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2015年11月20日号 (第277)

事業承継について(2)

 みなさん、こんにちは、今年も残すところ1ヶ月と少しだけとなりました。12月は多くの業種で繁忙期となります。寒暖の差も大きい時期ですが、体調を崩さないようにお気をつけ下さい。
 前回は、事業承継の全体像に関してご紹介しました。今回は、事業承継に向けた、資産の種類別の相続対策と相続税対策についてご紹介します。

承継の対象となる会社の株式

 会社の株式については、後継者が定まっている場合には、後継者に株式を移動していくことになります。
 株式の特徴は、業績によって、株式の評価額が変動することです。例えば、災害などにより大きな損失が計上された場合は、株式の評価額が極端に下がりますし、含み損のある固定資産の売却、退職金の支払いなどでも株式の評価額が下がります。一方で、業績が良い状況が続けば、株式の評価額はどんどん増加します。
 業績が悪い時、例えば株式の評価額がゼロに近い時に、後継者が決まっているのなら、株式を後継者にまとめて移動させることも可能です。
 業績が良く一度に株式を移動できない場合には、贈与税の税率が低いところで、贈与をしていくとか、これからも更に株式の評価額が大きく上昇することが見込めるなら、相続時精算課税を利用するなどの方法もあります。また、条件にマッチするようであれば、事業承継税制の適用を検討することも考えられます。

不動産

 土地については、小規模宅地の評価減を利用することで、80%引きの評価になる場合があります。事業用で400平米まで、自宅用で330平米までが、それぞれ評価減の対象になります。事業用については、同族会社に貸している事業用宅地なども該当する場合がありますので、可能な限り小規模宅地の評価減が受けられるような体制づくりをすることがポイントとなります。
 建物については、利用していないものがある場合は、取り壊してしまうことで、建物の評価額をゼロにし、かつ、取り壊しに要する資金分の相続財産を減少させることになります。また、貸すことができるのなら賃貸することで、貸家としての評価となり、わずかですが、評価額を下げる効果が期待できます。 

現預金・有価証券等

 基本的に、現預金については、相続税が課税されたとしても、支払いに充てることができるので、無理に減少させる必要はないと考えます。また、事業を行っていくうえで、現預金をある程度保有していることは重要ですし、事業承継後の自分の老後の資金としても、一定額は持っておきたいものです。有価証券についても、上場株式や国債などであれば、すぐに換金できる点と、評価する上で微妙に現預金より有利になることがあるので、現預金をある程度保有しているのであれば、有価証券のままで保有するのがよいと考えます。一方で、換金しにくい非上場の株式であれば、保有割合で評価額が小さくなる場合があるので、贈与などで、分散させてしまうことが非常に有効な対策となる場合があります。
 事業者の場合には、手元の現金を減少させる相続税対策は、あまりお勧めとは思いませんが、現預金があまりに多額にあるという場合は、保険金の非課税枠があるのなら保険への置き換え、相続税率より低い税率での贈与などは、検討してよいと思います。また、緊急の相続税対策としては、孫などへの教育資金の一括贈与などは効果的です。

 相続税対策については、何が相続税の主な原因なのかを明らかにして、その資産の特性に応じた対策が必要となります。

 

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