)=109.99・・・

 上記のように、補正率を求めますが、実際には1階で1倍して、40階で1.09倍すると、全体の固定資産税の増額になりますから、分母を補正率の合計として、分子を補正率とする調整を行います。理解のために住戸が3階しかフロアがない場合で計算を行うと下記のような手順になります。固定資産税の総額を100万円とします。

①補正率の計算    
  1階 補正率 100% 
  2階 補正率 102.5%
  3階 補正率 105.1%

 

②固定資産税の按分  
 1階 100万円×100 ÷307.6=325,975円 
 2階 100万円×102.5÷307.6=333,224円
 3階 100万円×105.1÷307.6=341,677円 

 

 実際の固定資産税は100円未満切り捨てとなるなど、細かい話しはありますが、上記のように高層階について固定資産税が高く、低層階については固定資産税が低く計算される仕組みとなります。

 なお、この改正は平成30年度分からの適用になります。なお、不動産取得税についても同様の計算によります。

 また、平成29年3月までに売買契約が締結された住戸については、従来の方法による計算となります。

 

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